今から10数年後、日本を含む先進各国ではICE (内燃機関) を動力とする自動車の生産・新規販売が終焉へと向かっていくというパラダイムシフト = 劇的な変化が我々を待ち受けています。それ以降もすでに世に存在するICE車両の多くは何らかの方策で当面走り続けていくことでしょうが、このいわゆる電動化の大波が、ダートトラックレーシングを含む2輪オフロードコンペティションの世界にはどのような変革をもたらすのか、正月ボケと雪掻きで緩んだアタマを少しだけ巡らせてみましょう。

地球規模での環境負荷・・・については議論の余地を多く残すところですが

WELCOME RACE FANS!! 皆様あけましておめでとうございます。ダートトラックライダー・FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。今後仮に全世界の自動車すべてがICE (内燃機関) の車から電気自動車に変わった場合、充電のために必要な電力はどんなに少なく見積もっても今より1割以上増、車両開発と生産のうえでもよりICE車より多くの環境負荷がかかるのでは・・・といった懐疑的な見立てもあったり、カーボンニュートラル志向そのものが多くの人々にとって壮大なビジネスチャンスでもあることなどなど、自動車業界の "オール電化" は幅広い複雑なトピックを内包しています。

が、"毎週金曜日に2輪オーバルレーシングのことしか語らない変なコラム" としては、それらの課題はちょっと脇に置いて有識者の方々にお任せするとして?2輪オフロードコンペティション = 未舗装の、公道外のレーシングマシンの電動化のみに今回はフォーカスして考えてみたいと思います。

画像: (今は亡き) アルタ・モータースのDTXスペシャルをライドするAFTライダー、ジェームズ・モナコ

(今は亡き) アルタ・モータースのDTXスペシャルをライドするAFTライダー、ジェームズ・モナコ

これまで騒音問題で得られなかった走行フィールドが大幅に広がる可能性?

昨年末に突如発表され、欧米の各2輪オフロードメディアがこぞって取り上げた "STARK VARG" という電動モトクロッサーの市販前提プロトタイプをご存知でしょうか?国内では我がロレンスの宮崎健太郎さんの記事でしか紹介されていないようなので?詳細はこちらをどうぞ。

欧米では環境意識の高まりや騒音を巡る問題などで、近年実に20%ものオフロード・レーストラックが閉鎖や縮小の憂き目を見ているようです。有名なヴァレンティーノ・ロッシの "モーターランチ" も、近隣住民との訴訟トラブルの渦中にあるとか。複数台の450ccのモトクロスマシンが放つ排気音は、静かに過ごしたいモーターサイクルに興味のない人にとってはかなりアレだろうと想像します。特にスロットル全開〜全閉までを幅広く使い、ましてグルグルと走り続けるダートトラック走行では、純正サイレンサーの100ccミニバイクであっても、騒音トラブルの元凶に容易になりうること、狭い日本の国土ではよほど好条件の立地でなければ成立しないことは古くからの課題でした。

このスタルク・フューチャー社の開発コンセプトは非常に明快で、静かでどこでも走れ、しかもICE車を凌駕するパフォーマンスでプロレベルのコンペティション走行をも受容する "スポーツ用品" としてのモーターサイクルこそが、停滞する業界に風穴を開ける・・・というもの。他のカテゴリーに比べ狭小なスペースで走れるダートトラックとも非常に相性が良い感じがします。10数台いっぺんに走ったときにどんな音を出すかまではちょっとまだイメージできませんけど、狭い日本の都市部でも、人の目をそこまで気にせず乗れるチャンスが、もしかすると巡ってくるかもしれません。

画像: Raw Varg youtu.be

Raw Varg

youtu.be

競技によって大きく異なる要求性能への"キャラ変"が驚くほど簡単に?

モトクロス・エンデューロ・スーパーモト・林道トレックそしてダートトラックなど、1台のダートバイクを素材 = 道具として走れるカテゴリーは数々あり、またライダーの技術レベルやトラックの大きさ・コンディションなど諸々の条件に応じ、要求されるマシンのパフォーマンスも通り一遍ではありません。

画像: 競技によって大きく異なる要求性能への"キャラ変"が驚くほど簡単に?

ライダーの体格の違い (成人かユースか、とか) まではカバーできませんが、例えば市販前提のこちらのマシンでは、ハンドルバー中央上部にセットされたモバイル端末様態のデバイスの操作によって、出力特性と上限、エンジンブレーキの強弱、トラクションコントロールの有無、仮想フライホイール重量の変更など様々なセットアップが可能で、スキルとシチュエーションに合致した性格を作り出すことが可能だそうです。

これまで例えば初心者ダートトラッカーは、マイルドで非力な100ccとかの小排気量マシンでライディングを学び始め、(本人にその気があれば) テクニックの向上とともに徐々により大きなマシンへと乗り換えていくことが一般的でした。が、もし1台のマシンで最高出力が10〜80馬力の間で、あるいはパワーフィーリングが自由に設定できるとしたら・・・複数台のマシンを維持所有し、整備に明け暮れる時間なども大幅に削れ、様々な側面での省力化を図ることができるでしょう。

避けて通れないのなら食わず嫌いは早めに克服しないといけませんね・・・

我々がこれまで多くの時間を費やしてきた内燃機関の調整・整備が電動化においては (ほぼ) 必要なくなることも、マシンのメカニズムの知識と専門的な整備スキルを (まだ) もたないライダーが、乗る方に集中して注力する時間を増やすことにつながるはずです。

画像: 回転する駆動部分にアブラ差すだけ?

回転する駆動部分にアブラ差すだけ?

なんだか電動モトクロッサーの良い面ばかりを推しまくりな感じですが、やがておそらく訪れる、筆者自身がこれらに実際乗る日まで、不得手で悪い点も吟味しつつ、こころして待ちたいと思っているところなのです。これまで450ccは5台乗り継いできましたけど・・・最後のチャンスに最新のICE車も持ちたいような・・・それとも次は電化製品にしちゃいたいような・・・郷愁と期待の入り交じった複雑な気分。皆さんは次に乗るならどんなマシンを選びますか?

昨年大晦日に当コラムでご紹介したこちらの書籍、当方プレオーダーは本日1月7日24時までです!すでに問い合わせ多数!荷物の重量100kg超えそうな気がしてちょっと頭痛が・・・。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!
本年も当コラムのご高覧、なにとぞよろしくお願いいたします。

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