本場の詳しい方に尋ねたら、なんと図面が出てきましたよ(単位はインチ)。
WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。"ソニックウェルド" と "トラックマスター" という2つの伝説的ダートトラック・レーシングフレーム・メイカーを興した、レイ・ヘンズリーとニール・キーンの通帳残高を支えたのが、当時60ドル程で売り出した、この木製作業台の全米スマッシュ・ヒットだったことはあまり知られていない逸話でしょう。この製品の登場を機に、趣味的にモーターサイクルスポーツを楽しむ層の、いわゆる "ガレージライフ" に机上整備スタイルが浸透していったというのも、なかなか興味深いストーリーですね。
斜路にマシンを乗せていくと、その台は中央部を支点として回転。斜路の一部が後ろ足となって水平な 2m x 0.6m の作業台が出現するだけのとても簡単な仕組みです。当時ソニックウェルドに入社した新人たちの初仕事は、昼夜を問わずこのワークベンチの部材を合板から切り出し、軍艦色のペンキを塗って梱包し発送しまくることだったとか。秋の夜長のDIYや、寒くて乗らない冬の時期に、こちらの図面からヒストリカルなモーターサイクルワークベンチを再現するのはいかがでしょうか。
マシンをもち上げてヒトに合わすのか・マシンの傍にしゃがみ込むのか。
レイとニールが大当たりしたモーターサイクル・ワークベンチは、天板高さおよそ18インチ (45cmくらい) 。だいたいダイニングチェアと同じ高さでしたが、近ごろは立ったまま作業するケースも増えているらしく、60cm前後の高さのものがメジャーなようです。我が国でもプロのワークショップには油圧昇降式の大掛かりなものが用意されることはままありますが、趣味性の高い個人的なガレージまでも、この "作業高さをヒトの目線に寄せる" 方式を多くのユーザーが取り入れるあたり、お国柄?狩猟民 or 農耕民・・・とかで一言に片付けていいんですかねえ、大きな違いを感じますよね。
マシンの足元までよく見通せる高さの台の周りを、立ったり座ったりしながら "整備して回る" スタイルは、奥まったボルトを回すなど細かな作業もスムーズですし、跨って走るだけなら目にすることの少ない = つまり意識する機会の少ない、高さ20 ~ 30cmあたりのエリアにまで消耗やダメージをチェックする視線を行き渡らせることができるでしょう。
最初は誰もが苦戦するタイヤ交換も、ジベタより腰高が100倍簡単です。
特異な競技スタイルに最適化されたタイヤ構造ゆえ、コツをつかむまではなかなか難易度の高いダートトラックレーシングタイヤの交換作業ですが、左右反転や新品との入れ替えなど、実はレースの現場でササっとできたらライバルより優位に立てる作業・No.1と言っても過言ではないでしょう。
我が国では地面にホイールを平置きし (下には次のタイヤとか木枠を置いて) ひざまずいて覆いかぶさるようにして作業するのが一般的ですが、低圧を許容するDTタイヤって、慣れてないとホントにビードが落ちない (上がらない) んですね。滝のような大汗をかいて、しかもチューブに穴も開けて交換失敗・・・それが怖いからタイヤ交換は二度と現地ではしないの・・・いやいやいやいや。
これもまた腰の高さにホイールを据えれば、全体重をかけた作業が可能になるため、らくらく簡単に (慣れれば) あっという間に交換できるようになりますよ。専用のスタンドすら国内流通していますし、メカニックエプロンとグローブさえしていればお召し物も汚れないしで良いことづくめです。
アジトの机上で完全整備済みならば現場では騎乗に100%集中できるはず。
マシンを運ぶトランスポーターをそのまま車庫代わりにする方、ガレージはマシンを置くだけで手一杯と言う方、アメリカはそもそも国土が広いから・・・と悲しく遠い目をされるかもしれませんが、それでもやっぱり下からや真横からマシンを眺めて整備できるってものすごく合理的で確実な方法だと思います。スペース的に常置が難しいとしたって、工夫すればビールケースとラダーレールの組み合わせなんかの仮設的な方法で代用できますし。
写真に撮ってみると "やってる感マシマシ" になるなんていう副産物もややありますけどね。レースの当日までに隅々まで整備を済ませたいレーシングなあなた、一考の価値ありではないでしょうか。
ちなみに筆者ハヤシのガレージは、(先日の台風19号ではたまたま平気でしたが) たまにゲリラ豪雨で冠水しちゃうので、全然こんなに立派じゃありませんが全車机上に上がりっぱなしのスタイルです。
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!