ロレンス編集部
【1/100の映画評】火星版ロビンソン・クルーソー『オデッセイ』
人類による有人火星探査ミッション<アレス3>が、荒れ狂う嵐によって中止に追い込まれた。ミッションに参加した6人のクルーは撤収を余儀なくされるが、そのひとりであるマーク・ワトニーは暴風に吹き飛ばされ、死亡したと判断される。しかしワトニーは奇跡的に生きていた。独りぼっちで火星に取り残され、地球との交信手段もなく、次にNASAが有人機を送り込んでくるのは4年後。サバイバルに不可欠な食糧も酸素も水も絶対的に足りない。そのあまりにも過酷な現実を直視しながらも、ワトニーは決して生き延びることを諦めなかった。やがてワトニーの生存を知って衝撃を受けたNASAや同僚のクルーは、地球上のすべての人々が固唾を...
ロレンス編集部
【1/100の映画評】世界を変え損ねた男の悲劇『ヒトラー暗殺、13分の誤算』
1939年11月8日、ドイツのミュンヘンにあるビアホールで、毎年恒例のミュンヘン一揆記念演説を行っていたアドルフ・ヒトラーは、悪天候のためにいつもより早く切り上げた。その後、ホールに仕掛けられていた時限爆弾が爆発──ヒトラーが退席して13分後のことだった。 8人を死に至らしめた爆破装置は精密かつ確実、計画は緻密かつ大胆。その手口から、独秘密警察ゲシュタポはクーデターや英国諜報部の関与を疑ったが、逮捕されたのは、田舎に暮らす平凡な家具職人、ゲオルク・エルザーと名乗る36歳の男だった。あまりにも信じがたい現実――。大物の黒幕の存在を確信したヒトラーは、決行日までに彼が歩んできた人生のすべてを...
ロレンス編集部
【1/100の映画評】恐竜が絶滅を逃れた世界。恐竜と人間の少年同士の友情物語。『アーロと少年』
隕石が地球に激突せず、恐竜の絶滅が起こらなかった世界。恐竜たちは知恵をつけ、言語を操り、農業を営むことができるようにまで進化していた。そして人間もまたようやく姿を現していたが、まだ話すことはできない原始人であり、恐竜たちに比べれば脆弱な種であった。 草食系の大型恐竜の子供でありながら、弱虫で体も姉兄よりかなり小さかったアーロは、貯蔵していた食料を盗み食いしていた原始人の少年と出会う。アーロは少年とともに川に流され、家族とはぐれてしまうが、自分よりはるかに小さな少年の勇敢さに心を動かされ、徐々に二人には友情が芽生えていく。言葉を知らない原始人の少年を、アーロはスポットと名付け、一緒に家族の...
ロレンス編集部
【1/100の映画評】神が寄越した自然界の悪魔による、人間への復讐を描く。『白鯨との闘い』
H.メルヴィルの名作『白鯨』といえば、アメリカの小説としては『老人と海』と同じかそれ以上知られている作品だと思う。巨大な白鯨(マッコウクジラ)モビィ・ディックを復讐の相手として執拗に狙う義足の船長エイハブと、彼の狂気に引きずられていく船乗りたち。彼らとモビィ・ディックの壮絶な闘いを描いた、自然界の神と人間の対決をテーマにした傑作だ。 何度も映画化された『白鯨』だが、本作は『白鯨』そのものではなく、作者のメイヴィルが着想を得た、実際に起きた”白鯨”と捕鯨船の衝撃的な闘いをベースに、『白鯨』成立の真実を描いた作品である。