モーターサイクルの車軸と車輪をつなぐスポーク。サビサビのオールドマシンを再び美しく仕立て直すとか、あるいはダートトラックやスーパーモトのようにホイールのインチサイズを変更するモディファイのため特殊な長さ違いのものが必要になるとか、スポークに関するありとあらゆる事柄を一手に引き受けていた我が国有数の専門店、茨城県坂東市の "face"・鈴木代表が逝去されました。

いったいこれまで何台のダートトラッカーにホイール組んできたんだろう?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTS "レースプロモーター" のハヤシです。前19 / 後16インチのミニオフロードマシンを前後17インチのワイドリム化するとか、前19 / 後18インチの公道用250ccクラスの後輪を19インチに換装するとか、フルサイズのモトクロスコンペマシン (前21 / 後19) をDTX化するべく前後19インチで誂えるとか・・・よくよく考えてみたらダートトラック・カテゴリーは特殊な "スポークホイールいじり" と極めて密接な関係をもっています。

リムサイズを変更するには長さの違うスポークが必要になるわけですが、faceの鈴木さんは単純にイチからスポークを新造するだけでなく、長い年月をかけて蓄積したご自身の膨大なデータから、例えば他メイカー・他車種の純正スポークで流用できるものを見つけ出したり、使う目的に合わせてリム組みの仕様を変えたり・・・非常に高度な作業を平然とこなす方だったため、"ホイールならface" が当たり前の合い言葉となっていたし、他者の追随を許すものではありませんでした。技術を継承するお弟子さん的な方も、おそらくいないんじゃないかなぁ。

画像1: いったいこれまで何台のダートトラッカーにホイール組んできたんだろう?

これまでの10年ちょっとの間で、特に筆者がレースシリーズとか走行会イベントなどを多く主催して新規参加者をとにかく募ろうとしていた時期 (・・・今は違うのか?) だけでも、faceさんに発注した各車インチ変更用のスポークセットは3ケタ台数分に迫る数ですし、個人的な分でもこれまでゆうに10セット以上お世話になってきました。もしかしたら持ち主がご存知ないケースもありそうですが、きっと我が国のすべてのダートトラックマシンの、半数以上のホイールにはなんらかfaceさんの手仕事が関わっているといっても過言ではないはずです。

最近は手曲げで自作できるステンレススポーク + 専用工具なんてのもありますし、リム組みが上手な方も増えている印象ですけど・・・彼の死は間違いなくコミュニティにとって大きな損失です。

画像2: いったいこれまで何台のダートトラッカーにホイール組んできたんだろう?

何年か前には、"これはキミが持っていって活用したほうが良い" と仰って、秘蔵の19インチ在庫リムなどを数多く安価でお譲りいただいたものでした。結局スポーク製作はお願いするんですけどね。

最近は視力と集中力が落ちて作業がスローになってきたとボヤいておられるとは伝え聞いていました。外注製作品がなかなか入荷せずバックオーダーが増えているとかで、筆者がお願いしている数セットもまぁ気長に待つかなぁ、なんて思っていたのですが。すんごい特殊な依頼だっただけに今から他に頼めるかな・・・。

画像: 純正16インチ32穴のホンダCRF150Rハブに特注スポークで19インチを組んだホイール。スイングアームを延長しないとノーマル車体には使えませんがブレーキassyごと他車種流用するため製作したもの。

純正16インチ32穴のホンダCRF150Rハブに特注スポークで19インチを組んだホイール。スイングアームを延長しないとノーマル車体には使えませんがブレーキassyごと他車種流用するため製作したもの。

画像: 85ccモトクロッサーの純正ハブを利用してMT19インチワイドリムを組み、フルサイズダートトラッカーの前輪とするための特殊スポーク。筆者がfaceから最後に受け取ったアイテムです。

85ccモトクロッサーの純正ハブを利用してMT19インチワイドリムを組み、フルサイズダートトラッカーの前輪とするための特殊スポーク。筆者がfaceから最後に受け取ったアイテムです。

長年に渡るシーンへのご尽力、職人技に感謝します。これからも彼の手仕事によって生み出されたホイールは、我が国各地のダートトラックを延々と駆け巡りつづけることでしょう。Ride In Peace.

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