M1000は、サウジアラビアの大プロジェクトにピッタリ合う新クラス?
2020年以降、ダカールラリーは南米からサウジアラビアに舞台を移して開催されていますが、サウジアラビアの誘致の背景には石油依存経済からの転換を目指す、"サウジ・ビジョン2030"という壮大なプロジェクトの影響があります。
M1000クラスは、2023年6月に急遽開催が発表された新クラスですが、石油依存経済からの転換という"サウジ・ビジョン2030"にはぴったりなテーマといえます。なおサウジアラビアは"SGI=サウジ・グリーン・イニシアチブ"を2021年3月に立ち上げ、国内に100億本の食事を行うとともに、国土の3割以上を保護地区に指定することで、世界全体の4%相当のCO2削減を目標に掲げています。
またSGIは、2030年までに電力の50%を再生可能エネルギーに転換し、2050年までには炭素排出ネットゼロにすることを喧伝しています。年間日照時間が3,000時間を超えるサウジアラビアは、太陽光エネルギー時代がこの先到来しても、依然としてエネルギー生産大国の座につき続けることができると予想する人は多いです。
M1000クラスの参加車両は電気、水素、またはハイブリッド駆動を対象としているので、水素エンジンや燃料電池搭載車の参加も認められています。サウジアラビアはブルー水素(天然ガスや石炭由来)やグリーン水素(再生可能エネルギー由来)両方の事業にも熱心に取り組んでいる国のひとつであることから、ダカールラリーのM1000クラスはサウジアラビアの方針にも一致しているクラスでもあり、将来的に発展することが期待されるクラスといえるでしょう。
M1000クラス10エントリー中6台が2輪EVでした
M1000クラスについては、日本から技術研究組合水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE: Hydrogen Small mobility & Engine technology)が参戦したので、その報道からこの新クラスのことをご存知の方も多いのではないでしょうか?
HySEはカワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハの2輪4メーカー、そしてトヨタと川崎重工が2023年5月に設立した研究組合で、M1000クラスに出走した「HySE-X1」はHySEが開発した過給器付き水冷4ストローク4気筒998ccエンジンを、ベルギーのオーバードライブレーシングの車体に搭載した水素エンジン車です。
初年度に参戦したのは10台のマシンで、その内訳は2輪車が6台、3台が4輪車、そして1台のトラックでした。つまり2EV=電動バイクがM1000クラスの最大勢力となったわけですが、2輪勢はタシータ フォーミュラ コルサ、アークティック レオパルド ファクトリー レーシング、チーム ダカール エコ ガリシアの3チームが参戦していました。
これからの発展を、期待したいクラスですね!
M1000クラスは、他のダカールラリーを構成するステージとは別の短いセクションを、ステージ12にわたり競う方式になっています。面白いのはエコモード、ノーマルモード、スポーツモードと使用する走行モードでもらえるボーナスポイントに差をつけたり、ダカールラリーのSNSを通じて「ファンブースト」という人気投票でポイントを与えたりするなど、ユニークな試みが導入されている点です。
さて気になるM1000クラスの総合リザルトは、3位ウェンミン スー、5位ガン ジュン カイ、6位ウィリー ジョバールと、アークティック レオパルド勢が2輪部門の1〜3位を独占。そしてタシータ勢は8位シルヴァン エスピナス、9位オスカー ポッリという結果に終わりました。
ちなみに優勝したのは、唯一のトラックだったKH-7 エカバジー チーム。彼らのトラックは、HVO(バイオディーゼル燃料)と水素のハイブリッドで駆動される方式でした。2位のカンナム製マーベリックX3XRCをベースにするマシンも、バイオエタノールと電気のハイブリッド。なお注目のHySEは4位という結果でした。
つまりアークティック レオパルドが得た3位という成績は、電動車部門の優勝でもありました。国際イベントの部門優勝を、中国製マシンに乗る中国人ライダーが手中におさめたのは、歴史初の快挙でしょう。2輪、4輪、トラックなど様々なタイプの車両が、総合優勝を競うというところは、ちょっと黎明期の第1回ダカールラリー(1979年)っぽいロマンも個人的に感じました。この新しいM1000クラスに挑む日本勢が、次大会以降増えてくれることを期待したいです。