およそ四半世紀前の "DTX黎明期" からあるにはあったアイディアですが
WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。アメリカ・ワシントン州の北、国境を越えてすぐのカナダはブリティッシュ・コロンビア州にお住まいのカスタムビルダー氏がつくるこちらのNAF = Not A Framerキットなんですが、メインフレームとエンジン機関部はモトクロスマシンを使用し、シートレールとスイングアームを交換し、リアショックも片側に寄せ寝かせて配置するカンチレバー式のショートストロークタイプに変更。フロント足回りはモトクロッサー純正の極太倒立サスペンションよりかなり軽い、一般的な正立フォーク+オフセット大のダートトラック専用三つ又に換装、シートもややチャンピオンフレーム似のオリジナルタイプに入れ替え、というのが主なメニューです。
アルミ製ツインスパーフレーム、あるいは水冷4ストロークエンジンを採用した現代的なモトクロッサーが登場した2000年代初頭には、その乗り味の硬さや腰高な着座位置を嫌って、DTX専用に製作されたC&J製クロモリスイングアーム+カンチレバーサスペンションであるとか、手持ちのROTAXフレーマーから外してきたであろう正立フロントフォークをくっつけてレースに臨むマシンも散見されましたが、サスペンションチューニングの技術が進化し、またレースのスタイルがDTXマシンの特性によって、フレーマー全盛期からすこしずつ変化するにしたがって、見た目上の突飛なアプローチで挑むライダーはほぼ姿を消しました。
近いスペックのマシン同士 (たとえば450cc) で乗り比べると、モトクロッサーの前後足回り・・・プロが20mくらいジャンプしてもちゃんと衝撃を収めて着地してくれる超強靭でしなやかなサスペンション・・・はオーバル周回競技においてはやや重かったり、ユニット長が長めだったり (ストローク変更とは別の話)、レイアウトのせいでホイールベースが長かったり、トラクション性能の考え方にかなりの違いが合ったり、まぁまぁ折り合いをつけて与えられたカードで速く走れる方法を模索すればいいって話なんでしょうけども、白黒ハッキリさせたいセッカチさんがこのようなアプローチでダートトラックのスタンダードスペックににじり寄りたくなる気持ちも理解できます。
なかなか考えて作ってるみたいで元GNCチャンピオンライダーも好感触
自身もローカルレースに参加するこちらのビルダー氏、じっくり作り込んだみたいで細部までなかなか芸が細かい仕上がりになっています。わかってるヒトが作った、というのがビンビン伝わる感じ。
片持ちオフセットして浅い角度で取り付けられた短いサスペンションユニットは、ホイールベース短縮・エアクリーナー容量拡大&ストレート吸気化・ユニットそのものの軽量化など多くのメリットを生みます。元ダートトラッカーが手掛けるRACE TECHチューンなら性能面でも文句なし、のはず。
リアブレーキはモトクロッサー純正をそのまま流用。もっとスポンジーに、など好みのタッチがあるのなら追々変えたらよいでしょう。穴あき丸棒にナット溶接で作るアクスルシャフトが雰囲気◎。
ラバーフットペグ化はDTXでも定番ですが、ブレーキペダルを先端部の加工で下げるのは賢いアイディア。スタンディング姿勢で踏むモトクロスと違い、座ったままの乗車が基本のダートトラックではブレーキペダルはフットペグより下げてないと理想的なポジションとは言えません。
カナダから国境を越えて南下してわりとすぐ、ワシントン州スポケーンのローカルショートトラックで、元GNCチャンピオンのジョー・コップがこちらの "NAFマシン" に試乗する機会をもったようなのですが、"最近のDTXは良く走るし相当乗りやすいけど、リアのトラクション性能はコッチ (NAF) のほうがよりフレーマー寄りで優れている。セットアップがドンピシャだったらかなり攻めて走れそう" とおっしゃっていたとか。もしDTXしか知らない20代以下の若者とかが乗ったらどう評価するのか気になります。先週のコラムで取り上げたジョーの息子コーディ (AFTシングルスのディフェンディングチャンピオン) はKTM契約なんで乗れなかったらしいですけどね。
一見キワモノ的な外見でも、ちゃんと走るって話ならそのうち見慣れてくるのかも?どうやら比較的低コストでマシンが仕立てられるのもエンドユーザーにとって好ましいところですね。
ではまた次週、金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!