エクストリームアクションスポーツの世界的祭典 "X Games" が日本初上陸し、本日4月22日(金)からの3日間、千葉県ZOZOマリンスタジアムで開催されるらしいですが、この一大イベントの発祥の地アメリカでは2015年からの数年間、エンジン付きレースカテゴリーのひとつとして、フラットトラックレーシングが正式な競技プログラムに組み込まれていたことをご存知でしょうか?

特設ハーフマイル・番狂わせ・不運なクラッシュ・・・華やかなりし夢の跡

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。スケートボードやBMXなどストリートスポーツを核として、音楽やファッションとの巧みなコラボレーションで若い世代への人気を着々と高めていったX Games。

FMX: フリースタイルモトクロスやエクストリームバイク = スタント競技など採点種目から始まったモータースポーツとの関わりは、スタジアム内に大量の土砂を持ち込んで難易度の高いダートセクションを造成し、外の舗装されたパーキングロット (駐車場) にまで飛び出す大胆なレイアウトで番組視聴者を大いに楽しませた二輪スーパーモト・四輪ラリークロスの登場で一気にその熱を増し、2010年代半ばになるとさらにコンテンツを増やすべく、モトクロス・エンデューロクロスなどと共にフラットトラックカテゴリーの追加が検討されるようになります。

画像: #XGamesFlatTrack | Harley-Davidson Flat Track Racing | X Games Austin youtu.be

#XGamesFlatTrack | Harley-Davidson Flat Track Racing | X Games Austin

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2014年ごろ、X Gamesのためのプロモーションイメージとして公開されたこちらの動画、ハーレーダビッドソン社の全面的支援で全車C&Jフレームにストリート750のエンジンを搭載したスペシャルマシン (速くはなさそうだけどルックスは現代のXG750Rよりそれっぽい?) によるショートトラックでの走行がフィーチャーされています。引退したライダーが1名駆り出されていて自前じゃないレザースを借りて走行してますが、いったい誰だかわかりますか (突然の高難度クイズ!) ?

続く2015年、テキサス州オースティンで行われたX Gamesでは、motoGPも開催される大型ロードサーキット・COTA: サーキットオブジアメリカズを主会場とし、サーキット外の野っ原にこのイベントのためだけのハーフマイル・オーバルを造成する荒技で、初の正式種目としてハーレーダビッドソン・フラットトラックレーシングが追加され、タイトルスポンサーがハーレーなのにカワサキ650を駆るブライアン・スミスが優勝!カテゴリー初のゴールドメダリストの座を獲得します。

画像1: xgames.com
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決勝終盤までレースをリードしたジャレッド・ミース (ハーレーXR750) はファイナルラップでまさかのドライブチェーン破断。ブライアンが全米選手権の年間王者を獲得することになる翌2016年シーズン最終戦のトップ争いでの劇的なフィニッシュシーンを予言するものとなりました。

画像2: xgames.com
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現場での観客数は極端に少なく (形ばかりのメインスタンドが写真でも確認できます) 、全世界への放映権料と視聴者数を最も重視するこのイベントのスタンスが明確に示されています。以降毎年1回のX Gamesでは、1デイ開催のため特設 (仮設) レーストラックを現出させる "突貫工事スタイル" での開催が常態化しますが・・・。

テレビ映えを意識した横一列 = モトクロススタイルの "スターティングマシン発進" は、車高が低く低剛性を身上とするダートトラックマシンには負荷が非常に大きく、毎年数台がフレーム破断などの重大なマシントラブルで走行不能となり (当日はいずれも予備車の使用で乗り切っていましたが) 、ギリギリの予算で全米選手権のフルシーズンを戦うチームには軽視できない負担となっていきます。

画像: Danny Eslick 2015 XGames Austin Flat Track Full LCQ youtu.be

Danny Eslick 2015 XGames Austin Flat Track Full LCQ

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特設ゆえの路面の不安定さも大きな問題のひとつでした。オンボード映像を見る限り突貫工事でこのレベルなら必要十分そうにも思われるかもしれませんが、決勝数十周のレース中のクリアな視界と、ハイレベルな争いを可能にする平滑な路面の追求にまではほど遠い仕上がりであり、一歩間違えば生放送中に重大なアクシデントが起きてもおかしくない状況でもあったのです。

若き獅子がそのキャリアを閉ざした不運なクラッシュが衆目のもとで・・・

2018年ミネアポリスで開催されたX Gamesフラットトラックの練習走行中、ストレート立ち上がりで単独転倒を喫したブラッド・ベイカー (インディアンFTR750) は激しく背中から路面に叩き付けられ、第6脊椎を損傷。懸命のリハビリを続けていますが、今日まで彼の下半身の感覚と歩行機能は完全に失われたままです。※続く映像中にはクラッシュシーンの一部が含まれますのでご注意下さい。

画像: Brad Baker - Racing Forward youtu.be

Brad Baker - Racing Forward

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酷く土埃の立つボコボコのショートトラック (うぇーこのコンディションでレースやるの?レベル) 、クラッシュ後にピクリとも動かず救急搬送されるブラッドの姿・・・日本からでもライブストリーミングで視聴可能だった当時の状況を、筆者はこの先もおそらく生涯忘れることはないでしょう。

全世界のファンが注目するなかでクラッシュし、障碍をもつ身体となった彼に、多方面から手が差し伸べられ、世界最高水準の医療と様々なサポートが供されるようになったことは、微妙な表現ですが不幸中の幸い・・・と言えるかもしれません。

レースコントロールのすべてにノウハウと適時性・・・アクシデントへの対応はもとより、自然相手に路面を造る種目の特性上、オンタイムでスケジュールを管理することが大変難しいこと・・・を悟ったX Gamesは、この年を境にプロフラットトラック競技の開催を取りやめることとなりました。

しかしこのことはまた、今風フォーマットに合致しないというだけで、愚直にシンプルな古典的エクストリームスポーツの底知れぬ力をまた、ひとつのかたちで証明したということもできるでしょう。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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