我が国では2輪= モーターサイクルで土の上のオーバルコースを走るスポーツそのものを "ダートトラック" と呼ぶのが一般的ですが、本場アメリカでのその正式な呼び名は "フラットトラック" です。走るのが馬でも2輪でも3輪でも4輪でも、使用する周回コース = トラックが平坦な土系舗装 = ダートであれば、その競技場が "ダートトラック" 。先週末開催された全米最大の4輪トラックレース競技 "NASCAR" 第10戦ブリストル・ショートトラックは、実に半世紀ぶり?と言われる "ダートトラック" を復活させた歴史的一戦となりました!※本日は "4輪オーバルレーシング" のお話です。

既存1/2マイルの舗装オーバルに"ダンプ2000杯"の土砂をドシャッと投入!

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。ピクサーの名作アニメーション映画 "カーズ" のなかで、ストックカーによるノスタルジックなダートトラックシーンが、ストーリーの重要な伏線だったことはよく知られているはずです (よね?) が、 映画冒頭のレースシーンで登場する超ハイバンクの高速トラックのモデルとなった、テネシー州ブリストル・モータースピードウェイが、今回のいかにもアメリカ的で豪快なプロジェクトの舞台です。

画像: 既存1/2マイルの舗装オーバルに"ダンプ2000杯"の土砂をドシャッと投入!

NASCARでは "ショートトラック" に分類されるここのトラック長はだいたい800m = 1/2マイル。バンク部分の最大傾斜角19度とも言われるすり鉢状のレイアウトで、観客シート数は16万席以上!例年春秋2戦が開催されるブリストル、元来の路面はもちろんアスファルト舗装ですが、今回はCOVID-19禍で足の遠のいたレースファンにも目新しい話題を提供するため、その舗装路の上になんとダンプ2,000台分以上 (もちろんアメリカンサイズの巨大なトラックですからね!) の土をあえて運び込み、オーバル種目のグラスルーツたる土系舗装の "ダートトラック" を数ヶ月で造り上げたのです。

画像: Building Bristol Dirt: Transforming 'The Last Great Colosseum' | NASCAR youtu.be

Building Bristol Dirt: Transforming 'The Last Great Colosseum' | NASCAR

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まぁまぁ百聞は一見に如かず?今回のスペシャルトラック造成風景はこちらからご覧ください。

せっかくなんで4輪ダートトラックカテゴリー、総出でやりますからね!

1990年代から今日まで、アメリカNo.1のモータースポーツ・レースカテゴリーという地位を維持し走り続けているNASCARですが、ただでさえ降雨キャンセルとなるオーバルレース、しかも路面修復にも手間と時間のかかるダートトラック戦を、たった数日のレースウィークのためだけに仮設造成して運用しようとするほど、出たとこ勝負の力任せで企画を進めてきたわけでは決してありません。

画像: 実際のところレースウィーク1日目の土曜日は激しい降雨のためトップカテゴリーの予選がキャンセルになり、サポートクラスのキャンピングワールド・トラックシリーズ決勝は月曜日に順延となった。

実際のところレースウィーク1日目の土曜日は激しい降雨のためトップカテゴリーの予選がキャンセルになり、サポートクラスのキャンピングワールド・トラックシリーズ決勝は月曜日に順延となった。

半世紀ぶりのダート戦をより印象的なものとするべく、NASCAR以外の様々なレースカテゴリーを思い切り巻き込みながら、話題作りのための入念なプロモーションが組み立てられます。

画像: ロゴからしてもうすでに完全にソレっぽい系 (当たり前なんですけどね) なんかジェラシっちゃうな。

ロゴからしてもうすでに完全にソレっぽい系 (当たり前なんですけどね) なんかジェラシっちゃうな。

NASCAR前週には5日間をかけて、路面チェックと最終調整を兼ねて様々な4輪ダートカテゴリーが一堂に会する、"ブリストル・ダートナショナルズ" という単発ビッグイベントを開催。プロ・アマ合わせてのべ1,000台以上 (!) のエントラントが集まったとか。

画像: 横滑りして斜めに進むのが前提の歪んだ外見が特徴的なレイトモデル・ダートストックカーは、それぞれクラスによって400〜600馬力 (!) 、車重1,250〜1,400kgの車体で競われる。

横滑りして斜めに進むのが前提の歪んだ外見が特徴的なレイトモデル・ダートストックカーは、それぞれクラスによって400〜600馬力 (!) 、車重1,250〜1,400kgの車体で競われる。

さらに今回のNASCAR後、4月に入ると、4輪ダートトラックレース団体 "ワールド・オブ・アウトローズ" が、その2枚看板であるレイトモデル・ダートストックカーとトップカテゴリーのウィング付きスプリントカーのレースをそれぞれ別立てで3日間ずつ開催。NASCARを含めてトータル4つのレースウィークを設定することで、万全の集客を狙った緻密なスケジュールが組まれています。

画像: ちっちゃな車体に大袈裟なでっかい羽根付きゴーカート・・・くらいになにも知らないヒトからは思われがちなスプリントカーは、900馬力超の6.7Lエンジンを車重600kg台の車体に搭載した、"まさしくアウトロー" なマシン。20年前に今回と同じブリストルスピードウェイで開催された1/2マイルレースでは、ターン進入手前で約300km/hの最高速を記録したらしい。

ちっちゃな車体に大袈裟なでっかい羽根付きゴーカート・・・くらいになにも知らないヒトからは思われがちなスプリントカーは、900馬力超の6.7Lエンジンを車重600kg台の車体に搭載した、"まさしくアウトロー" なマシン。20年前に今回と同じブリストルスピードウェイで開催された1/2マイルレースでは、ターン進入手前で約300km/hの最高速を記録したらしい。

まぁその・・・ここまでダートオーバル推しだと "2輪は?AFTは??" とかちょっと思っちゃいますけどね、要求する路面のスムーズさ平滑さとか4輪とは違うし・・・いくらなんでもバンク19度は傾斜つき過ぎだし・・・そもそもお呼びじゃない感じ?なんでしょうか。うーん。

AFTはNASCAR最高!って言いつつ実はタダのGPラバーですもんね?

独自の発展、というかオールドスクールな魅力を維持してきたものの、リーマンショック以降2010年代に入ってから少しずつ減速傾向が続いている本場アメリカの2輪ダートトラック = フラットトラックシーン。AFT: アメリカンフラットトラックと名を変え、態勢を仕切り直すと聞いたとき、例のイギリス人CEOが "アメリカンモータースポーツで最高の成功例のひとつであるNASCARマーケティングを参考にしたい" と仰ってたんで、個人的には結構期待してたんです。

NASCARソレ自体は非常に古典的なレースで、一見すると極めて保守的な風土にも思えますが、そのマーケティング戦略はつねに先進的で攻めの姿勢を維持しています。新しい明快なポイントシステム、シリーズ中のプレーオフ制度や数百周のレースを3つのセグメントに分ける新フォーマット、安全を重視したレースカーの近代化、統括団体から各チームへの手厚いホスピタリティ、さらにレースファン層を力強く巻き込むNASCARブランドとしての一大マーケットの開拓などなど・・・、枚挙に暇はありません。

画像: NASCARブリストルのダート戦、早速?いきなり?2022年もやりますと告知。既定路線だったか・・・。

NASCARブリストルのダート戦、早速?いきなり?2022年もやりますと告知。既定路線だったか・・・。

前略AFT、MotoGPにばかり色目をつかって?インディアン迫害してる場合じゃないと思うんですよねー。アメリカのヒトと風土に合ったマーケティングったら、やはりNASCARからいろいろ盗んだほうが良いんじゃないのかな?杞憂でしょうかそうでしょうか?

画像: Big wrecks and a new winner: Bristol Dirt Race Extended Highlights | NASCAR Cup Series youtu.be

Big wrecks and a new winner: Bristol Dirt Race Extended Highlights | NASCAR Cup Series

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今回ご紹介したNASCARブリストル戦の公式ダイジェストはこちらからどうぞ。2輪でも4輪でも、ガチャガチャと小突き合うショートトラックレース、見てもやってもとっても楽しいですよ。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

画像: AFTはNASCAR最高!って言いつつ実はタダのGPラバーですもんね?
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