美味なるものには音がある、みたいな?戦うためのデザインに要注目!
WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。世に "カッコいい" カスタムモーターサイクルは星の数ほどあれ、速く走るため・勝つためだけに調製された結果の必然として備わった、凛々しい立ち姿の雰囲気や造形美は、一種独創的なものです。
本日は実に足掛け40年、本場アメリカのダートトラックレースシーンを今なお追い続ける日本人フォトグラファー・中尾省吾氏が、どこぞのローカルレース会場で、お、ちょっといいなと思ってシャッターを切った、誰でもわりと簡単に手が届きそうだけど深堀りしないとこの雰囲気はなかなか出ない、貴重な未公開 (多分) のイメージを、惜しげもなく?何点かご紹介します。
つい最近まで垂れたテールカウルなんてどこがいいのかわかりませんでした
コラム冒頭写真のトライアンフ車のように、自転車サドル型のシートと後部ピリオンシートが金属製リアフェンダー上に固定された古典的な風貌のマシンを、今一歩進めてレース仕様に・・・より軽量かつ体重移動を容易にしたいので・・・と考えたとき、FRP樹脂製のフェンダー・カウルに薄く硬いクッションを乗せ、その全てを一体化したものが、今日の日本でいわゆる "トラッカーシートカウル" と呼ばれる、ダートトラック競技専用車のアイデンティティの源流となっていきました。
シェル・サエット製作の有名な "シェル・フレーム" や、1970年代にハーレーダビッドソン・ファクトリーチームが採用した "BOSSフレーム" などには、この写真のヤマハのような長めのフューエルタンクと後部の垂れたシートカウルがよくマッチします。この古風で一見鈍いデザイン、以前なら目もくれなかった筆者ですが、ここ数年でなんとなく好きになってきました。年相応のノスタルジー?
シュっとして繊細・細身なチャンピオンのスタイルを好む方、多いですね
前段の、未だ金属リアフェンダーっぽい雰囲気を残したシェル型 (と便宜上呼びます) シートカウルをさらに小さく軽量化し、転倒時のカウル破損を防止するバンパー的な役目として後端シートレールを外側に回すスタイルが特徴的なのはこの、"チャンピオン・フレーム用外装" です。合わせてフューエルタンクも以前のものより全長を短く・細身に造形し、車体のホールド性と体重移動の容易さが向上しています。細身のタンクとシートは車重が軽い2ストローク・ショートトラッカーの全盛期と相まって、1970〜80年代には数多くのダートトラックマシンに採用されるようになります。
これぞ定番ダートトラッカーイメージ!ポジション改善のナイト・タイプ
1980年代に入り、ボンバルディア・ROTAXやヤマハTT500、ホンダRS500/600Dなど、重量感のある大排気量4ストローク車がシーンを席巻するようになると、チャンピオン・スタイルの細身のタンク・シートカウルではライダーの下半身が少し窮屈になってきます。この時期主流となっていくのは、横幅を20〜30%増して車体全体でのバランスを整えた、ナイト・レーシングフレーム用です。
このスポーツが徐々に我が国に紹介されるようになったタイミングともほぼ一致するためか、日本のカスタムシーンで認知度の高い、 "ダートトラック・スタイル" の代表格と言えるかもしれません。
ここ20年くらい一番人気独走中?レーステック・ティアドロップタンク
2000年前後からは、日本製4ストロークモトクロスレーサーエンジンを使用するマシンも徐々に現れ、より高出力でアグレッシブになってきた車体に対して、ライダーには大きなボディアクションと大胆なマシンコントロールが要求されるようになります。
この "レーステック・スタイル" と呼ばれるティアドロップ = 紡錘形デザインのフューエルタンクは、前方下部に燃料を集めることで走行中に前後の重量バランスが大きく変位することを防ぎ、またこれまでにない、タンク前部から後部に向かって徐々に窄まる形状で、タンク容量とライダーのマシン・ホールド感の両立を図る、目的に合致した優れたデザインで形作られています。
単純ながら奥深い "性能" を求めてオーバルレースシーンで磨かれ続けてきたダートトラック・レーシングマシンのスタイル。"機能に裏付けされたカタチ" はかくも美しく、鋭いものなのです。
ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!