前夜の開幕戦で初優勝した新鋭ジョニーを襲う勝負巧者ジャレッドの一撃!
WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。他車との接触も容易に起こりうるショートトラック。その実態はターン半径や (比較的) グリップレベル良好なレコードラインの狭小さも相まって、ハンドルバーtoハンドルバーの "過激な肉弾戦" です。
というわけで本日ご覧いただきたいのはこの動画、2012年のGNCデイトナ・ショートトラック第2夜、25周の決勝レース・白旗掲示後の最終周にジャレッド・ミース (レースナンバー9) とジョニー・ルイス (レースナンバー10) が絡んだ、トップを激しく争う真剣勝負の末のクラッシュシーンです。
25周目のターン2立ち上がりでミースのインを差して前に出たルイスですが、続くターン3進入では鋭く追撃するミースに内側から (文字通りの) 足払いをかけられる形で転倒を喫します。この接触でバランスを崩したミースも、立ち上がりまでサラッサラで前に進まないアウトサイドに大きく孕み、後続のレースナンバー20、マシュー・ウェイドマンに優勝をさらわれる結果となってしまいました。
最終周最終ターンまでトップ争いを繰り広げた両者にとっては不幸な "レーシングアクシデント" でしたが、示唆に富む映像が今に残されたことは、我々にはかえって幸運だったかもしれません。
やられたらやりかえす→X・やったらやりかえされるかも→Oと心得るべし
当時は伝統的に、2日続けてのショートトラック戦ダブルヘッダーで新シーズンの幕を開けていた本場アメリカの最高峰レースGNC、前夜の開幕戦にて自身初優勝を上げたジョニー・ルイスはこの時23歳。幼少期からアマチュア界では全米に名の知れた存在でしたが、3歳年上ですでに2回の全米王者となっていたジャレッド・ミースの "本気のかわいがり" をモロに食らった格好です。
丁々発止やりあう相手との位置関係を、チェッカーフラッグを受ける最後の瞬間・・・のその前までどう描くか、具体的には25周のレース運びのどのタイミングで前に出るか、またその後どう振る舞って逃げ切るか、をイメージする引き出しの多さ・・・経験とシミュレーション・・・で上回ったミースに押し出され、敢えなくダウンしたルイス。しかし彼の転倒からの復帰の素早さもまた、特筆すべきものがあります。
本場のトッププロ同士のことだからこの程度で済んでますけどね・・・
動画の0:46付近からのスロー再生をご覧いただけば一目瞭然ですが、この転倒はルイスのホットシューを履いた左足がミース車の前輪に弾かれ、全身・特に上体のバランスを大きく崩すことで、前輪が完全にトラクションを失って起きたものです。それ以前にそれぞれの車体や身体が接触したことが原因ではありません。
これまでの連載を通して、ダートトラックレーシングがただの豪快な "イッタレどんどんオラオラ系モータースポーツ" では全くない、むしろライダーが極めて繊細な操作を常に要求されていることはすでに幾度も記してきているつもりですが、特に短距離オーバルでの "ショートトラック戦" は、トラックが小さければ小さいほど、タイヤ1本分、いえいえたった50mmくらいのラインを狙って鬩ぎ合う、高い集中力と技術が・・・単にグルグル走るだけなら別にそんなものなくても楽しめるんですけど・・・勝つためには間違いなく必要な競技です。
このいつかはきっと終わるであろう "おうちじかん" の期間、これから先どうやって前ブレーキなしのマシンで "針穴にピアノ線?を通すような高度なライディング" に磨きをかけるか、マシンの調整も含めて次の手をじっくり模索してみるのも、経験者にとっては有意義な時の過ごし方かもしれません。
未体験や未見でダートトラックに興味の湧いた方も、レース未経験の方も、世にあまりある情報をえり好みせずあれこれとガブ飲みしながら、道具を揃えたりなんかして来るべきデビューの日に備えてはいかがでしょうか?
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!