先週の当コラムでご紹介した長野県南部の美しき極小トラックでの筆者主催のFEVHOTS初の公式戦、この3連休に関東甲信地方を直撃しそうな季節外れの大型台風19号ハギビスのおかげで敢え無く中止となりましたー。トホホ。というわけで今回は雨の日の閑話休題、筆者がダートトラックレースに参加する上で心に留めてはどうかと考える"5つのヒント"についてコッソリお話ししましょう!

競って争って→勝ちたい人限定。

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。かつて20年ほど前、筆者が関東某所のダートトラック = レース場で知り合い、その後長きにわたって公私ともに大変良くしていただくこととなった、ある国際ロードレーサーの方にある時 "貴方にとってレースの醍醐味とは?" と素朴な質問をぶつけたことがあります。

そのライダーは本場アメリカのダートトラック (レース) での武者修行からご自身のキャリアをスタートした、我が国では極めて珍しい経歴の持ち主なんですが、筆者の不躾な質問に慎重に言葉を選びながら丁寧に答えてくださいました。ザックリとした記憶の中では以下のように。

自分にとっての2輪レースの醍醐味とは、イメージ通りの正確無比なライディングを冷静に実現し、より速くマシンを走らせることにつきます。ロードレースではサーキットのセクターごとのタイムをコンマ1秒でも削って1周を、そしてレース周回数を正しくまとめ上げ、無駄のない究極の走りを追求すること。人馬一体で精密機械のような働きを目指すというか・・・。

ふむふむなるほどー。

これは慎重に冷静に"トランプで塔を建てること"とか"高く積み木を重ねること"に近いイメージなので、ライバルとのバトルの中で優劣を競うのが個人的にはあまり好きじゃないのかも。だからダートトラックライディングそのものが持つ"正確性"には心底惹かれたけれど、レースは瞬時に対応するべき想定外と危険がいっぱいだからあまり性に合わなかったかもしれないなぁ。

えええええ。チョー意外な回答。もちろん捉え方は人それぞれなんでしょうけど、なんとなくダートトラックレースとロードレースの "熱中ポイントの違い" ?の一端に触れたような気がしました。

筆者はそのころ "誰でも出られるノービスクラス" で日々ライバルと競い合い、年間チャンピオンシップに勝って昇格し、より大きなトラックでのハイスピードなレースに出場する資格と機会を得ようと、200m級オーバルで (比喩でなく文字通り) 最大12台のフルサイズ車がひしめくガッチャガチャの大混戦のただ中にいたものですから、当時は全くピンときませんでした。速い奴をやっつけたい・一番になりたいという欲望は、レースに出る上でいつだって当たり前のようについて回ることだったんです。ボヤボヤしてたら予選落ち→お昼過ぎにはハイさようなら、でした。良しにつけ悪しにつけ。

というわけで本日のコラムは "勝ちたい貴方向けの提言" が軸となります。ご了承ください。

①本番までの乗車時間 x 密度をライバルより可能な限り多く確保しよう。

レースのグリッドにつくコンペティターは、それぞれがこの日のために準備を重ね、練習と調整に明け暮れ、当日その瞬間から始まる10数周で最高のパフォーマンスを発揮するべく最大限に集中を高めている "はず" です。貴方はどうですか? ベストな状態で当日を迎えていますか?

タイヤがすり減ってマシンがブッ壊れるほど練習した挙げ句、ケガもして一切余裕なし、じゃあ完全に本末転倒ですが、"事前に何をしたら勝つ可能性が高まるか" を考え、限りある予算と時間の中でできることすべてを試しもせず、ただエントリーするだけでは、わざわざ負けに来ているだけです。

画像: ①本番までの乗車時間 x 密度をライバルより可能な限り多く確保しよう。

練習時間が人一倍多ければ言うことなし? ですが、確保できないのなら内容を吟味してください。漫然と、楽しく走るだけではきっと無理。それは間違いなく誰でもやっていること。ダートトラックって楽しいんですもん。全員をやっつけるにはそれ以上・相応の準備が必須。当然です。

乗車時間 x 密度、つまり内容の充実度こそが、ダートトラックレーサー = 勝負師たる貴方の手持ちのカードすべてなのです。運だけで勝てたら苦労しません。

②まず競争相手よりバツグンに速いマシンを用意した上で勝負を始めよう。

"遅いマシンを速く走らせて勝つ"

なんとも魅力的な、カタルシス溢れるフレーズですが、残念ながらそんなのマンガの世界の話です。あるいはもし現実世界でそんなことがあるのなら、それはレースのレベルが低い場合に限った珍事。

例えばこんな設定で考えてみてはどうでしょうか。貴方が戦う相手、勝つべきライバルは・・・

・貴方より10歳若く
・貴方より10年長いレースキャリアをもち
・貴方より10倍多くの時間を今日のレースに向けた準備に費やしている

これに対し貴方が整備不足のオンボロや、あるいは相手と同等性能のマシンに乗っても??? 残念ながら勝ち目はほとんどありませんね。そうわざわざ負けに来ているだけです。じゃあ、どうします?

画像: ②まず競争相手よりバツグンに速いマシンを用意した上で勝負を始めよう。

10歳若い10年センパイが10倍の時間かけて準備してくるのなら、それを貴方の腕一本、技術とやる気だけで凌駕するのは本当に難しいことです。当然ながら無理をすればリスクも高まります。追いつこうと必死に練習や筋トレしても、相手もさらに前進しますから、このままではずーっと追い越すことはできません。ゼノンのパラドックス・・・アキレスと亀ってやつですね。

ライディングスキルだけで勝てないのなら、貴方の相棒であるマシンを研ぎ澄まし、総体としてのパフォーマンスを高めてください。勝ちたいんですもんね?何もやらずに泣き寝入るなんて勿体ない。

・10kg軽量化
・10馬力アップ
・10km/hストレートでの最高速を上げる

あくまで例えですから内容はともかく。その結果扱いやすいマシンになるかまでは計り知れませんが、ライバルたちに一泡吹かせるには本当に多角的な戦略と工夫が必要です。じゃじゃ馬を仕立てて血の汗滲む努力?でなんとかかんとか乗りこなし、これまでフフン、こちとら新人相手、ノーマルマシンでも敵なしだろと余裕かましていたベテランどもを追い詰め下克上を突きつけましょう。

お金をかけずに技術の向上だけで勝ちたい・・・美しく聞こえますけどスキルを高めるための練習時間だって、結局は走行料金やガソリン代タイヤ代オイル代、往復の交通費など "need some money"。何もしないで勝つのも難しいのでそういう方はこの際お家でゲーミングが良いかもしれません。

画像: VRTG | FLAT TRACK | MISANO | Valentino Rossi | gameplay youtu.be

VRTG | FLAT TRACK | MISANO | Valentino Rossi | gameplay

youtu.be

これならきっと財布も身体もさほどイタくないですから。多分。

③ルール・レギュレーションを研究して"盲点 = 付け入る隙"を探そう。

かつて栃木県で開催されていたダートトラックレースシリーズに、"レンタル100ccクラス" というカテゴリーがありました。主催するサーキットが用意するホンダXR100R・・・通常はスクール車として使われるので当たり外れあり・・・を借りて出場できる、と言ういわば登竜門的位置づけでした。

世に好き者の種は尽きまじと言いますか、このクラスにどっぷり熱中される方もいて、レンタルマシンは確かレース前日の練習から借り受けられるんですが、常連の何人かはツルツルのスクール用タイヤと同じ銘柄でザクザクに溝を彫り足した自前の新品タイヤ持参・好みのオイルに勝手に交換・エアクリーナーのスポンジ外して金網だけにしちゃう・見た目わからないようにマフラーの中身を加工した持参品に交換・スプロケット交換、とか色々細工してくるんですね。

当時はあまり興味なかったから見て見ぬフリしてましたけど、多分ルールブックにはオミソクラスのことなんか詳しく書いてないから違反じゃないんだろうけど、モラルとかキープコンセプトの面でどうよ? と今にして思います。イコールコンディションが信条のレンタルクラスでそうまでして勝って嬉しいかなーと。

画像: 1993 XR 100 National Lodi CA youtu.be

1993 XR 100 National Lodi CA

youtu.be

しかしあくまで勝つことを最優先に考えるのなら、ルールが定める範疇外ならそれもまた妙案?いやまぁちっともフェアではないですけどね。なので筆者主催レースのカテゴリーに "ノーマルクラス" はありません。腕前も道具もやるだけすべてやった上で正々堂々の勝負、それがクリーンでスマートだと考えているからです。

逆に言えば、どんなレースでもレギュレーションは熟読して研究するべきです。レース進行方法も含め、貴方とマシンをより速く走らせるためのヒントが行間に隠されて (隠して) あるかもしれません。

❹レースなんぞに出なければ、あなたの無敗神話はこれからも守られます。

100人出走すれば1人の勝者と99人の敗者が生まれます。勝ちたい強い想いで参加したのに負けて帰るほどガッカリなコトはない・・・と思うかもしれませんが、敗因の分析や悔しさの貯蓄はすべて、いつかあなたが誰よりも速く走って勝つ日の表彰式で披露する感動のエピソードの一部になります。

画像: ❹レースなんぞに出なければ、あなたの無敗神話はこれからも守られます。

初レースから最高の結果を (根拠なく) 見込んで鼻息荒く飛び込んでみたものの、手練れのベテランたちにコテンパンにされるライダー、これまで数多く見てきましたが、そこから諦めずに自己分析と鍛錬を繰り返すチャレンジャーには、それなりの釣果・・・好成績がいずれ必ず訪れるものです。2戦目か2年目か、あるいはもっと先かもしれませんが。

最初から上手くいかなければどうにも気が済まないなら、レースなんか出ない方が良いかもしれません。きっと勝てません (先達はそんなに甘くない) し、出なければ少なくとも負けませんからね。

レース "で" 負けるのがイヤだと避けるなら、結果的にはレース "に" 負けることとなりますが。

❺苦しまぎれに"安易なアマチュアリズム"へと逃げ込まないこと。

すべてのレースは準備から始まりセルフマネジメントの優劣によって結果も左右されます。より多くの時間と資金を費やし、身体と道具のコンディションを誰より整えた者が勝つ・・のがフツーです。

かつて近代オリンピックは "アマチュアリズム" を標榜し、"プロ = スポーツによる金銭的報酬を受ける者" を受け入れない・・・体育教師も出場不可・・・だった時代があるそうですが、今やその概念は完全に過去のものとなっています。世界的なスポーツ界の潮流としても現代にはミスマッチとされています。貴族的なお金持ち・働かずに自身の種目に没頭できる人ほど有利になるわけですからこんな不平等はありません。

画像: ❺苦しまぎれに"安易なアマチュアリズム"へと逃げ込まないこと。

少し飛躍はありますが、ダートトラックにおいて、ヘタでもペーペーでもポンコツでも、意識と目標を高く掲げること、これからは仮に "プロ意識" と呼びましょうか。今の貴方がヘタでもペーペーでもポンコツでも、それらはこの先ずっと貴方が勝てない理由にはなりません。今この瞬間の言い訳にもなりません。現時点での全力で戦って負け続ければ、いずれ勝ち方はなんとなく見えてきます。

"自分まだまだ不器用なんで・・・" とか、恥ずかしがるのはやめちゃいましょうよ。サッサとスタートラインに並べば、自ずと次なる目標も射程圏内に入ってくる、はず、です。

貴方の健闘を祈ります。
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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