WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。ダートトラックライディングではエンジンの "常用使用域" として、アイドリング付近の低回転を使うことがあまりありません。パワーとトルクのモリっと立ち上がり始める中間域から、スロットルがカチっと止まる全開域までの "上半分" を、ターンとストレートが交互に現れるトラックレイアウトに合わせ、行きつ戻りつするイメージで捉えてみましょう。
走行ギアは固定・オーバーレブぎりぎりまで使い切り!
静止状態からスタートしてレーシングスピードに到達した後は、基本的には変速をせず、固定ギアで周回するのがダートトラック走法の基本です。直線部をスロットル全開で走り、そのままターンに飛び込む時点では、いわゆるパワーカーブ頂点の向こう側、オーバーレブ域ぎりぎりまで回転が高まります。
最新のモトクロスレーサーエンジンは "レブリミッター" と呼ばれる機構により電気的に過回転を抑えることができますが、古典的な大排気量エンジンや、放熱面積の少ないミニバイク系エンジンでは、許容回転数を超えエンジンブローを起こさないよう、運用マネジメントに細心の注意が必要です。
なぜショート・ファイナルでなくてはならないのでしょうか?
我々は滑りやすいトラックのストレートエンドで一気に "減速 + 向き変え" を行い、すばやく再加速に向かいたいわけですが、姿勢と進行方向が一番大きく変化するフルバンク時の肝心な場面で、グイグイまだ車両が加速してしまっては、このスポーツで重要な "横滑り中の安定" は得られません。つまり最初からロングなギア比では、メリハリのあるシャープなライディングを望むのは困難です。
横滑りするタイヤに最も負荷がかかってつぶれて変形し、トレッド接地面積が増大。路面を力強く捉えると同時に、タイヤ外周長がより短くなることでエンジン回転数が上昇することも加味し、 "ちょうど吹け切る安定状態" をどこに設定するか、常にイメージしておく必要があります。
同じトラックを走るのでも、路面の湿度、気温による車両の状態変化、タイヤの消耗具合、あるいはライバルとの位置関係など様々な要因から、ベストな走行ラインは常に変化します。それに合わせ、マシンのスプロケットや走行ギアを様々な組み合わせで変更し、場面ごとにより有利 = 優位に立てるファイナルセットアップを狙うことが、やや面倒ですが重要なセッティング作業となるのです。
調子良く走る他のライダーと全く同じ組み合わせが、自身にとっても最適とは限りません。ライダーの背丈や体重、力量やスロットルワークのクセによるライディングスタイルの差、同年式同型のマシンであっても、場合によっては回転するリアホイール質量の差なども相まって、他者に勝つべくそれぞれが選択するギヤリングは異なってくることでしょう。
手始めに前2枚・後3枚くらいのスプロケットがあれば。
上のギアレシオ表を見ながら、軽量級ダートトラック・エントリーマシンとして比較的容易に入手できるホンダXR100R / CRF100F・CRF125Fを例にとって考えてみましょう。
・比較的安価な純正部品で揃えられるフロントスプロケットは13T(125F)・14T(100R/100F)の2枚。
・同じくリアの鉄製ドリブンスプロケットは46T(125FA)・49T(125FB)・50T(100R/100F)の3枚。
この2 x 3の品揃えで6種類のギアレシオが選べ、さらに固定ギアを3速または4速で選択することで、すでに12種類のセッティングが可能となります。純正以外の歯数のスプロケットを用意すれば、当然ながらさらに多くの組み合わせを実現することもできます。
こちらは筆者の常備する450ccマシン用 "スプロケットタワー" 。歯数違いのリア・ドリブンスプロケット10数枚と、他にドライブスプロケットが3〜4枚・コマ数違いのチェーン3セットがあります。重複する組み合わせもありますが、トラックサイズと路面コンディションに応じ、この中から最適なセッティングを選択することになります。
鋭い進入からの攻防が堪能できるショートトラック・オンボード映像をどうぞ!
最後はこちらのデルマー・ショートトラックのオンボード映像で。それぞれのライダーのエンジンサウンドなども併せ、イメージを膨らませつつお楽しみいただければと思います。ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!