マシンの仕立ては、"超・重要"です!
WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/レースプロモーターのハヤシです。ダートトラックは、オンロードとオフロードの間のどっちつかずのイメージで、走法や車両についてもその中間かな?、という漠然とした印象を持っておられた方も、多くいらっしゃるのではないでしょうか?
当コラムではダートトラックの魅力を大いに語る、というコンセプトで、この競技の特徴的なライディングセオリーと個性をご紹介しているつもりですが、使用する車両も当然同じく、"スライディングブレーキ走法" に特化した、スペシャルなセットアップを施すことが、実は非常に重要です。
ダートトラックには専用設計の手頃なレーシングマシン (コンプリート車両) がないため、用意する車両は、主にオフロードスタイルの市販車両からのモディファイが基本となります。トラックコンディションとライダーのスキルレベル次第ではそのままオフロードセットアップでも "乗れないことはない" 場面もありますが、競技・・・ましてレースモードで扱うには、残念ながら様々な面から不適当です。
初心者・経験の浅いライダーこそ、正しい技術・走法を "早く" 身につけ、他人より "速く" 走る・・・リスク区間に費やす時間が減るため必然的に安全レベルが高まる・・・よう、常に "フラットオーバルという状況への最適化" を心がけてください。毎回しつこく書きますが、道具を使うスポーツで、"とりあえずなんでもいい" は、ちょっと、ありえません。
Your 1st REAL Racing Bike. 軽量級か?中量級か?
上の写真2点はキング・ケニーのトレーニングトラック (通称"ランチ = 牛囲い") で、リアアクスルを地面に擦り付けフロントタイヤを浮かすほど鋭い進入を見せる全米プロ選手権ライダー (2018シーズンAFTレースナンバー22) ジェームズ・モナコ。ケニーと同郷の北カリフォルニア・モデスト出身。
車両は日本未発売のブラジルホンダ製ファンライドレーサーCRF150Fまたは230F・ショートストロークのキックスタート年式 (2003~2005年のみ製造の希少モデル) 。吸排気やホイールサイズはノーマルで、タイヤもオフロード仕様のままですが、頻繁にトラック整備にあたる専任スタッフの存在と、トレーニングに最適化されたこのトラックの土質によるところ大、です。
250ccの空冷4バルブ車や、250 / 450ccの水冷4サイクルモトクロッサー、あるいは500cc以上のビッグシングルエンジンの車両は、その扱いに多少の競技経験と、身体能力を維持向上する習慣、不備なく走らせるための日常の整備スキルを身につけてから挑戦するほうが、おそらく無難で有利です。
このスポーツの基本構造の理解を進めながら、新しい参加者が走り始めるのに好適な車両は、車両メンテナンスの手間が少なく (注油と清掃、オイル交換くらいは最初の段階から日々必要ですよ) 、パワー特性が比較的穏やかで扱いやすい4サイクルシングル、100~125ccクラスの軽量級か、2バルブ230cc ~ 最大でも250ccを上限とした中量級の車両たちです。競技に特化したチューニングはすこしずつ進めるものとして、まずは手頃に入手できるこれらクラスの車両を探しましょう。
扱いやすい軽量級の"現行マシン"・HONDA CRF125F
新車から製作することができる "軽量級 = ライトウェイトクラス車両" のサンプルとしてモディファイ進行中のCRF125F (2014y) がこちらです。毎週火曜日に川越オフロードヴィレッジで定例開催する、我々FEVHOTSの公式練習日 "オープンプラクティス" でさまざまなレベルのライダーに繰り返し試乗を依頼し意見を取り入れつつ、個人レッスン用スクール車両として貸し出し・日々活躍中。
正直申し上げて名車XR/CRF100Fの水準までレースパフォーマンスを高めるのはまだ難しいところですが、トレーニング用としての需要から中古価格が高止まったままの "ヒャク" の唯一の対抗馬となるため、実戦でのテストを重ね、今後に向けたノウハウを蓄積したいところです。
手頃な中古車両が"超豊富"な中量級・HONDA FTR223
名車として評価の高いFTR250 (1986-1989) に比べ、非力なファッションバイクとして扱われることも多いFTR223 (2000-2016) ですが、段階的なモディファイを加えることで、そのパフォーマンスは劇的に向上します。223ccという中途半端な排気量も、実はその原型は1970年に "本格的スーパースポーツ車" として発表されたCB90。90ccからメイカー自身の手により、なんと2.5倍!にまで排気量を拡大し、弱点を徹底的に洗い出した、隠れた名作なのです。
というわけで以下3態、それぞれ異なるステージでのモディファイを加えたダートトラックレース仕様のFTR223をご紹介しましょう。個人的にはこれに加えて10ccボアアップ + ハイカムシャフト + バッテリーとセルモーターを取り外した押し掛け仕様が本気のレーサーらしく、大変好みです。
いかがでしたか?今回はスペースの関係と前例の豊富さから、HONDA製マシンのご紹介に偏りましたが、各メイカーの100cc~250ccマシンにはそれぞれ秘めた可能性があると言えるでしょう。もちろん向き・不向きや必ず手を入れるべきポイントはさまざまでしょうが、それも趣きのある話ではありませんか?
手頃に入手したポンコツ中古車をコツコツといじって一人前のレースバイクに仕立て上げ、ライダーも正しい知識と技術を身につけて、いざ競技に臨む。そんなロマンと雰囲気のある楽しみ方ができるダートトラックレーシング、機会があればぜひ皆さんにも触れていただけたらと願っています。
今後はより大排気量の本格レーシングマシンとその製作過程なども順次ご紹介する予定です。ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!それでは皆様すてきなGW後半戦をお過ごしください。