タイトルは、釣りです。皆さんの注目を引くためのキャッチーなフィッシングフレーズ。魚釣りは針に餌をつけて水に垂らせば試合開始ですし、遊園地は夢の国の領土に足を踏み入れた瞬間からお客様。ところがダートトラックは (本来トラック=コースの意味ですので "ダートトラックコース" という和製英語は不適当です) 走行料金を払って着替えを済ませたからといって、いつでもただちに気持ちよく、最高のコンディションで走り出せるとは限りません。このあたりもロードレースやモトクロスとまったく違うこの種目ならでは特徴、一度足を踏み入れたならズッポリとハマってしまう、魔性の魅力のひとつなのかもしれませんが。今日はそんなレーストラックあれこれのお話です。

いよいよシーズンイン!です

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。おかげさまで先だっての日曜日4月1日に、我々の主宰するFEVHOTSは春うららかな晴天のなか、開幕戦を無事開催し、6年目の2018シーズンをスタートさせました。

画像: FEVHOTS Rd.1 2018-04-01 撮影: 松澤正和

FEVHOTS Rd.1 2018-04-01 撮影: 松澤正和

どんな種類の屋外イベントでも主催者は毎度、現地の天気予報にやきもきさせられるものですが、ダートトラックは雨天中止! 雨後のコンディション不良でも走行不可! 晴れすぎて乾いても埃で前が見えず周辺住民からは苦情! さりとて水を撒き過ぎても路面が落ち着くまでしばらく乗れず! 

・・・という具合で、とにかくシビアな "路面チューニング" が欠かせないスポーツです。以前のコラムでお話ししたフィンランドなどの田舎道に散見される "土系舗装" を、都度ごと施行するのと同じ手間と思えば当然のことなのですが。

ダートトラックは大雑把にいうと4種類のトラックタイプに分類されます!

比較的よく知られている事実かもしれませんが、ここでまずは大まかな4種類のトラックタイプについてご説明しましょう。オーバルトラックのジオメトリーは、その外形比率・縦 x 横が1対2の長方形に納まり、ストレート1本と片側コーナー全長がほぼ同じというのが一般的。我々のカテゴリーでは1つのコーナーを前半 + 後半の2つに分け、ターン1 + ターン2 (同3 + 4) と呼ぶ慣習があります。

画像: Ride the Springfield Mile with #1 Jared Mees youtu.be

Ride the Springfield Mile with #1 Jared Mees

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マイルトラック
1周1,600mの競馬場を使用する。ストレート長およそ400m。トップスピード200km/hオーバー。コーナー部分への進入速度が100km/h超で、コーナー前半200m近くは "スライディングブレーキ走法" での滑走区間ということになる。超高速のスリップストリーム・ドラフティングバトルが見所で、毎周毎ターンの順位入れ替わりも珍しくない。プロクラスの決勝25LAPSでは、フィニッシュライン通過の直前まで数台が団子状態のことも。"メガマイル"と呼ばれる2,000m級の競馬場で行われるレースも稀にあるが、最高速度が250km/hに近づくため、ピークパワー抑制の目的でリストラクタープレート(吸入制限板)使用を義務づけられる場合あり。

画像: Knoxville Half-Mile Main Event Highlights youtu.be

Knoxville Half-Mile Main Event Highlights

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ハーフマイルトラック
ハーフマイル = 800mが基準となるが、実際は700mから1,000mオーバーまでさまざまなサイズを "1/2マイル" と呼ぶ。2輪専用トラックも少数あるが、ほとんどは4輪レース(ダートストックカー・ミジェットカー・スプリントカー)用トラックを使用。まれに1,000mの競馬場を使う場合もある。最高速度は180km/h程度だが、ターン長が短くRが小さいため、複数のライダーが車体を真横に向けて並んだ2ワイド・3ワイドでの迫力ある攻防が楽しめる。マイルレースのスピード感と、ショートトラックの接近戦両方のいいとこ取り・トータルバランスの良い魅力をもつ。

画像: Ride Daytona Short Track with Jared Mees youtu.be

Ride Daytona Short Track with Jared Mees

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ショートトラック
1周10秒に満たない100m級トラックから、ターン進入速度100km/h超の400m(1/4マイル)や150km/h超の600m(3/8マイル)まで、もっともバラエティに富んだ幅の広い区分。速度域はトラック長により異なるため、単独転倒→受傷のリスクは小さいトラックならばより低いが、距離が短くRが小さければ小さいほど、文字通りハンドルバーtoハンドルバーの接近戦、さらに言えば接触しながらの肉弾戦が繰り広げられるため、集団の前方などで転倒した場合、即後続車に弾かれたり轢かれて大怪我を負う可能性がある。路面整備の単位面積あたりの難易度とトラック用地確保の両面で、我が国では最も現実的なサイズだと言える。

画像: Springfield TT Expert Main 2012 youtu.be

Springfield TT Expert Main 2012

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TTトラック
左回りのオーバルトラックに最低1カ所ずつのシングルジャンプと右ターン(ライトハンダー)を追加するレイアウト。TTそのものはトラックサイズに関係なく、ショートトラック〜ハーフマイルまでのスケールで形作られる。ダートトラックレースの中で、このカテゴリーに限っては、前ブレーキの装着が義務とされる。通常オーバルはほぼ固定ギアで走行するが、TTはギアチェンジも多用。ストレート〜左ターンも、前ブレーキをじわっと握り込みながらシフトダウンして進入するような、ハードな構成とされることが多い。1960 ~ 70年代に屋内スタジアムで盛んに行われたTTレースから着想を得て、"スーパークロス" が誕生したと言われている。

マイル・ハーフマイル・ショートトラックは大きさによってスピードレンジや見所が変わるということで理解がし易いのですが、ことTTに関しては "平らなモトクロス" とか "ロードコースレイアウトのダート版" という解釈も不可能ではないため、なかなか厄介です。

画像: Peoria Motorcycle Club goo.gl

Peoria Motorcycle Club

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上の航空写真はアメリカのダートトラック、イリノイ州ピオリア・モーターサイクル・クラブ(PMC)。こちらはTT専用トラックで、全米プロ選手権も毎年1回必ず行われる伝統のレース会場ですが、1対2の縦横比より細長いレイアウトで、写真右側のホームストレートエンドのターン円弧が非常にタイトなことからターン1進入では前ブレーキ必須。

グラウンドレベルでのレース映像では激しく飛んでカキっと右折するように見えますが、上空からの平面図だと、自然地形の中にオーバルをそっと置いたら高低差があった、少しネジれて右ターンができた、程度の "ほぼオーバル" だということがお分かりいただけるかと思います。

画像: Lodi Cycle Bowl goo.gl

Lodi Cycle Bowl

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続いてこちらはカリフォルニア州ローダイ・サイクルボウル。常設の1/4マイル級オーバルですが、その外側とインフィールドの一部を利用して、TTレイアウトでも運用できる設計となっています。

オーバル外側 (写真右下) のセクションに前後輪がわずかに浮くような高低差、インフィールドは右回りで場合により明快なシングルジャンプが配置されます。"ボウル" の名称はトラックが1段さがったお椀状の窪地にあるからで、かつてフリーウェイのランプ (導入路) を建設するため、大規模に土を取った場所が敷地として活用されています。

路面の特徴は現場の土質と仕上げ方次第。テカテカカチカチからザックザクまで。

一言にフラットなダートと言っても、路面を構成する土質によって、そのサーフェイスには様々なキャラクターがあります。我々が重視する一番基本的なベクトルは、路面の硬軟。カチカチの硬質路面、ザクザクの軟質路面、どちらもそれぞれ魅力があるのですが、マシンのセットアップ、ライディングスタイル、競争する相手との間合いの取り方やトラックそのものの攻略方法など、全てが大幅に変わってくるため、1周のなかで硬軟を取り混ぜた "全周均質を目指さないトラック" というものは、基本的に存在しません。

先ほど紹介したローダイ・サイクルボウルは、硬質路面・ショートトラックの代表格です。硬く締まった路面は "ハードパック" 、あるいはタイヤラバーが擦り付けられて黒光りすることから "ブルーグルーヴ" と呼ばれます。青黒く変色した部分はアスファルト舗装に似た、極めて高いグリップレベルを持ちますが、ひとたびラインを外してしまうと、とたんに滑る路面の餌食になります。

画像1: Lodi Cycle Bowl 2007-10-13 撮影: 中尾省吾

Lodi Cycle Bowl 2007-10-13 撮影: 中尾省吾

ハードパックトラックは大量の水分を路面に与え、いったん土の組成を緩めてから、転圧作業を繰り返すことで硬く締められていきます。伝統的な日本家屋の土間 (三和土 = タタキ) と、基本的には同じ方法で作られるイメージです。トラックの転圧には、重量のある車両を "タイヤ1本分ずつずらしながら" ひたすら回り続けて踏み固める以外に方法がありません。この作業は "ホイールパック" と呼ばれます。

画像2: Lodi Cycle Bowl 2007-10-13 撮影: 中尾省吾

Lodi Cycle Bowl 2007-10-13 撮影: 中尾省吾

完成したトラックは、素晴らしいグリップを発揮しますが、数日が経過すると日夜の温度変化による地面の収縮や直射日光によって乾燥し、ひび割れと表面剥離が始まります。

これを食い止める技術は特になく、また大量に撒水し、一からトラック作りをリピートするのが基本的な考え方。ローダイ・サイクルボウルはアメリカ西海岸で有数の、伝統ある常設トラックですが、会員制の民主的クラブによって運営され、毎週のようにトラック整備を繰り返しながら、レースと練習走行を定期的に行っています。

画像1: AMA/GNC Rd.9 Lima, Ohio 2011-06-26 撮影: 中尾省吾

AMA/GNC Rd.9 Lima, Ohio 2011-06-26 撮影: 中尾省吾

オハイオ州ライマのハーフマイルは、ライムストーン (石灰岩) が多く含まれる、ザクザクした大粒の砂浜のようなイメージの、"クッショントラック" と呼ばれる軟質路面です。

大きめの礫は "Pea Gravel = 豆粒大の砂利" と言われるほどで、周回ごとに轍 (わだち) ができ、前走者の後輪からのルーストを真正面から浴びると自車のスピードがガクっと落ちるほどの激しい抵抗となります。ルーストを受けたヘルメットや車両のタンクはサンドブラスト後のようにガサガサに荒れるため、プロテクションのためダクトテープを貼りまくった、少々見栄えの滑稽な出で立ちのライダーとマシンがしばしば見受けられます。

画像2: AMA/GNC Rd.9 Lima, Ohio 2011-06-26 撮影: 中尾省吾

AMA/GNC Rd.9 Lima, Ohio 2011-06-26 撮影: 中尾省吾

クッショントラックにできた轍は比較的簡単に均せます。数周〜25周の各ヒートごとにこまめにメンテナンスを繰り返すことで、摩擦係数の高い均質な路面を提供することができます。

ヒヨってスロットルを閉じてしまっては失速するほどの抵抗なので、クッショントラックの攻略法はとにかくワイドオープン!ここライマのレーストラックは、オールドスクールダートトラックの雰囲気満点。独特のワイルドなレース展開が魅力です。

これらハードパックとクッショントラックの両極間に、様々なサイズとコンディションのレーストラックがあります。しかも路面状態は一日のなかで刻々と変化するので、極端に言ってしまえば同じターンは二度とやってきません。

そんな条件のなか、スロットルを操作する右手と、お尻からトラクションを感じるリアタイヤのフィーリングのみを信じてライバルたちと渡り合う。ダートトラックの魅力は、荒々しいラフさと途方もないデリケートさがたっぷり詰まった "複雑系" にあると言えるかもしれません。

レースデイの路面管理は俺たちクルーに任せろ!難しいのは普段の練習日。

我々FEVHOTSのレース開催日、参加するライダーの皆さんにはかなり長時間 "待ち" の態勢で我慢していただいています。

が、10年選手と最近始めたばかりの参加者が、どちらもそれぞれ自身の最高のパフォーマンスを発揮できるよう、可能な限り均質なコンディションを提供するのは主催者の最低限の務めですし、路面整備を行う我々の姿勢と、そのインターバル自体がライダーに心理的な安心感とリラックスを与え、無用の転倒を減らし安全に楽しんでいただくために、必要不可欠な要素だとも考えています。

画像: 2017FEVHOTS Rd.6 "Season Finale" 撮影: 齊藤淳一(Flattrack Express)

2017FEVHOTS Rd.6 "Season Finale" 撮影: 齊藤淳一(Flattrack Express)

特に撒水は、撒き過ぎればしばらくの間、トラック上は歩くこともままならない状態になりかねませんから、主催者代表である私ハヤシが責任を持って自ら行い、その後の安全確認も経験豊富な元エキスパートライダーの最終判断を仰いだのちに進行再開するように心がけています。

画像: 2017FEVHOTS Rd.6 "Season Finale" 撮影: 齊藤孝(FEVHOTS81)

2017FEVHOTS Rd.6 "Season Finale" 撮影: 齊藤孝(FEVHOTS81)

それに比べると、日常のコース営業日 = フリー走行日は、ひとりで淡々と走っても高いレベルでの路面の安定は望めません。水を撒いて、散水車を指定場所に戻し、ヘルメットをかぶって、エンジンかけたらもうすでに路面が乾いている、とか古典的なコントみたいで笑えませんけど、ママありがちです。ましてさんざん通ってそのトラックの土質と特徴を完全に理解するまでは、状況ごとに必要とされる撒水量もわかりませんから、段取りだけがわかってもすぐによい路面が作れるかどうか。

そのため我々は、"FEVHOTSオープンプラクティス"として、レース主要開催地の埼玉県川越オフロードヴィレッジで、平日火曜日を公式練習日に設定し、少しでもレースデイのコンディションに近づけるよう、私ハヤシが率先してトラック整備を行い、新規参加者にはライディングアドバイスを与える機会を設けています。

貸切走行会ではありませんし、こちらでレンタル車両をご用意したうえでの1日ミッチリの体験型個人レッスンでない限り、同地の走行料金以外には特に講習費用など発生しませんので、興味のある方はぜひ一度、軽い気持ちでご来場いただければと思います。悪天候時を除き、毎週火曜日の開催です。

自分たちの遊び場は自分たちでつくる、ということ

ダートトラックをダートトラックたらしめるもの。見るものを心地よく魅了する、過激なパフォーマンスを発揮するのが練度を積んだライダーたちならば、その活躍の舞台となるレーストラックを仕上げるのにも相応のテクニックと熱意が必要です。

ダートトラック走行経験のないトラック整備者にいくら難しい要求を突きつけたとて、走り手としてのリアリティがなければ理解することはかなり難しいでしょう。誰かがやってくれるのを待って日が暮れるより、自分から進んで作り上げるほうが、はるかに効率的ですし、むしろお互いに気分も良いものです。実現までの道のりはそれなりに長いようにはっきりと覚悟していますが、我々FEVHOTSでは現在国内数カ所のトラックを新たに構築、イベント開催することを目指し、地道な研鑽と打ち合わせを続けています。

かつてとある大企業が、レース使用も十分に考慮した公道走行可能な市販ダートトラッカーを開発し、それと同時に夢想したビジョン、"この種目を我が国に根付かせるために、全都道府県に一カ所ずつのオーバルトラックを作り上げること" も、志ある個人たちの連帯次第では、いずれ可能かもしれませんね。

画像: FEVHOTS Rd.1 2018-04-01 撮影: 山田晃生(FEVHOTS90)

FEVHOTS Rd.1 2018-04-01 撮影: 山田晃生(FEVHOTS90)

次回はダートトラックレーシングに必要不可欠なパーソナルアイテム、鉄スリッパ (ホットシュー) についてフィーチャーする予定です。ではまた来週金曜日 "Flat Track Friday!!" か、あるいは実際のレーストラックでお目にかかりましょう!

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