"あのレーストラックは足が引っかかる" とか "すぐに鉄スリッパーに穴空いちゃう" とか、ダートトラック固有の装備を身につけた左足に纏わる悩みをかかえてる方って結構おられるようなんですが、地面に擦り付けるスタイルの芸術点を競っているわけじゃなし、できるだけ引っかからないように足を出すとか無駄に擦り減らさないよう肝に銘じるとか、工夫を凝らしてくださっても良いんですよ?

この場合 "パンがないならケーキを食うぞ!" のギロチン論理でいいんです

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTS "レースプロモーター" のハヤシです。この週末にオハイオ州ライマで開催されるAFT: アメリカンフラットトラック伝統のハーフマイル戦は、ピーグラベル (豆砂利) とも言われるほど粒の大きな石灰石 = ライムストーンが深く敷き詰められたザックザクのクッショントラックで、前走車からのルースト (後塵) をまともに浴びるとこちらの車速がグーンと落ちるとか、マトモにベッタリ左足をついたら持っていかれるとか、走り終わるとヘルメットもマシンもサンドブラストを浴びたようにガッサガサ、など大変荒々しい、今日のAFT公式戦では珍しい特異なキャラクターをもつレーストラックです。

画像: トラックサイドぎりぎりで観戦して金網ごしの強烈な石つぶてを食らうのもココのレースの醍醐味?

トラックサイドぎりぎりで観戦して金網ごしの強烈な石つぶてを食らうのもココのレースの醍醐味?

太古の昔、路面を締め固める整地機材に乏しかったころには、各地のレース場の路面はこのようなクッショントラックが主流だったそうで、レコードラインがテカテカ黒光りするような (その代わり速く走れる走路が狭められる) グルーヴトラックとは全く違う、トラック幅めいっぱい幾重にも走行ラインが絡み合うワイルドなレース展開が持ち味で、この地がオールドスクールな伝統の一戦として扱われる最大の理由ともなっています。因みに本戦のレースプロモーターは、AFT現役チャンピオンのジャレッド・ミース夫妻が主催団体を立ち上げ、過去何年も継続的に運営しています。

画像: この場合 "パンがないならケーキを食うぞ!" のギロチン論理でいいんです

特有の路面をつくる "ライムストーン" が都市の名の由来ともなったこちらのレーストラックのように、同じオーバルとはいえ場所ごとにトラックの性質は大きく異なります。かたやザクザクのクッショントラックがあり、あるいは歩いただけでも足が地面に吸い付くような "スティッキー ( = べたべたと粘着性のある) " 粘土成分多めのトラックもあります。その地で入手しやすい材料で均質な競技用走路が作れれば、それが即ちレーストラック固有のキャラクターとなり、ライダーたちはライバルたちとしのぎを削るだけでなく、環境にマッチした走法を駆使して勝利を目指すこととなるのです。

前走車からのルーストを浴びると差を詰めるのが難しい → ならば異なるラインを選択する。路面の抵抗が大きく足をベッタリつくことができない → ならば接地面積を減らして (使わないわけじゃない) 対応するなど、 効率よくスムーズな走りの定義は臨機応変です。一様にベッタリ足をついてトラックコンディションに文句を言ったところで、それを攻略して先を行く他のライダーとの差を詰められるわけではありません。走りの引き出しは多い方が良いのです。

個人的にはワイルドなクッショントラック、大好きなんですよねー

マシンは大いに汚れてそこら中キズだらけになりますが、スロットル開けっ放しでターン進入しても路面抵抗が大きいので減速量も多く、案外なんとかなっちゃうクッショントラックでは、思い切りのよさと繊細にバランスを保つマシンコントロールの双方が求められます。

画像1: 個人的にはワイルドなクッショントラック、大好きなんですよねー

かれこれ20年ほど前になりますけど、まだまだ初心者?で通り一遍の走り方しか身につけていなかった筆者、初めて遠征した国内唯一無二のクッションショートトラック (残念ながら現存せず・・・) で、生まれて初めて "ピタっとハマる" ライディングを体感することができました。あの日を境に自分の走りが変わり始めたターニングポイントであったことは間違いなく、その後アメリカで未体験スケールだったクッションハーフマイルでのレースに挑戦する際にも大変良い印象で臨むことができました。もしかしたら私、日本で一番のクッション好きかもしれません (自称ね) 。

画像2: 個人的にはワイルドなクッショントラック、大好きなんですよねー

足しげく通う行きつけのホームトラックを持つのはもちろん結構ですが、それぞれ特色あるトラックを経験・攻略し、ライディングのバリエーションを増やして様々なコンディションに対応できる能力を身につけることは、それ以上に重要です。うちの子たちもそこそこ乗れるようになってきたし (ホボ電動卒業?) この夏休みはご学友一家なども引き連れて、泊まりで走って近所では他の遊びもできるような子どもの楽園みたいなところに向けて遠征?しようかなーと考えているところです。秋口あたりまでには同じ年頃の子たちと無難に競争できるくらいにスクスク育ってくれたら、いいなぁ。

ではまた次週、金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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