先週当コラムでご紹介した、全米プロダートトラック選手権におけるツルシのビッグオフロード車による新設サポートクラス "AFT Adventure Trackers™" 、あちらの業界関係者のあいだでは総じて不評なようで、各所意見交換の場が毒舌の嵐。プロレーシングを矮小化する術に長けてるなぁ!レース前アスリート同様の薬物検査をAMA本部も全員受けろって!などと元プロとかチャンピオンが言い出す始末。たしかにダートトラックマシンって創意工夫の塊みたいなところ、ありますからねー。

機能のあくなき追求が美しさと調和をもたらす、って感じなんでしょうか?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTS "レースプロモーター" のハヤシです。より速くより強く、勝つために組み上げられることが本分のレーシングマシンには、ライバルを出し抜くための独創的な (ときに奇天烈な) アイディアを具現化した "トリックパーツ" が採用されることも決して珍しくありません。

画像: 現チャンピオン、ジャレッド・ミースがインディアンFTR750以前に乗った "最後のハーレーダビッドソンXR750" 。2気筒後ろバンクが前後逆に配置され、単気筒並みにスレンダーな "王者防衛・格闘戦仕様" 。

現チャンピオン、ジャレッド・ミースがインディアンFTR750以前に乗った "最後のハーレーダビッドソンXR750" 。2気筒後ろバンクが前後逆に配置され、単気筒並みにスレンダーな "王者防衛・格闘戦仕様" 。

その多くは経験の積み重ねと創意工夫によって生み出されますが、先ずは美しさとか珍しさにフォーカスした所謂ピカピカのカスタムパーツと根本的に違うのは、機能最優先の無骨さとか現場での修復を念頭に置いた簡素な造りであることです。冒頭写真のブレーキシステムなど、ペラいアルミ板をテキトーに切り出したまんま?のようにも見えますが、その実は乗り手の要求に応じたフルアジャスタブル仕様、しかも万が一の破損や変形時にもデカハンマーと万力で叩けば直せそうな感じ。ほーいいじゃないか、こういうのでいいんだよこういうので!

画像: 機能のあくなき追求が美しさと調和をもたらす、って感じなんでしょうか?

こちらもそれと同じ車両・・・1960年代に活躍した名ライダー、バート・マーケルの氷上レース用マシンのフロント周りなんですが、前輪スパイクに氷が詰まってハンドリング不良となるのを回避するため、スタビライザー部にワイヤブラシを取り付けてデブリを取り除くようになっています。また写真中央の縦に長い板状のパーツは・・・スタート時にフロントフォークを縮めて固定し、前輪の無駄なリフトアップを防止する "ホールショットデバイス" の原型と見て間違いありません (というかバート本人がそう言ってます) 。今日ではロードレースやモトクロスでも一般的なこの手の装置ですが、この車両あくまで半世紀前の "グルグル専用車" ですからねー。

やっぱり独特の雰囲気は "神は細部に宿る" って感じからかもしれませんね

画像1: やっぱり独特の雰囲気は "神は細部に宿る" って感じからかもしれませんね

フューエルタンクやシートカウルの形状、バッテリー搭載位置、ブレーキシステムのレイアウト・・・それら全ては意味のあるディテールで、面白半分に引かれた線はどこにも存在しません。もちろん製作者の意図 (こちらの場合はキングケニーご本人かな?) を完全に読み取れるわけではありませんが、自身の拙い経験からイメージを自由に膨らませて解きほぐしていくのも愉快な作業です。

画像2: やっぱり独特の雰囲気は "神は細部に宿る" って感じからかもしれませんね

今日的モトクロス車両の吸気系、エアクリーナーひとつとっても、あちらでよく採用される半湿式K&Nタイプに変更してみるだけで、マシンの性格は驚くほど変化します (空燃費の自動補正?がかかるみたいでキャブレター車のセッティング沼みたいのがほとんどないインジェクション車って凄!)

どのくらいそうなのか、本当にそうなのか、は実際やってみないとわからないことだらけ、です。そう考えると・・・万人向けに構成されたツルシのマシンそのままでシノギを削るって、やっぱりあまり面白くないかも。勝つために成すべきことの一部、道具の洗練というパートで思考停止しちゃってる感じですか?日本的な "ワンメイクレース" とか "ノーマル無改造" とかも同じニオイしますけど。

おっとこんな時間にだれか来たようだ?
ではまた次週、金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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