夏の暑さも冬の寒さも、そこそこ穏やかな我が国の遥かナナメ上を行く厳しさの彼の地アメリカで、ダートトラックレーシングの最盛期といえば春〜初秋。堪らない暑さと陽射しを避けて特に盛夏にはナイトレースが主流だったりするほどですが、そこから一転凍える寒さの厳冬期には、この時期ならではの風物詩、スパイクタイヤ装着の氷上レースが (一部地域で) 始まります。今回は特に、自然条件に左右されにくい、インドアアイスアリーナで行われる極小オーバルレースに注目してみましょう。

厳冬期に5戦ほど開催する、ミニマムな"ワールドチャンピオンシップ"

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。ざっと見渡してみると、インドア・アイスレースのシリーズ戦って全米各地にいくつもの団体があるのですが、どうやらヨーロピアンスタイルのスピードウェイ・カテゴリーが花形で、いわゆるアメリカン・ダートトラッカーがメインを張るシリーズはあまり多くないようなんですが、そんな中でおそらく一番歴史が長いのは、ツララが垂れて凍えるICEロゴが秀逸な (ややNHRAのパクリ?) "WORLD CHAMPIONSHIP ICE RACING" なるシリーズ。ウィスコンシン州のレース団体で、今シーズンはペンシルヴァニア、アイオワ、イリノイ、オハイオ各州を回る全5戦が1〜3月に予定されています。

すぐにワールドシリーズとか言い出すあたりが流石アメリカ、えーっと、あー、良く言えばカントリーロードでフロンティアへとまっしぐら!って感じですが、こちらのシリーズは成人向け2輪が4サイクル単気筒・ピットバイクの2カテゴリー、クワッド(4輪バギー) のプロ・アマチュア的位置づけの2カテゴリー、そして4歳以上が参加できるユースクラスがそれぞれに設定されています。さらに他団体では2ストローク・ヴィンテージ・年齢別クラスやATC (3輪トライク) などもあるようです。

氷上オーバルを走るマシンならではのディテールは過去のコラムからどうぞ。

スピードウェイ種目発祥の "アリーナオーバル戦" 、誕生は1970年代ごろ?

インドア・アイスアリーナを2輪オーバルレースで使おうというアイディアは、近年の新ネタでは全然なく、古くは1970年代あるいは60年代ごろから、主にスピードウェイ用マシン (特殊アルコール燃料使用+前後ブレーキなし+変速機なし・根性なし乗車不可?) を用いて各地で散発的に行われていたようですが、観客席との間にエスケープゾーンの取りにくいアリーナ形式ならではの危険性や、建築・空調技術の進化とともに建物の気密性が飛躍的に向上したことで、アルコール燃料特有の排ガス臭気が問題となったりして、メジャースポーツ化はついぞ叶いませんでした。

我が国では馴染みの少ないアイスホッケーが冬のスポーツとして盛んな彼の国、立地条件や客席数などで興行向けのアリーナは数多くあれど、やはりレース会場として貸し出すところはかなり少数派のようで、プロモーターは毎年会場確保に奔走しているようです。氷の盤面が痛む (水を撒いて作り直せば良いのでしょうけど) こと、バックヤードその他に広大なピットエリアが必要なこと、などなど・・・ エントリー台数をしっかり集め、客席もパンパンにできるような適切な興行頻度を見定めたりもしないとならないのかもしれません。

画像: FireOnIceShowOne youtu.be

FireOnIceShowOne

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我が国でこの風変わりな演目を許すステージ、いつか見つかりますかね?

ここ日本で、例えば個人的に氷上ライディングを楽しみたい、ということであれば、それこそ関東甲信越エリアでも標高が高くてしっかり凍る温度の場所でなら、ひっそりと楽しんでいる方はいますし (大勢でお邪魔しまーす、はおそらく厳しい) 、飛行機ぶっ飛ばして寒冷地に行けば2輪専用でレンタル車まで用意する営業形態をとって、トレーニングの場として提供されている施設もあるようです。

が、自前でマシンを作り込んでクルマに積み込んで (床が傷むので専用のカバーを付けます) 、競争するために客席のあるインドア・アリーナ目指して乗り込んでゆく、というのは・・・かなりハードル高いですね。そもそも我が国のアイスアリーナってあちらのそれと比べたらちっとも大集客観戦型として作られてませんし、首都圏のその手の施設なんか、実は一般開放・フィギュアスケート・アイスホッケーの様々な団体や個人のために夜中までフル稼働で、おそらく怪しげなモータースポーツに貸し出すゆとりは・・・本当にないんでしょうか?氷を張り直すメインテナンスのタイミングとかー、スケートシーズンの終わりごろとかー、なんとかなりませんかね?

画像: 我が国でこの風変わりな演目を許すステージ、いつか見つかりますかね?

スパイクタイヤのマシンを転がすと、走ってなくても床が笑っちゃうくらいギタギタになっちゃうんですが (そしてスパイクも減る) 施設にはそれだけで拒否されそうですねぇ。もしも一縷の可能性があるならば、パドックスペースの床一面覆って養生するベニヤ板かついで参上しますけどねぇ。

実は首都圏から日帰りできる距離の屋外スピードスケート場 (オーバルですよ!) で半信半疑で貸してくれそうなところがかつてあったんですけど、昨今の温暖化とかコロナ禍とかで当面ペンディングになっちゃってたり。まぁ地道にコツコツと種蒔いて水を撒き続けるしかありませんね。氷だけに。

ではまた次週、金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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