例年盛り上がる時期を見定めるのがとても難しい (というかあまり活発ではない?) ストーブリーグ = 本場アメリカの最高峰プロレースAFT: アメリカンフラットトラック界の次シーズンへ向けた体制・移籍情報ですが、2023シーズン開幕まで1ヶ月を切った今、昨年ハーレーダビッドソンXG750Rで戦ったライダーが、相次いでKTM・・・890デュークRエンジンを搭載するオリジナルフレームのマシンを採用する別チームへの加入を発表。今期はAFTのマシン勢力図に"大きな変化"がありそうです。

ストックで最高出力121PS・迫る2024ルール変更を見据えた最適解?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。XG750RからKTMデュークへの "鞍替え" を発表したライダーとは、昨シーズンのAFTプロダクションツインズ (市販エンジン車のみが参加するサポートクラス) ・シリーズチャンピオンであるジェス・ジャニッシュと、スーパーツインズクラスを走った北カリフォルニアの暴れん坊ブロンソン・バウマン (ブライアーの2歳下の弟) の2人です。

画像1: Wally Brown Racing
Wally Brown Racing

ジャニッシュが加入するウォリー・ブラウン・レーシングの2022シーズン・AFTプロダクションツインズ仕様のマシン (ジェームズ・リスポリ車) 、整備中の一部ストリップ写真をご覧ください。市販車スペックシート上も装備重量170kg台と比較的軽量であることがフィーチャーされる890デュークRですが、AFTスーパーツインズのミニマムウェイトリミット・320パウンド = 145.15kgを目指す、徹底的に華奢でいかにも軽そうなクロモリパイプ製ツインスパーフレームを採用しています。

言ってみればカワサキER-6やヤマハMT-07などのパラレルツインエンジンを搭載する現代的2気筒ダートトラッカーと共通レイアウトのスタンダード・パッケージで、間近で見る印象は450〜600ccの単気筒フレーマーと (エンジン全幅を除けば) さして違いません。一般市販モーターサイクルを見慣れた方の目には、恐ろしくコンパクトな車格と映ることでしょう。

画像: KTM
KTM

しつこいですが市販車が↑コチラ↑で
2気筒ダートトラッカーマシンが↓コチラ↓です。

画像2: Wally Brown Racing
Wally Brown Racing

このカテゴリーのコンペティションマシンとしては定石サイズなんですけど、ヘシ折れそうにか細いスイングアーム (国産市販250ccクラスより細いんですよ) なんかチョー繊細で堪りません。よね?

にしてもジャニッシュ、昨年ハーレーでクラスチャンピオンを獲得したにも関わらず、アッサリ他メイカーに乗り換えるとこれ如何に?2016年シーズンにカワサキER6で最高峰カテゴリーで王者となったブライアン・スミスも翌年1番プレートを抱えたまんま新登場のインディアン・ファクトリーにお引っ越ししてましたけど・・・つまるところ (ファクトリーチームを除けば) メイカーからの支援なんてほとんど無きに等しく、各チームとも懐具合は厳しくとも取り組みとしてはブランディング偏重の妙な縛りもなく、かなり自由にマシンの戦闘力を高めることができる、とは言えるでしょう。

ヨーロッパ的?あるいは日本的なモーターサイクルビジネスとしては、エンドユーザー誰もが手にすることのできる一般市販車からかけ離れたフォルムのレース用マシン製作には商業的メリットがない、ということになるのでしょうが・・・?

ちょっと話題は逸れますが、アメリカには古くからクレートモーターカルチャー、というものがあります。これはクレート = 木箱入りでメイカーからユーザー向けに供されるほぼポン積み可能な "純正新品エンジン" のこと。少し調べていただけたら在米4輪メイカーは各社とも様々なラインナップを揃えていることがお分かりいただけるはずです。

1960年代のレストア用オリジナルスペックエンジンから現行モデルのインジェクションエンジン、あるいはガソリンエンジンから積み替え可能な1機240馬力のEVモーター (Ford Performance Parts・2機搭載で480馬力のEV車とかも個人で製作可能) だったり、"ドラッグレース専用・史上最大最狂のクレートエンジン" こと10,350cc (誤植じゃないです) ・最高出力1,004PSのビッグブロックV8エンジン (2021年発表・シボレーZZ632/1000V8で検索のこと) だとか・・・日本じゃ考えられませんね。

画像: フォード製 "EVクレートモーター" は1機単体3,900ドルで購入可能だとか。もちろん?旧車のEV化にも。

フォード製 "EVクレートモーター" は1機単体3,900ドルで購入可能だとか。もちろん?旧車のEV化にも。

画像: わんぱく過ぎるコンセプトのシボレーZZ632/1000V8。燃費は1分間7リットルという噂 (レースガス?)

わんぱく過ぎるコンセプトのシボレーZZ632/1000V8。燃費は1分間7リットルという噂 (レースガス?)

USホンダも (購入に一定の制限はあるみたいですが) 2,000cc直4ターボのタイプRエンジンをモータースポーツ用途限定で現在も市販しているとか?かつてモトクロッサーCRF450Rエンジンもレース用スペア販売があったみたいです (これを単品購入して450ccフレーマーを製作したビルダー多数) 。

考えてみればハーレーダビッドソンXR750もこのクレートモーターの概念そのままに販売されていたわけで、素材としてモーターをつくるメイカー + モータースポーツで戦うマシンを仕立て鍛え上げるビルダーが、それぞれの分野を深く掘り下げていくからこそ、シーンが醸成していくのだとも言えるでしょう。大量生産品をどんどん売りたいメイカーに頼ってても仕方ないってことですよねー。

それに引き換え・・・1台5万ドル・150台限定?で生産されたインディアンFTR750はすでに数年前から完成車の販売をストップしてますし、ブランドイメージの崩れることを嫌ってかクレートエンジン販売は当初からなく、部品で揃えて組むとエライ金額となるようですし・・・この先どうなっちゃうのかなぁ (実はちょっとネタを出し惜しんでいたりして) 。まぁシーズン開幕までには色々明らかになるでしょうけど、ね。

閑話休題、今シーズンKTM890デュークを使用する両チームは、翌2024年からのAFTルール変更 (排気量上限の下方修正) に対応し、次シーズンは同形式エンジンの790デュークをベースとする計画のようです。なるほど現行ルール上、かなり賢しい選択なのかもしれません。

今期は果たして何台のFTRが走るのか?どうなるベースエンジン勢力図?

数週間前のコラムでインディアンファクトリーのシェイナ・テクスター・バウマンの今シーズンの動静はぼんやりお知らせした通りですが (引き続き本人からの公式アナウンスはなし) ・・・

妻がシングルスにクラス変更 (KTMグループブランド?) 、弟がハーレー→KTMに移るからといって兄ブライアーがどうする (どうなる?) のかはまだわかりませんけど・・・もしかして身内オセロ的 (?) なこともあり得るかな?

すでに2016王者ブライアン・スミス + ハワートンモータースポーツが深く深く掘り下げたカワサキER6は、各メイカー間の出力競争の面でやや不利とはいえ十分にノウハウは蓄積され比較的安価にエンジンを用意することができ、またヤマハMT-07は有力チームとライダーが昨シーズンから実績を上げていますし、今後の成功はまだ未知数ながらロイヤルエンフィールドも可能性を秘めています。

レース専用エンジン車 + 限られたライダーによるトップカテゴリーと、"それ以外" の多数によるプロダクションクラスという体で分散して競われた2つの2気筒クラスが再び "スーパーツインズ" として統合される今シーズン、ハーレー・インディアンの行く末はもちろん、各メイカーのベースエンジン勢力図がどうなるか、引き続き3月のAFT開幕目がけて大いに注目したいところです。

ではまた次週、金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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