電動のロードレーサーといえば、今シーズンいっぱいまでMotoEのワンメイク供給をするエネルジカのエゴ・コルサや、来シーズンからMotoEを担うドゥカティのV21L、そして現在モラトリアム休止中のマン島TT・TTゼロ用の無限 神電などをイメージする人が多いでしょう。今回ご紹介するデルタ-XEは、オランダの学生レースチームがゼロから設計・構築する電動ロードレーサーの第4世代機であり、ダイナモ上では162kW(221馬力)、最高速320km/hを計測しています!!
「エレクトリック・スーパーバイク・トゥウェンテ」というプロジェクト
海外のフットボールに詳しい方は、「FCトゥウェンテ」の名などからオランダ東部のトゥウェンテ地方のことをご存知かもしれません。また理系の方のなかには、1961年創立の新興大学ながら工学系研究大学としての評価が高いトゥウェンテ大学の名を聞いたことがあるかもしれません。
EST=エレクトリック・スーパーバイク・トゥウェンテは、トゥウェンテの学生たちが作ったレーシングチームで、2017年から現在に至るまでそれぞれの代のチームが計4機種の電動ロードレーサーを製作してきました。
今年、ロードレースの実戦に投入されるのは、ESTチームが2年前から開発開始した第3世代機のエイペックス-GPと、昨年から開発された最新鋭第4世代機の「デルタ-XE」です。デルタ-XEは車重こそエイペックス-GPより思い220kgですが、歴代モデル最速の300km/hという最高速を誇ります。
デルタ-XEはダイナモテストで162kW(221馬力)、最高速320km/hを計測! ただトラブルも発生したため、この性能を安定して実用するには更なる開発が必要みたいです。そしてESTチームは、オランダのアッセンとエメン、そしてベルギーのジュール・タシェニーでのサーキット実走テストを行い、今年のレース参戦への準備を進めました。
今年、ESTチームが参戦を予定しているのは4つのイベントで、そのうちの2つはIRRC=インターナショナル・ロードレーシング・チャンピオンシップという、2003年発足のリアル・ロードレーシング(公道を使ったロードレース)のシリーズ戦のオランダ・ヘンゲローとフィンランド・イマトラでのレース。そして残り2つはインターナショナル・ダッチ・チャンピオンシップのレースで、いずれもアッセンで開催されます。
なおESTチームの究極の目標は、ロードレースの最高峰であるMotoGPクラスのマシン(4ストローク4気筒1,000cc)が叩き出すラップタイムを、電動ロードレーサーで達成する・・・というものです。目標実現のためにはより多くの馬力とよりいっそう軽さが必要と思いますが、ESTチームの試みはモータースポーツファン的にはなんとも夢のあるプロジェクトだと思います。
現状では、MotoE用エネルジカ・エゴ・コルサのタイム的なライバル関係にあるのは、実質グランプリのルーキークラスであるMoto3用マシン(4ストローク単気筒250cc)ですが、もしもESTチームの電動ロードレーサーが上述の目標を達成したら・・・そのことは2EVに興味がある人だけでなく、多くの2輪ファンの注目を集めることになるでしょう。ともあれ、今後もESTチームの活躍に期待しつつ、その活動を注視し続けたいですね!