本場アメリカのどこかBUNDOK (=片田舎)、地域・コミュニティに根ざして形成される格調高い "ローカルダートトラックレーシングシリーズ" 的なるものを、どうにか我が国にも定着させられないかと日々奮闘中の筆者主宰のレース団体FEVHOTS。本日は我々ダートトラッカーが毎年欠かさずお手伝いさせていただく、次世代に向けた珠玉のローカルイベントとその希有な主催者についてのお話。

補助輪なしで自転車に乗れる子は30分でバイクも乗れるようになります?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。今日ご紹介するイベントは、長野県南部の上伊那郡飯島町・豊かな緑に囲まれた、とある大きな公園内の芝生のオートキャンプ場で毎年夏に開かれる "ちびっこオフロードバイク体験" 。地元飯島町観光協会が主催する、ご当地サマーフェスティバルの中のコンテンツです。

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今年は会場都合で9月末に開催されましたが、例年ならば8月お盆開けごろの週末に行われるイベントで、夏休みで帰省中の親子連れや、毎年楽しみにして関東や中部地方からも大勢の子供が押し寄せ、時に数十人待ちともなるなど、他ではなかなか見る機会の少ない、地域・コミュニティの集いの場に自然に "子供のオートバイ遊び" が存在する、世にも貴重な光景が現れます。

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普段はキャンプサイトとなる木立の中の芝生広場に、全く初めての子のための STOP & GO 練習エリアと、フラットで障害物のない安全な周回コースを設定。インストラクター経験豊富な当地のバイクショップオーナーが主催し、地元の有志サポーターたちがバックアップする形で10年以上続くこの会、素晴らしいことのひとつは "ライディングスクール" 的な教え授ける雰囲気から離れ、あくまで子供たち自身がまずは笑顔を爆発させるような "体験" を目的とするところ。巧くなったり速くなったりはまた別の機会に (他でもできること)、とにかく第一歩として怪我なく楽しみバイクに親しんでもらおう、というコンセプトです。

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筆者ハヤシの主宰するダートトラックレース団体FEVHOTSでは、このイベントの主催者である小林哲雄さんとの深く長いご縁もあり、6年ほど前から多くのダートトラッカーと共に、インストラクター・サポートスタッフとして参加しています。子供たちの参加費用は1,000円 / 1時間の走行。補助輪なし自転車に乗れることが前提の小学生までが対象ですが、ほとんどの子は15分から30分で基本操作を理解し、変速なしのキッズモトクロスバイク (ヤマハPW50やホンダQR50) を難なく走らせることができるようになります。2回目以降になると、あるいは勘の良い子は初回から? カブ式遠心クラッチの車両 (ホンダXR50Rなど) にもあっと言う間に対応してしまう事にはいつも驚かされます。

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"夏休みの思い出"的経験を築くため何十台もキッズバイクを揃える個人店。

画像1: "夏休みの思い出"的経験を築くため何十台もキッズバイクを揃える個人店。

この類い稀で地道な活動の主催者で、我々の古くからの友人をご紹介しましょう。飯島町で "モトクラブコバヤシ" というオートバイショップを構える小林哲雄さんです。当地の人たちからは先代の旧屋号?の "コバヤシホンダ" とも呼ばれて親しまれる、町のオートバイ屋のシーイーオー。このような体験型イベントこそ改めて人々にモーターサイクルへの興味をもってもらう絶好の機会と考え、手元に保有するキッズモトクロスバイクは20台。オトナ向けとしても100ccのミニオフロード車を多数お持ちです。本業の二輪関連だけでなく、町や地域での新たな話題作りやイベント創成にもたいへん積極的で、様々な場面で存在感を示して活躍する・・・ "マルチタレント (多才) な人" なのです。

画像2: "夏休みの思い出"的経験を築くため何十台もキッズバイクを揃える個人店。

モトクラブコバヤシは月〜土曜の "平日営業" 。地域色も濃くバイクのみならず農機具とかアレとかコレとか様々な相談・修理だって舞い込みます。なので営業時間は朝7時 ( ! ) から夜20時まで。店主小林さんは朝から晩まで飛び回っておられますから一日中休む間もありません。それなら日曜祝日・カレンダーの赤い日は?・・・驚くことに小林さんは休みません。ご自身の作り上げたオフロードコース・"オートパーククワ" の管理業務が待っています。ホントいつ休んでるんだろ。元旦だけかな。

売り手の責務として遊ぶ場も提供したいと仰る崇高無比な店主の作る "クワ" 。

今からおよそ30年前、小林哲雄さんが仲間たちと 中川村 (飯島町の隣) の "クワ畑を切り開いて" 作り始めたオフロードコースは、やがてその由来で人々から "オートパーククワ" と呼ばれることになります。当初はエンデューロ / モトクロスのための場でしたが、1990年代後半に栃木県ツインリンクもてぎで行われていた "全日本ダートトラック選手権" を観戦し、おそらく天啓を受けた ( ? ) 小林ご夫妻は、ホームコースの片隅に新たに200m級ダートオーバルを築くことをキッパリと決断されます。

1990年代末〜2000年代、国内のダートトラックレースシーンはツインリンクもてぎと埼玉県の桶川スポーツランドという2箇所のトラックがその中心であったため、遠方に新たに完成したらしいクワのオーバルトラックがただちに大盛況、という状況にはなかなかなりませんが、粘土分の多い関東ローム層のトラックとは明らかに異なる土質、そして踏み固める系 = ハードパックが主流だった国内各トラックに対し、ブワーっと後塵の巻き起こる "クッショントラック" にどこかココロ惹かれたライダーたちが徐々に足を運ぶようになります。14年前に初めて訪れた筆者も当然そのうちの1人。

画像1: 売り手の責務として遊ぶ場も提供したいと仰る崇高無比な店主の作る "クワ" 。

そして2010年代に入り、様々な状況から国内でのダートトラックレースシリーズがおもいきり下火になりかけた折、筆者ハヤシの立ち上げたFEVHOTSでは、当地オートパーククワを主要レース会場のひとつとして使わせていただくこととなりました。手前味噌ではありますが、クワの名を全国区へと広めるお手伝いは多少なりできたもの、と考えてはいます。

画像2: 売り手の責務として遊ぶ場も提供したいと仰る崇高無比な店主の作る "クワ" 。

とはいえ残念な事に、30年前に小林さんがクワ畑を開拓して始めた第一期オートパーククワ、我々が10年とか通ったダートオーバルは今はもうありません。近傍の大鹿村を通る予定のリニア新幹線関連工事のためコースはいったん閉鎖、その土地は返還となり、現在は延々と続くトンネル工事からの残土仮置き場となって跡形もなく埋め立てられています。

普通ならこのお伽噺、このあたりで悲劇的に完結しちゃうところかもしれませんが、地元の名士・不屈のマルチタレント小林哲雄さんは決して諦めませんでした。候補地巡りから筆者もお付き合いさせていただきましたが、条件に合う土地探しはなかなか難航しつつ、コース閉鎖から1年ほど経って、前の土地に比べればかなり手狭な山奥ではありますがついに新たなトラック用地を確保。

画像3: 売り手の責務として遊ぶ場も提供したいと仰る崇高無比な店主の作る "クワ" 。

木々の伐採やら下草の処理やら、初期のお手伝いは我々FEVHOTSのメンバーも多く参加しましたが、コースの態をなすところまでたどり着くには、モトクラブコバヤシと仲間たち、地元長野を中心とした人たちの、1年以上の不屈の努力なくしてはまず不可能だったことでしょう。

昨年8月のちびっこバイク体験の時期には、新コースは未だオープン前工事の詰めの段階でした。それから季節はぐるりと一周。今ようやくリ・スタートの時を迎えたといって良いかもしれません。

画像4: 売り手の責務として遊ぶ場も提供したいと仰る崇高無比な店主の作る "クワ" 。

新たなオーバルはおそらくレース会場としては "国内史上最小" 120m級。路面の質と雰囲気は極めて好ましい印象ですが・・・ハッキリ言って小オーバルってね、メチャクチャ難易度高いですよ。スピード出ないのに真横向いて正確に向きを変えないとならないのです。全く手も足も出ず攻略できないライダーも出てくるかも?まあ向き不向き、仕方ないですよね。食わず嫌いは言うまでもないけど。

画像5: 売り手の責務として遊ぶ場も提供したいと仰る崇高無比な店主の作る "クワ" 。

我々FEVHOTSはこの狭さにあっても10台とかそれ以上でバッチバチの、密度と熱量の高いレースをしたいのです。ダートトラックレーシングのひとつのあり方として、他の種目よりはるかに狭いスペースでも精度高く走れるということになれば、日本各地の無数の狭小なスポットに新たな可能性の種を蒔くこともできるでしょう。より低速だし目が行き届くという意味ではお子さんとか初心者を走らせるにも安心材料ですしね。

画像6: 売り手の責務として遊ぶ場も提供したいと仰る崇高無比な店主の作る "クワ" 。

地元愛とオートバイ文化を広めたいという滾る情熱、そしてなにより温和な顔して執念の人・モトクラブコバヤシの小林哲雄さんが仲間たちと再び造り上げた "不滅のレーストラック" オートパーククワ。次週10月13日(日)は筆者主宰のFEVHOTSがこちらでレース開催の予定です。来年はFEVHOTSとして毎月1回程度の各種イベント開催やキッズ向けコンテンツもぐいぐい盛り込む計画。

画像7: 売り手の責務として遊ぶ場も提供したいと仰る崇高無比な店主の作る "クワ" 。

今後の展開にご期待下さい。ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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