マシンの汚れはココロの乱れ? 真に速いライダーは"汚バイク"には乗ってません。
WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。走りまくれば汚れ、各部が消耗するのは土系レーサーの宿命ですが、幸いなことに?雨天走行という悪条件のないダートトラックは、他のオフロードカテゴリーでイメージされるような、車輪が回らなくなるほどの "泥ダンゴ状態" になることは、レースの現場ではほとんど皆無と言って良いでしょう。
とはいえ前回走行して汚れたまま次の練習やレースに向かうようでは、マシンの性能低下への気づき・初期でのトラブルシューティングの機会をみすみす逃すこともあるはず。場合によってはスキルアップを阻み、さらに運が悪ければ (実際は事前に対処できる以上、運不運の問題ではありませんが) 自身はもとより共に走るライダーの身に危険をもたらす "小さな綻び" となる可能性もあるのです。
多くのオフロードバイクは、泥や水の浸入に比較的強い湿式エアフィルター (スポンジにオイルを染み込ませるタイプ) の採用が一般的ですが、高回転域を毎周常用し、低速から高速までのフラットで力強いトルク感を求めるダートトラックライディングでは、より一層多くの燃料と空気を送り込むべく、上の写真のような "半湿式型フィルター" が好んで選ばれます。
吸入効果の高い半湿式エアフィルターは汚れるのも早く、普通の条件のダートトラック走行なら最低でも乗車日ごとの清掃が当たり前。ベッタベタの湿式に比べて手入れが容易な点は長所です。フィルターが目詰まりし空気の吸入量が落ちればその分混合気は濃くなるため、狙い通りの最高のパフォーマンスは発揮できません。状況によってはエンジンライフを著しく縮めることにも繋がるため、拘りのあるライダーは、決勝レース前に清掃済みのスペアに交換する姿を目にすることさえあります。
汚れたドライブチェーンは抵抗となり、パワーロスに直結しているはずです。チェーン自体や前後スプロケットの摩耗も進み、結果としてランニングコストの上昇にもつながってしまうでしょう。
フロントフォークに代表される摺動部や、ステムなど回転部に汚れが付着したまま固まってしまえば、オイルシールやベアリングを痛めて動きが悪化、本来の性能は発揮できなくなります。気にせず乗れる鈍感力 = 無意識での適応能力もまあ一種の才能かもしれませんが・・・気にして正しい状態 = よりベターなパフォーマンスを狙い調整するライダー + マシンに勝てる材料にはなり得ません。
ここまで4点の写真は筆者主宰で毎火曜日開催・埼玉県川越オフロードヴィレッジでのFEVHOTSオープンプラクティスからのもの。前夜にしっかり降った雨上がりで特別汚れやすいコンディションの一日だったことを、持ち主たちの名誉のために申し添えます。次週は当然ピカピカで登場ですよね。
AMAスーパークロスメカニック直伝!乗るたびに行うルーティン洗車TIPSです。
ではここで筆者主宰のダートトラックレース団体・FEVHOTSのタイトルスポンサー / オフィシャルパートナーでもあるLUCAS OIL - ルーカスオイルのYouTube公式動画から、本場AMAスーパークロスのメカニックが、そのマシンの洗車方法を紹介するムービーをどうぞ。
ダートトラックより格段に泥汚れの激しいモトクロス / スーパークロスカテゴリーでは、一日一回の洗車では全く間に合わない場面があります。トラックコンディションによっては1走行 = スティントごとにこのように手をかけて洗うことも。
モトクロッサーベースのDTXや、いわゆる一般公道用のモデルから仕立てたダートトラックマシンは、この動画と同様エンジン内部に水が入らないよう吸気側と排気側にフタをして、文字通りザブザブ洗って全く問題ありません。洗ったままにして水気を残すと錆びの原因になるので、洗車後はマシン全体を入念にエアブローやカラ拭きして乾燥させ、さらにチェーンなどへの注油を行います。
「汚れを落としてよく洗い + しっかりと拭き上げ + 各所に適切に油を注す」
この3つのフェイズを日々のルーティンとすることで、トラブルの兆候やマシンのダメージを未然に、あるいは軽微なうちに発見し対処することも可能になるはずです。
セットアップの方向性も定まり、より激しいライディングが可能になれば、当然マシンの消耗は大きくなります。緩慢なノーマルショックからスペシャルメイドの社外サスペンションに変更してテスト中のこちらの車両は、狙い以上の性能を発揮してくれそうです。ということは同時に車体への負荷が増し、乗る度の各部増し締めやチェックも必要になるかも?より高いパフォーマンスを得ることと引き換えのこのような代償も、日常的な清掃とメインテナンスの習慣があれば発見しやすいでしょう。
クロモリパイプ製"フレーマー"は、洗わず全バラ(!?)清掃という方法もアリ。
現代的なアルミフレーム採用のモトクロスレーサーや、一般的な鉄フレームの公道用市販車は、ただ洗えば良いだけですが、このオーバル競技に最適なしなり特性を持たせた、いわゆる "クロモリフレームの専用車" はどのようにして汚れを落とすのがよいでしょうか?
クロームモリブデン鋼は自転車のフレームなどでもよく使われる素材で、単純な造形の多いそちらの世界ではやはり "洗ったあとよく水気を切れば洗車問題なし" とも言われるようですが・・・。
ダートトラックレース用クロモリフレームは、アルミやスチールフレームのマシンと比べ、独特にして抜群のトラクション性能を発揮しますが、その反面、他のどちらより頻繁なダメージチェックが必要です。まぁ壊れたら直せば良いだけなんですが、各部の、特に応力の加わる箇所にはしばしばクラック (ヒビ) が入ります。それに気づかずジャバジャバ水をかけて洗ったら・・・フレーム内側に入り込んだ水分は、見えない部分からダメージを深めてしまうでしょう。自転車より複雑な構成ですし。
1980年代頃まで多く見られたニッケルメッキ仕上げのレーシングフレームは、クラックが入った場合、表面のメッキ層まで目視可能な割れを敢えて生じさせ、早い処置を可能にする工夫。しかし酸性の高まったメッキパイプ内部への水の侵入は、現代のもの以上に丁寧にケアする必要もあります。
乗る度にエンジンを下ろすのはさすがに乗り手として本末転倒、大げさ過ぎますが、外せるものは外して硬く絞った濡れ布巾などを使い、極力水気と触れないように汚れを落とすのが良さそうです。
とはいっても車体のクラックは上等のクロモリパイプ製レーシングフレームだけに特有のものではありません。大ジャンプにも耐えられる設計の、現代的なアルミフレームモトクロッサー = DTXであっても、ごく稀に、ヘッドパイプやスイングアームピボット周辺に細い・しかし見間違いようもないヒビが回るケースもあります。おそらく捩じれながら旋回するこの競技ならではの消耗事例です。
来たる開幕戦、朝イチのレース車検にはピカピカの状態でお越しください。
レーシングマシンが最もよく整備された状態であるべき時は、レース日の朝です。スポーツとしては、単独走行であってもそれなりのリスクは常につきまとうわけですが、気心の知れた、目的を同じくする同士 = 同志とはいえ、競争形式で接触スレスレの接近戦を繰り広げる以上、レースには練習以上の集中と、精度の高いパフォーマンスが必要です。同時にマシン由来のトラブルは可能な限り排除する努力をしていただなければなりません。競技の当事者たる乗り手自身の責任において、です。
レース主催者として、汚れたボロバイクは見栄えという意味でご遠慮いただきたい・・・とかそう言った、ある意味での趣味志向からの視点ではなく、ゆるみやヒビ、オイルや冷却水など液体漏れ、あるいはその他の重大因子になりうる種を "可能な限りすべて" 未然に摘むために、車両チェックにはどうぞバリっと整備済みのこぎれいな状態でお越し下さい。それが結果として新たなファンの獲得につながるのなら、これまた願ったり叶ったりですが。そして日々の練習においてもそれら儀式を習慣化していただければと思います。
本日のオマケ: しつこい増し締めと各部チェックを乗車前の儀式にする動画。
こちらはオマケで紹介します。全開走行時間が長く、各部が緩む傾向にあるため増し締めの必須なダートトラックには、まさにうってつけのルーティンになるかも。というか・・・してくださいね。
いかがでしたか?筆者主宰のダートトラックレースシリーズ・FEVHOTSの2019シーズンは今月最終日3月31日の日曜日、埼玉県川越市オフロードヴィレッジでの第一戦より開幕の予定です。
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!