ターン進入で深くマシンをバンクさせ、鉄スリッパーを履いた左足が路面に触れるダートトラックライディング。その左足、いつまで擦り続けて良いものか、考えたことありますか?本日はターン進入→フルバンクの横滑りモーションに比べて後回し・疎か・我流となりがちな、"ターン後半〜ストレートのWIDE OPEN 区間" へたどり着くまでの、より速く能動的なライディングの条件を考えます。

"出したら仕舞う" が基本!放り出しっぱなしでは何の効果も得られません。

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。ダートトラックの、それもコーナー長さと半径の小さなショートトラックの一般的なイメージといえば、ターン進入で真横を向いたフルバンク・スライドブレーキング・鋭い車体の向き変えに注目されがちです。

もちろん積極的な意思をもってターンに入っていかなければ、そこから立ち上がりにかけての一連のフローは始まりすらしません。進入での華々しい横滑りアクションが、このシンプルながら激しいスポーツに取り組むうえで、ひとつめの重要なテーマであることは間違いないのですが。

実はその先のターン後半、立ち上がり加速の始まりからの繊細で正確なマシン操作と、そこへ向かうライディングフォームを整えることこそ、次なるターンへのより鋭く速い進入を実現させる重要な鍵となります。ところがダートトラック未体験・あるいは生の走行風景を未見の方は当然ながら、毎周必死で走っている初級・中級ライダーにも、惜しいことに未だその意識は広く浸透していない印象。

画像: "出したら仕舞う" が基本!放り出しっぱなしでは何の効果も得られません。

スライディングブレーキによって減速とマシンの方向転換が進み、いよいよ加速し始める態勢に完全に持ち込むことができたなら、不意の横滑りに対応するなどの例外を除けば、もうそれ以上積極的に左足を路面と接触させる理由はありません。

ライダーとマシンとの間には、シートに腰から上を預ける尻と、両手・両足の計5つの接点があります。無用のパワースライドを最少に抑え、力強くマシンを前方へと走らせるには、左足を車体に寄せ、さらにコンディションが許せば理想的にはステップに載せ、上の写真のように、左下半身を中心軸として大きく上体を内倒させ、加速度と車体姿勢とのギリギリのバランスを探る必要があります。

ここでロードレースでの"ニースライダー"の接地タイミングを見てみましょう。

画像: Marc Márquez Drift Slow Motion youtu.be

Marc Márquez Drift Slow Motion

youtu.be

ダートトラックライディングで鉄スリッパーを路面と接触させ、確実に機能させるべき区間とは、アスファルトをハングオンスタイルで走るロードライディングにおける、ニースライダー (バンクセンサー) のそれと似て、ターンの前半部分に集中します。上の映像はmotoGPでマルク・マルケスが後輪を外側にジリジリと滑らせつつタイトコーナーを行く様子。スロットルを開け、マシンが起き上がり始める前にヒザを畳み、過剰なホイールスピン、あるいはそこから急激にグリップを回復してのハイサイド転倒を呼びかねない、無駄な抵抗を排除していることがご確認いただけるかと思います。

"左足を擦ったままでの立ち上がり" はどうして合理的でないのか。

それは端的に言えば、マシンの前進の邪魔をする、不必要な横滑りが生じる原因になるからです。

画像: "左足を擦ったままでの立ち上がり" はどうして合理的でないのか。

ターン後半区間でのこちらのライダーの写真を例にしてみます。左足を長く残して接地させ続けた結果、前・後輪に次ぐ第三の支点となった左足を軸に、駆動輪が無駄なパワースライドを始め、ターン外側を目がけて横滑ってはらみつつあります。すでに空転してしまったリアタイヤへと積極的に加重するのは難しいため、いくらか安心感を得るためにはハンドルバーに必要以上にしがみつくこととなり、マシンの駆動力を路面へと無駄なく伝える = トラクションさせることが全くできていません。

また接地したままの左足は路面との過大な抵抗を生み、理想的な車体のホールドを難しくさせます。上半身は前のめり過ぎ、下半身は後方へと遅れていますが、この姿勢ではこのままなんとか次のターンへと向かっていくしかありません。

先に、"左足は理想的にはステップに載せるべし" と書きましたが、実はそれ自体、かなり難易度の高い動作です。どこまでもダラダラと擦り続けずターン後半では接地した足を上げる、あるいは車体に寄せようという意識をもつことが、その第一歩です。まだ未経験の方が偶然に手に入れられるテクニックではないかもしれません。マシンと路面のコンディションがそれなりに安定した状況で、明確なイメージをもち、繰り返しトライすることになるでしょう。

"それっぽさ" の追求・研究・真似事からスポーツのツボに迫る。

www.americanflattrack.com

ここまで極端なフォームで450ccDTXを乗りこなすまでには、途方もない経験が必要なことは間違いありませんが、知識や漠然としたイメージが先走るアプローチであっても、おおよそこの方角を目指していけば、それっぽく = 結果的に理にかなった姿勢を身につけられる可能性は高いはずです。

下のアルバムには、全米プロダートトラック選手権: American Flat Trackの公式写真から、我が国のダートトラックシーンに身近な、単気筒450ccDTXでのショートトラックカテゴリー、それも立ち上がり区間に限ったものを選りすぐってみました。左足は必ずしもステップに載せるのみが正解ではなく、フットペグ後側に足先を差し入れたり、大きく浮かせたり、方法は様々ですが、ダラダラ引きずるものではない、ということだけは、どこか頭の片隅に留め置いていただけたらよいかと思います。

いかがでしたか?筆者の主宰するダートトラックレースシリーズFEVHOTSは、来る12/2(日)パシフィコ横浜で開催される横浜ホットロッドカスタムショーに、かつて全米選手権を戦ったハーレーダビッドソンファクトリーチームのXR750と、フルレストアを済ませ、これから国内で走り出す予定のKNIGHTフレーム・WOODチューンのROTAX600を参考出展予定です。また翌週12/9(日)と12/23(日)には埼玉県川越市のウェストポイント・オフロードヴィレッジにて今期あと2レースを開催予定!まだまだ忙しい年の瀬になりそうです。

ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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