"失敗は成功の母" などと古来より言われ、体育会的マッチョ思考なら "転んだ数だけ上手くなる" ようにも捉えられるダートトラックやオフロードライディング全般ですが、なぜ転倒したのか・するのか、メカニズムを正しく理解し、状況をコントロールできる小さな成功体験を積み重ねることはそれ以上に重要です。本日はダートトラックライディングにおいて、このスポーツに徐々に慣れてきたライダーに起こりがちな "ターン進入での転倒" と、それに対応する心?技?体?の様々なアイディアについてご紹介しようと思います。

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。スムーズでエッジの効いた高いレベルのパフォーマンスを見せる上級者の走る姿・・・写真や動画も含めて・・・から、このスポーツを始めたばかりのライダーが見様見真似で "転ばず走る方法" を探るのはなかなか難しいことかもしれません。

画像: 本当にそうなのか。どのくらいそうなのか。 ライダー: 大森雅俊, 撮影: 菅原健大

本当にそうなのか。どのくらいそうなのか。
ライダー: 大森雅俊, 撮影: 菅原健大

彼らはそうそう転びません。より深いバンク角・さらなる速さ・ライバルに打ち勝つためのチャレンジの結果としての転倒はあっても、それは基本走法とその応用を超えた、さらに一歩も二歩も先での話。失敗しない人の後ろ姿を羨望の眼差しを込めて眺める以外に、失敗を避ける方法を学ぶには、どうすればよいのでしょうか。

何にせよまずビギナーは、ベーシックライディングを確実に身につけるために知識を深め、技術を磨く必要があります。せっかく取り組み始めたこのスポーツを、怪我からの回復のためにしばらくお預けにするような、もったいない時間を過ごすべきではありません。

前後輪が"同一軌道"にある限り、加速はやめられてもブレーキングはできません。

画像1: 撮影: FEVHOTS

撮影: FEVHOTS

こちらは2名のライダーの協力の元、ストレートからターン進入部を異なるアプローチで走行した比較写真です。前輪の軌道を赤色・後輪の軌道を青色で示しています。

上の17号車のライダーのそれと比べると、下のライダーの前後輪が描く軌道は重なり合わっていません。リアタイヤが大きく振り出され、軌道にズレが生じていることから、マシンの横滑り率がより高いことをご理解いただけるかと思います。

上のライダーは、ターン進入以前にスロットルを戻して加速をスッパリと中止し、路面のコンディションとタイヤのグリップ性能に、マシンの運動エネルギーを完全に委ねて旋回しています。これよりさらに減速する手段はリアブレーキを使う以外にありませんが、後輪が大きくスリップして転倒してしまう可能性もあり、不用意な操作はできません。つまりターン後半、成り行きで車体の進行方向が変わるまでは、ほとんど何もできることがないのです。待つしかない "受け身の状態" ですが、その間に前輪がグリップを失い、フロント側に起因して転倒する可能性も捨て切れません。

下のライダーは、ターン進入以降もスロットルを少しだけ残し、またストレートを走ってきたマシンの直進運動エネルギーと遠心力を掛け合わせて横方向に作用させることで、後輪の描く軌道を前輪のそれより外側に膨らませて "意図的にスリップさせる" ことに成功しています。前輪の操舵・車体のバンク角・さらにリアブレーキ使用もオプションとして有効に働かせ、積極的に車体の速度調整と進行方向の変更ができる、"よりアクティブな状態" だと言えるでしょう。

ターン進入部での、ライダーの操作に起因する転倒の多くは、"スライド量の適切な調整" に失敗することで起こります。フロントからの転倒は後輪のスリップ率が低く前輪に依存しすぎているため、リアからの転倒は意図の範囲を超えた後輪の滑り過ぎが原因です。

マシンを最大角まで寝かせ、前後輪以外が接地した"その先"では何が起こるのか。

画像1: 撮影: 菅原健大

撮影: 菅原健大

すでに転倒済みのこちらの写真、コラム冒頭の同様の画像と併せ、何かお気付きのポイントはあるでしょうか。どちらも左側を下にして転がっています。転んだ原因はそれぞれにあるのでしょうが、普段は触れないタイヤ以外の部分が強く地面に接触すると・・・?

どんな車両でもほぼ確実に、まずリアタイヤが浮きます。対して前輪は操舵機構があるため、路面に追従する傾向にあります。風で倒れた放置自転車と同様です。深く深くマシンを寝かせて進入できるようになってきたあなたが、それでも時折前触れ無しに転んでしまうのは、左フットペグが接地したその瞬間、リアタイヤが持ち上がって駆動力 = 路面を捕え続ける力が失われているからかもしれません。

可倒式フットペグを信じてはいけない?

画像2: 撮影: FEVHOTS

撮影: FEVHOTS

一般的なモーターサイクルのステップ = フットペグは、後ろ上方45°に跳ね上がる可倒式のものが多く、写真のように倒れたステップを正しい位置に戻すためのリターンスプリング (ばね) がついています。ダートトラックでは、特に小型軽量の小排気量マシンで小トラックを周回する場合に顕著ですが、路面に強く接地した時、この反発力が災いしてリアタイヤが浮き上がるケースがあるのです。

画像2: 撮影: 菅原健大

撮影: 菅原健大

こちらは夕暮れのグリップレベルの高いトラックでの100ccマシンの走行シーンです。無駄なカウンターステアを抑えてリアタイヤを振り出し、深くマシンをバンクさせたバランスの良いライディングですが、左フットペグは地面に接地していることが確認できますね。

画像3: 撮影: FEVHOTS

撮影: FEVHOTS

こちらはオーバル走行に特化した "フレーマー" の左ステップ部。接地しても不必要に強い反発力を生まないよう、一般的なリターンスプリング式のステップではなく、ゴム板の反力を利用する仕組みです。またフットペグの倒れる方向は斜め後方ではなく、前後両輪がフルバンク時に完全に横滑った場合にまで無理のない "真上" に跳ね上がるレイアウトです。

画像4: 撮影: FEVHOTS

撮影: FEVHOTS

本格的なオーバルトラック用専用車両は、この写真のC&J製フレームのように、そもそも左右のフットペグの取り付け位置が大きく食い違ったものがほとんどです。右側ステップは低く・より前方に配して旋回中の加重による姿勢制御と繊細なリアブレーキ操作を可能にします。対する左側は深いバンク角の確保と、高い位置に保持した左足をいち早く戻せるよう、スイングアームピボット付近に。

画像: 可倒式フットペグを信じてはいけない?

本場アメリカのインドア100m級の超ショートトラックで、AFTプロライダーが450ccDTXマシンに施したセットアップ。バンク角を可能なかぎり深く取るためステップそのものを外し、チェンジペダルの先端にも誤ってギアが変わらないよう細工がなされています。左右対象で形づくられるのが前提のモーターサイクルを、左回りのトラックに合わせてその姿を最適化していく様子も、オーバルレーシングならではの取り組みだと言えます。

前後の加重バランス・スリップとグリップを制御しやすい体勢と車体を求めよう。

ここまで様々なアイディアを紹介しましたが、唯一無二の正解があるわけではありません。転びまくってモノにしたいスポ根野郎の精神も否定はしませんが、リスキーかつ遠回りだと私は思います。

マシンを是が非でも横向きに走らせようと手を替え品を替え試行錯誤すること。
"あるのが当たり前" のちっぽけなバネを一つだけ外してみること。
あなたのダートトラックライディングを、モーターサイクルライフを激変させるきっかけは、案外身近に見つかるかもしれませんね。ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!

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