女友達から突然迎えに来いと連絡が来ても、男友達から財布を探してくれと頼まれても、軽く二つ返事しすぐにバイクに跨り駆けつける主人公。
女友達は、彼氏とケンカしては主人公を呼び出し、迎えに来させるとバイクの後ろで何時間も泣きわめく。そういって騒いでいたかと思いきや、いつの間にか彼氏と復縁。その繰り返しだ。
男友達の財布はなかなか出てこない。金は貸さないけどバイクの後ろになら乗っけてやるよ、と言って連れ出し、とりあえずラーメン一杯を奢ってやる。
主人公にとっては必ずしも重要ではない用件であっても、断らない。それらが「バイクを走らせる理由」になるならば。彼の頭の中は、四六時中バイクのことだらけ。走りたくて仕方がないのだ。
いろいろなことから目を背けているかもしれない。つらいことを考えないようにしているのかもしれない。でも、決して消極的な気分ではない。いまを思いのままに楽しく生きているだけだ。
そんな彼の愛車はSR400
作中での主人公は既にSRの虜となっているが、それに乗り始めた当初は特に愛情もなく、単なるアシとして何気なく中古車を購入したという設定になっている。その後、バイクにガタがきては修理し、すこし手を加え、と繰り返しているうちに、いつの間にかハマってしまったのだ。
1978年から発売開始され、多くの人に受け継がれてきたSR400は、手綱は自由で、誰しもが自分色に染められる、伝統と奔放が融合した単車だ。
彼が偶然手にしたそのバイクは、作中での彼の心情と環境、SRのスタイルを考えると、彼をバイクに夢中にさせるにはまさにうってつけの条件を兼ね備えた一台だったのかもしれない。