自分を捨てて消えた男を追って、マッハに乗って全国を旅する女のストーリーを紹介した。
女はキャバクラで働きながら金を貯めては、男の影を目指して次の街へとマッハIIIを駆っていく。
そして、その女がなぜマッハに乗ることになったのかを描く、二人のエピソードも紹介した。
平凡なOLであったはずの彼女がなぜ、バイク乗りになり、男を怯ませるほどのイイ女になったのか、そして男がなぜ女とマッハを捨てて不意に消えたのか。そのきっかけとなるストーリーを紹介した。
そして、いま、マッハと男と女の、エピソード3を紹介する。
変化はしたが進化はしていなかった男の時間
同棲していた女とマッハを捨てて消えた男。
何かを変えようと、全てを捨てたはずの彼は、3年経っても根無し草のままだった。
パチンコで暇をつぶし、淀む河に浮かぶ落ち葉のように漂っていた。
結局何も変わっていない自分に苛立つ中、降りたはずのバイクに目が止まるようになる。
ただスロットルをひねれば手に入った疾走感。無邪気なまでの快感。
3年の時間は取り戻すには長すぎた?
もう一度あの極上の加速を、流れる風景を、強い疾走感を取り戻したい。
3年ぶりに思いだした熱い気分を、男は抑えることができなくなる。
そこで、かつてマッハを買ったバイク屋に足を向けるが、もちろんそこにマッハはすでにない。
マッハの姿がないことに落胆する男だったが、考えてみれば当たり前のことだ。
しかし、彼の視線は、店の隅に鎮座する一台のバイクに吸い寄せられるのだ。それはRZ。
YAMAHAのRZ350だった。
Purchase IT! (そいつを買え!)
そして結局、彼はRZ350を買うのだ。
久しぶりの単車は、忘れていた凄まじい加速を彼に与えてくれた。ガツンと尻を蹴飛ばされるような加速に、男は再び酔い痴れる。忘れていた想いがほとばしる。
3年も離れていたバイクの再会。あとは捨てたはずの彼女との再会を果たすだけだ。会わす顔がないとか、会ってどうする、というような考えは、RZの加速の中で後ろに振り切っていく。そんなものはあとからついてくる。それがバイクに乗るということだと、彼は思い出すのだ。
マッハと女が、自分を追っていることを知ってか知らずか、彼はRZを駆って彼女を探し始める。
彼女を探すために走っているのか、忘れていたはずの 一生手放したくない極上の加速に酔い痴れるためか、もはや彼にはわからないし、それはもう関係ない。
男の時間は再び動き出したのだ。