RIDEXは、東本昌平先生の短編を集めたコミックのムック本である。
そして今回紹介しているのは、そのうちのRIDEX KAWSAKI Special Edition、つまりカワサキ特集の一冊からのエピソードだ。

The Triple Ace - Episode2 500SS MACH III

前回紹介したのは、同じRIDEXのEpisode3。同じKAWASAKI 500SS MACH IIIを取り上げた作品「The Red Snake Come On!」だった(よく考えてみると、レッドスネーク、カモン!って、いったい笑)

今回紹介するのは、RIDEX Episode2。
マッハを買ったものの、調子が出ず、同棲している彼女にバカにされて奮起する男の話だ。

画像: ©東本昌平先生/モーターマガジン社

©東本昌平先生/モーターマガジン社

画像: 200キロ出るすごいバイクというから買ったはずが、140キロで打ち止めで、あろうことか動かなくなってしまうマッハに、女の冷たい一言が・・・。

200キロ出るすごいバイクというから買ったはずが、140キロで打ち止めで、あろうことか動かなくなってしまうマッハに、女の冷たい一言が・・・。

画像: 惚れた女に「期待はずれ」と言われてへこまない男はいないよな・・。

惚れた女に「期待はずれ」と言われてへこまない男はいないよな・・。

動かないマッハに自分を重ね合わせた男

せっかく手にいれたマッハだったが、思うようにスピードも出ず、しかもすぐに壊れてしまう。
肩を落とす男に、後ろに乗せた彼女の冷たい言葉が突き刺さる。「ムリして高いお金払ったのに」「あんたと同じで期待ハズレね」
この言葉を聞く限り、どうやらこのマッハ。彼女に金を払ってもらったようだ。
これでへこまない男はいないだろう。(そして、このことが 後になって意味をもってくる・・)

画像: 男って傷つきやすいんだよ、気をつけてねの女性読者の皆様

男って傷つきやすいんだよ、気をつけてねの女性読者の皆様

女の冷たい詰りに傷つく男だったが、実は1年ほどマッハを動かさないままに放置していた。しかも、この男 どうやらニートっぽい。彼女の稼ぎで暮らしている、ヒモ状態(誰ですか、羨ましいとか言っているのは?)。

そんな彼だったが、やがて自分に向き合う瞬間がやってくる。
ヒモでいることを心から受け容れられる男もいれば、そうでない男もいる。止むを得ずそうしたヌルい環境に甘んじていたとしても、そんな自分を許せなくなる男もいるのだ。彼もまたそうだったのだろう、不動車に成り下がったマッハを、彼は自分自身のように思ったのかもしれない。思い立ち、マッハを自らの手で修理しはじめるのである。

画像: 自らの手でマッハの修理を始める男。自分自身も動き始める時期が来たと自覚したのだろうか。

自らの手でマッハの修理を始める男。自分自身も動き始める時期が来たと自覚したのだろうか。

そして、彼は見事マッハを蘇らせることに成功する。
彼は勇んで彼女を後ろに乗せ、自分とマッハの”本気”を見せつけるのである。

画像: 惚れ直す女。さらに加速するマッハと男が見る風景とは。

惚れ直す女。さらに加速するマッハと男が見る風景とは。

この物語の続きとは・・・

実は、この「The Triple Ace 」は、「The Red Snake Come On!」の前編に当たる。
つまり、マッハと彼女を残して消える男こそが、本編の主人公であり、残された女がマッハを駆って男を追う「The Red Snake Come On!」のあのイケてる美女なのだ。

僕はこのことに最初は確信が持てずにいた。(彼女はともかく)マッハを残して消える男の気分がわからなかったし、そしてこんないい女を捨てて消えるというのも理解できなかった。
また、バイクの不調を「あなたと同じ」と簡単に口にしてしまう女が、マッハを駆るクールでかっこいい女とイコールと思えなかったからだ。

しかし、つい最近確証を得たのだが、この二つの物語は一つの時間軸の、同じ男女の物語であった。
その確証をもって本編を読み返してみると、主人公の若い男が彼女の前から消えたのは、ヒモ状態の自分に決別するためだったと思うし、マッハを置いていったのは彼女の金で買ったからだろうと思える。マッハを直したのは彼女へのけじめでもあり、自分自身の心のエンジンを直す意味でもあったろう。

また、どこにでもいる普通の女性であったはずの女が、男を追ってバイクで日本中を渡り歩くような強さを身につけたのは、自分に残されたマッハに込められた男の想いを受けとめたためでもあるだろう。

男は女の一言に奮起して自らを変えようと動いた。女は男が消えたことをきっかけに自分を変えた。ワケありの男と女の間にマッハがあり、マッハが二人を変えたのだ。
あえてこの二つのエピソードの連続性を読者の印象に任せているからこそ、この二編は味わい深く印象深いのである。

画像: この物語の続きとは・・・

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