COVID-19禍のなか、あらゆる面で変則的なシーズン開催を余儀なくされて早2年目となる全米最高峰プロダートトラック選手権・AFT = アメリカンフラットトラック。先行プロトタイプが2016年最終戦で初めて実戦投入された、栄光の常勝マシン・インディアンFTR750にとっては、フルシーズンを戦って5年目でもあるわけですが、今期終盤を迎えつつある先週末のレースウィークから、 同車種を使用するチームには非公開のルール改訂により "さらなる出力規制" の網がかけられたようです。

レブリミットを抑制!使用チームしか詳細を知らない黒い箱のような話?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。先だって7月半ばあたりに、最低車体重量の規制だとかエンジン腰下での回転マス重量化の禁止とか、シーズン途中なのになかなか厳しい車両規定の変更があったことをお伝えしました。あれやこれやの手でなんとか他メイカー車の "勝てる可能性" を上積みしたい感ムンムンのルール改訂かと思えて仕方なかったんですが・・・

9月1週目に行われた、伝統的な "夏の終わりのイリノイ州スプリングフィールド・レースウィーク" と、次の週末9月11・12日に連戦が予定されるカリフォルニア州サクラメントでの、立て続けの4つのマイル戦から、AFTはインディアンFTR750のエンジン最高回転数上限を、ECU = エンジンコントロールユニットのデチューンによって "より低く" 規制することを9月初頭に内々で告知しました。

1960年代、それまでアメリカ車が活躍の中心だった本場のダートトラックレーシングで、英国製のトライアンフやBSAが俄然活躍を始めたときも、1980年代半ばにハーレーダビッドソンXR750の独壇場だったシーンをホンダRS750Dが猛烈に揺さぶり始めたときも、実はそれらの "敵性外来種" には非常に厳しい制限・・・不公平なほどのリストリクションが課せられ、まずはハーレーダビッドソンが盛り返す形にはなったものの、やがてそれらの外国車はシーンの第一線から退いていってしまう、というシナリオが繰り返されてきました。

FTR750のライバル不在のまま、過半数の有力マシンの牙を抜く意味って?

1960年代・1980年代と繰り返された過去2回の厳しい規制と今回のルール変更のもっとも状況を異にするところは、具体的な対抗馬の有無です。最新のスプリングフィールド・マイル2の最高峰スーパーツインズ決勝リザルトを見てみれば一目瞭然、出走16台中ヤマハMT-07とハーレーXG750Rがそれぞれ2台いる他は、すべてのマシンがFTR750です。エントリー台数 = 決勝台数となる現在のシステムでこの割合ですから、事実上インディアンの有力なライバルはいないわけなんですけど・・・。

すでに5年近く経過した完全なインディアン一強時代、この状況のまま網をかけるのが本当に最善の方法なのか・・・アメリカン・レースシーン伝統の "RUN WHAT YOUR BRUNG" = 参加者が持ち込む自慢のマシン同士の意地と技術のぶつかり合い、からこそ次なる有力なムーブメントが生まれてきそうなものですけど。

そうでなきゃ結局、ルールに合致するか否かで厳しい相互チェックが繰り返されるばかりで、メカニカルな意味の面白さって少しずつ減っていくような気がするんですけどね。このところジャレッド・ミースみたいな有力ライダーなんか、毎戦エンジンクレーム = 他ライダーからの抗議でレース後エンジン降ろして全バラチェックが日常みたいですよ。それでもキッチリ勝ってるから流石ですけど。

清く正しい "なんでもアリ" 側にシフトしていくのって、そんなに難しいんですかね?
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!