シンプルに言うなれば、"モーターサイクルを横向きに走らせること"が最大の特徴である、魅惑のダートトラックライディング。その世界に足を踏み入れる方法はいくつもありますが、本日はダートトラック発祥の地・本場アメリカのプロライダーが、ビギナーに必ず伝えたいと力説する、4つの基本動作についてご紹介。英文から滲み出る微妙なニュアンスについても合わせてご説明しましょう!

現地の言葉で・プロライダーの解説から学んでみよう!

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。ダートトラックの "加速度を維持したまま車両を横向きに走らせる" 走法は、控えめに言っても他カテゴリーのコーナリングセオリーより、複雑な物理現象のコントロールだと言えます。シンプルさが信条のオーバルトラックでのレース形式、アメリカ発祥の競技ということから想起させる能天気で単純そうなイメージは、実際のこのスポーツの繊細さ、難解さとは大きくかけ離れたものなのです。

上の図は、本場アメリカのプロ選手権・AFTを走るライダーが、ダートトラック競技に新たに取り組むビギナー向けに、その走法を簡単に示すため用意した "コーナリングダイアグラム" 。1→2→3→4と進行します。本日はこちらに、独自の解説を付け加えながら進めてみたいと思います。

1. Drive Into Corner = コーナーに"飛び込め"!

"drive into ~" は、ただの "go" よりも力強い・かなり勢いのある語感のフレーズです。本文解説にも、"より多くガソリンを送り込みながら" とあります。"走る・曲がる・入る・滑り込む・進入する" など日本語でのコーナリングについての表現は色々ありますが、ここでは "スロットルを開け続けたままコーナーに飛び込んでいく!" イメージをもつことがとても重要です。

撮影: FEVHOTS

2. Reduce Speed = スピードを"削れ"!

直線の終わり = ストレートエンドでの前後ブレーキ装置の操作による減速が基本のオンロード / オフロードとの明確な差はここに現れます。ダートトラックではスピードを維持したままコーナーに突入した "その先" が減速区間です。本文解説によれば、マシンを寝かせながらリアブレーキを "スクイーズ = 絞るように操作" し、前後輪を "インライン = 一直線上" に保つ努力をしつつ、前輪を "スクラブ = 路面に擦り付ける"ことで減速せよ、とのこと。スロットルOFFによって速度を緩めること、についてはとりたてて言及がないことにも注目。

撮影: 斉藤淳一

3. Change Direction = 進行方向を"変えろ"!

本文解説では、この段階までに最大リーンアングル = バンク角が必要だと述べています。 "可能な限り速やかに" 進行方向を変え、前輪を操舵してマシンをコーナー出口へ向けつつ、徐々にスロットルを開け始めます。3つの操作を短時間で同時に行わなければなりません。車両の向きは "変わるのを待つ" のではなく、ライダーの操作によって "変える" ものです。なめらかにスピーディーに!

撮影: 山田晃生

4. Start Straight Away = "さっさと・まっすぐ" 立ち上がれ!

ここから早々と、次のストレートに向けての加速区間がスタートします。バイクを起こしてスロットルはWIDE OPEN!!、などと言うは易しですが本文解説では3つのポイントを上げています。ひとつめは "車体を前に進めるために最適なスロットル開度を探りながら開け続けること"。ふたつめは "体重を車体の後側にかけること"。みっつめは "タイヤの中央部が接地するよう車体を起こすこと"。

撮影: FEVHOTS

車体の進行方向が概ね変わったとて、効率のよい加速手順について深く考えずにラフな操作を行うのは、大いなるパワーロスとハイサイド転倒の危険を孕みます。最大限のトラクションを生む繊細かつ大胆なスロットルワーク・そのパワーを大地に伝えるためのリアへの加重・無用の横滑りを発生させない合理的な姿勢。これらの3つのポイントはどれも外すことのできない重要なものです。

"滑らせて走る" のは手段であって目的ではありません。たしかに楽しいけど。

本場流のビギナー向けテクニック解説、いかがでしたか?個人的には英文解説に "スライド" とか "スリップ" という単語が一切使われていないことが印象的です。いずれにせよ、高い速度を維持したまま進入 → 一気に減速 → 進路変更 → 無駄なく加速、という一連のコーナリングシークエンスを可能な限り素早くスムーズに・シームレスに行うことこそ、オーバル走法上達の決め手になることは間違いありません。

一部には、楽しんで乗るために "滑りやすい路面" を訴求する中級以上のライダーもいますが、コントロールできる領域がより高度に広がるわけではありませんし、安全面からも適当とは言えないでしょう。基本に忠実に、安定したコーナリングを身につけるためには、グリップレベルの整った良質の練習場所 / レーストラックも必要なのです。

こちらは以前、筆者がまとめたダートトラック走法についての長文コラム。併せてお読みいただき理解を深める一助となりましたら幸いです。ではまた金曜の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!