ロレンス編集部
己の能力の全てを賭けて目的に執着する若者の激しい青春『野獣死すべし』(大薮春彦 作・角川文庫)
大薮春彦の処女作であり、日本のハードボイルドの金字塔『野獣死すべし』(角川文庫 1979 ISBN:4334723489)を知っているだろうか。
ロレンスの読者の皆様なら、『汚れた英雄』の作者といえば、ピンと来るだろう。大薮春彦は基本的に銃と暴力と車(もしくはスピード)を題材とした、ハードボイルド小説の第一人者だった。
クライムサスペンスの傑作
『野獣死すべし』の主人公の伊達邦彦は、大学院で英文学を専攻する青年だ。見た目は非常に秀麗で、爽やかな美貌の持ち主で、鍛え抜かれた強靭な肉体を洗練された物腰と洒落た服装で隠している。
彼はその見かけと裏腹に、荒廃した憎悪に満ちた精神をその体に宿して...