ヒーロー モトコープのラリーレイド挑戦は2016年から
W2RC=FIM世界ラリーレイド選手権は2022年成立の、比較的最近生まれた世界選手権カテゴリーです。1999〜2021年のFIMクロスカントリーラリー世界選手権が発展解消し、4輪のFIAクロスカントリーラリーワールドカップ(1993年〜)と統合されてスタートしました。
2022年からの過去2シーズン、マニュファクチャラーズタイトルはホンダが2連覇。ライダーズタイトルは2022年はサム サンダーランド(ガスガス)、そして2023年はルチアーノ ベナビデス(ハスクバーナ)が獲得。W2RCの対象となるのはラリーGPクラスのみで、今シーズンは両部門制覇を狙うホンダと、インドのヒーロー モトコープの両ファクトリーの戦いという展開になりました。
ヒーロー モトコープのラリーレイドにおけるファクトリー活動は、2016年のモロッコラリーから始まっていますが、今シーズンヒーロー モトコープのエースとして戦ったのは、2019年に13位でダカール ラリーのベスト ルーキーに選ばれ、昨年からチームに加入したロス ブランチでした。
地元ボツワナのファンたちから"カラハリ フェラーリ"の二つ名が与えられているロス ブランチは、シーズン開幕戦のダカール ラリーと第2戦アブ ダビ デザート チャレンジでともに2位入賞。第3戦BPアルティメット ラリーレイド ポルトガルと第4戦デサフィオ ルタ 40 (アルゼンチン)ではともに5位に入賞と、優勝こそないものの安定したリザルトを積み重ねてきました。
ブランチは第2戦終了時にランキング首位に立ちましたが、リッキー ブラベック、エイドリアン ヴァン ベバレン、パブロ キンタニア、そしてトーシャ シャレイナという強力なラインアップを擁するホンダを相手に、首位の座を守り続けるのは容易のことではありません。
前戦のデサフィオ ルータ 40で優勝したブラベックは、ブランチとのポイント差を9点まで詰めていました。しかしブラベックは不運にも第1ステージで膝を負傷。モロッコラリーから脱落するとともに、タイトル争いからも脱落することになりました・・・。
タイトル争いのライバルが脱落したことで、ブランチを取り巻く状況はかなり優位なものとなりました。残りのステージは、チリ人の力強いチームメイト、"ナチョ"ことホセ イグナシオ コルネホに護衛についてもらうように並んで走り、タイトル獲得を強く意識したレース展開を実行しました。
優勝はホンダのトーシャ シャレイナで、ブランチは5位でゴール。その結果、ライダーズタイトルのランキングは、ブランチ、ヴァン ベバレン、シャレイナの順で1〜3位となり、見事ブランチがボツワナ人初のFIM世界選手権王者、そして3人目のW2RC王者に輝きました!
日欧以外のメーカーが活躍することで、モータースポーツの活性化を期待したいです!!
なお世界選手権タイトルではありませんが今年はもうひとつ日欧以外の地域のメーカーが、地味ではありますが(失礼)国際イベントで快挙を達成した年でもありました。2023年6月に急遽開催が発表されたダカールラリーのダカール フューチャー ミッション1000(以下M1000)クラスでは、中国のアークティック レオパルド ファクトリー レーシングが2輪部門の1〜3位を独占しました。
M1000初年度の2・4輪の参加台数は10台で、その内訳は2輪車が6台、3台が4輪車、そして1台のトラックでした。6台の内の1-2-3フィニッシュですからそんなに特筆することではないという声も聞こえてきますが、今後モータースポーツ界にも「電動化」が波及するであろうことを考えると、自動車業界全体でEV技術に力を入れている中国勢の存在感が、増してくることも十分可能性があるでしょう。
周知のとおり20世紀から今までモータースポーツで活躍するメーカーといえば、自動車文化の主役ともいえた日欧米の会社がメインでした。しかし今後の経済成長、EVなどカーボンニュートラル技術発展、そして人口増加とモータースポーツへの関心の高まりなどを考慮すると、今後はアジア大陸のメーカーの活躍を報じるニュースが増えるのかもしれません。
もちろんそれはすぐに・・・ということはないと思いますが、若者人口の減少に悩む日欧米にとっても、人口ボーナス期にある国も多いアジアのモータースポーツ文化の振興はありがたい話に違いありません。来年以降も、アジアのメーカーの活動に注目したいです!