2021年は、2050年カーボンニュートラルに向けてさまざまな動きがあった1年でした。来年2022年はさらに"脱炭素"への歩みが加速していくことになると思いますが、来年どうなるのかをみなさんが占う材料に・・・ということで? 10大ニュース(順不同)形式で2021年を振り返ってみました。

1:日欧4大メーカーが、交換式バッテリーのコンソーシアム(協業)契約を締結!

9月6日、ホンダ、KTM、ピアッジオ、ヤマハの4メーカーが、2輪EVおよび小型電気自動車用の交換式バッテリーのコンソーシアム契約を締結しました。今までGogoroほか台湾勢の独壇場だった交換式バッテリーの分野に、長い歴史を持つ日欧大手メーカーが本格参戦するわけです。

4メーカーが設立した、"SBMC"=スワッパブル バッテリーズ モーターサイクル コンソーシアムの規格で作られた製品がデビューするのがいつになるのかはまだわかりませんが、製品開発と同時進行でバッテリー交換ステーション網の整備も進められることになるわけですから、SBMCが魅力的な製品とサービスを提供できれば、日欧の小型2輪EVシーンが一気に盛り上がることも予想されます。乞うご期待!! ですね。

2:ライブワイヤーとキムコが2輪EV開発で提携!! そしてBMWとTVSも提携を拡大!!

今年の12月は、大手メーカーが国境を超えた2輪EVに関する提携を結んだニュースが、世の中の多くの人を驚かせました。13日には、今年アメリカのハーレーダビッドソンからスピンオフし、独立したEV専門ブランドとなったライブワイヤーが、台湾ナンバー1メーカーのキムコと提携。来年デビューが予想される、ミッドウェイト級のライブワイヤー製2輪EV「S2 デル・マー」の次のモデル・・・ライトウェイト級「S3」に、キムコの2輪EV技術が活用されることになります。

そして、2013年から500cc以下のICE車共同開発で提携し、その提携の下で開発した"G310プラットフォーム"車の販売で成功をおさめたドイツのBMWモトラッドとインドのTVSモーターカンパニーが、提携を拡大して2輪EVを含む新プラットフォームを共同開発することを、15日に公にしました。

日欧米のメーカーが、小型車開発・生産をアジアやインドの企業と提携して行う・・・というのは、ICE車の分野ではすっかり定着して久しいですが、このトレンドは2輪EVについても引き継がれていくことになるのでしょう。来年も・・・もしかしたらビッグな提携のニュースが飛び込んでくることになるかもしれませんね?

3:カワサキ、スバル、トヨタ、マツダ、ヤマハが、"内燃機活用連合"を結成!?

4輪のトヨタ、マツダ、スバル、そして2輪のカワサキ、ヤマハという日本を代表するメーカー5社が、「カーボンニュートラル実現に向け、内燃機関を活用した燃料の選択肢を広げる挑戦」を発表したのは、11月13日と14日に行われるスーパー耐久最終戦「スーパー耐久レースin岡山」の舞台である岡山国際サーキットでした。

水素やバイオ燃料といった"カーボンニュートラル燃料を活用したレースへの参戦"、"2輪車などでの水素エンジン活用の検討"、そして"水素エンジンでのレース参戦継続"という3つの取り組みが発表の主旨ですが、カーボンニュートラルのために水素を活用しようという試みをする国のなかで、FCV(燃料電池車)ではなくICE車を使おう! とトライしているメジャーメーカーがあるのは、日本くらいです。趣味の対象としてのICE搭載車を後世にも残すために、頑張ってほしいですね!

4:カワサキが2035年までに、先進国向け主要機種を"電動化"!!

10月1日に新会社へ分社化された「カワサキモータース株式会社」が、10月6日の事業方針説明会で明かしたプランに驚いた方は多いでしょう。まず2025年までに10機種以上のEV(バッテリーEVおよびハイブリッド車)を市場に投入! そして2035年までには、先進国向けの主要モデルを「電動化」する予定であることを明かしました!

さらに、ICEによるカーボンニュートラルという分野にも挑戦・・・水素燃料ICE車の開発にも挑むということですが、国内4メーカーでは唯一2輪EVを製品化したことがなかったカワサキが、怒涛の攻勢に転じるとはビックリです。

このほか日本メーカーでは、ホンダが2024年までにパーソナル領域で原付一種・原付二種クラスに3機種の電動2輪車を、さらにFUN領域でも商品を投入・・・という計画を明らかにしています。ヤマハは、2輪EVの割合を2035年に20%、2050年に90%にするという目標を今年7月に発表し、12月5日には来春125ccおよび50ccクラス相当の電動スクーターをリース形式で日欧の市場に投入することを明らかにしています。

スズキは時期こそ明らかにしないものの、伸長著しいアジア市場への2輪EV投入の方針を明かしています。海外メーカーに比べ、2輪EVの世界で存在感が薄い観があった日本勢ですが、来年以降は本腰を入れて2輪EV市場を"獲り"にいく姿勢を見ることができるかもしれませんね!!

5:"アイオネックス"がバッテリーステーション網整備を加速!! Gogoro連合との競争が激化!!

電動スクーターなどの小型2輪EV用の交換式バッテリーは、2015年にサービスを開始した台湾の新興企業であるGogoroが生み出したトレンドです。瞬く間に急成長したGogoroは、今年に入ってから台湾だけでなく中国、インド、インドネシアといった巨大2輪消費国での展開のための提携を進め、海外市場への足場固めをしっかりと進めています。

長年、台湾のスクーターNo.1の地位を守り続けたキムコは、Gogoroに対抗する"アイオネックス"というプラットフォームを生み出し、今年8月から台湾全土にバッテリーステーション網整備をスタートさせ、年内にその数を1,000まで増やす!! という目標をブチ上げました。

電動スクーター購入に対する台湾政府の補助金延長計画を背景に、キムコはアイオネックス規格の電動スクーターの2022年販売計画を、2021年の販売台数(推定3,000台)の5倍!! にあたる1万5,000台に設定。販売網も2021年の約30店から、3倍強の100店舗まで増やすことを視野に入れているようです。

Gogoroのプラットフォームを採用するPBGN(Gogoro連合)の、台湾市場のシェアは2021年10月時点で72.5%と圧倒的ですが、急速にシェアを伸ばしているアイオネックスが来年どれだけ成長するのか・・・? 交換式バッテリー業界の企業間の競争は、2022年はさらに激化しそうです。

6:東京都主催の2輪EVイベントが初めて開催されました!

12月4〜5日の2日間、東京国際フォーラムで開催された「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」は、東京都環境局が主催だったことが注目されました。東京都はCO2を排出しない環境先進都市「ゼロエミッション東京」実現のため、都内で新車販売される2輪車を2035年までに100%非ガソリン化することを目指しています。

画像: 12月4日、「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」での小池百合子都知事。跨るのはカワサキが展示した、2輪EVのプロトタイプです。 ©︎オートバイ編集部

12月4日、「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」での小池百合子都知事。跨るのはカワサキが展示した、2輪EVのプロトタイプです。

©︎オートバイ編集部

COVID-19感染対策で事前申請優先(定員制)だったにも関わらず、2日間で約3,300人が来場。会場の賑わいぶりからは、世間の人々が思いの外2輪EVに関心があることをうかがわせました。東京都が目標とする"2035年"まではあと約13年ほどですが、このイベントが啓蒙のために毎年開催されるのだとしたら・・・年を追うごとにその規模や盛り上がりは増していくことになるかもしれませんね?

7:MotoGPが、持続可能な燃料を使うことを公表!

11月24日、ロードレースの最高峰であるMotoGPは2027年完了というスケジュールで、使用する燃料を「持続可能」なものに切り替えていくことを明らかにしました。MotoGPを統括するFIM(国際モーターサイクリズム連盟)は、2024年までにMotoGPクラスの使用燃料成分の最低40%を非化石由来のものにして、そして2027年までにはその比率を100%まで高め、完全な非化石燃料化を達成すると公表しました。

画像: FIMが目指す持続可能燃料の導入は、MotoGPのみ・・・ではありません。Moto2、Moto3両クラスも2024年から持続可能燃料を部分導入し、2027年にはすべてのクラスで100%持続可能燃料化すると公表しています。 www.motogp.com

FIMが目指す持続可能燃料の導入は、MotoGPのみ・・・ではありません。Moto2、Moto3両クラスも2024年から持続可能燃料を部分導入し、2027年にはすべてのクラスで100%持続可能燃料化すると公表しています。

www.motogp.com

カーボンニュートラル化という潮流のなか、モータースポーツも今後一層、環境への配慮が問われることになるのでしょう。FIMによるMotoGPの脱化石燃料方針には、きっとほかの2輪モータースポーツも追従していくことになるのではないでしょうか? 

8:2023年からドゥカティが、MotoEのワンメイク車両サプライヤーに!!

2輪EVロードレーサーによる選手権「FIM エネル MotoE ワールドカップ」に、初年度の2019年からワンメイク競技車両を提供してきたイタリアのエネルジカが、2022年限りで撤退することが公表されたのは今年10月のことでした。

そしてその直後、イタリアの名門ドゥカティが、MotoE用競技車両を2023年シーズンから供給することが発表されました。それまで本格2輪EV開発に関するニュースが全くなかったドゥカティが、エネルジカの後を継いでMotoEマシンを供給するというニュースは、多くの人を驚かせることになりました。

そして12月21日には、開発中のMotoEマシン試作車「V21L」の姿が公開され、その開発の進展ぶりが明らかになっています。この「V21L」で得たEV技術を活かした、ドゥカティ製公道用市販車が登場するとしたら・・・それは実現するとしてもちょっと先のことになるでしょう。再来年のことを言うと鬼も呆れるでしょうが(苦笑)、まずは2023年のレースデビューの日を楽しみに待ちたいです。

9:電動モータースポーツの発展は、オフロードレーシング業界が牽引!?

長距離のラリーやエンデューロを除く、モトクロスやトライアルなどのオフロードレーシングのジャンルは、現代のバッテリー技術でも使用に耐えうる2輪EVを作ることが可能です。2021年はそんなオフロード競技をベースにした、2輪EVレースが活性化しはじめた年と言えるでしょう。

今日のISDE(国際6日間エンデューロ)と、その前身であるISDT(1913〜1979年)は国別の代表選手により競われることから「モーターサイクルのオリンピック」と呼ばれていますが、ISDTの時代は特に、量産モーターサイクルの耐久性・実用性をテストする場として(日本を除く)世界の多くのメーカーから重要視されたイベントでもありました。

近い将来、ワンメイク方式ではない2輪EVのオフロード競技が順調に発展していったら、2輪EVを製造するメーカーが「実験場」としてそれらイベントを活用するようになるのかもしれませんね? ともあれ、2022年度も2輪EVのモータースポーツはオフロード系が発展の牽引役となりそうです。

そもそもオフロードレーシングは全般に、運用コストが高いロードレースより参加のハードルが低いのが特徴です。この先、電動時代になってもオフロードがモータースポーツ事始め・・・というライダーが多いという状況は、世界的に変わらないのかもしれません? 個人的には将来のMotoGP(およびMotoE)レーサーを育成する、手軽で高性能な電動ミニバイクの登場を期待したいです!

10:多くの軍隊が、軍用車両としての2輪EVのポテンシャルに注目!?

便利なモノ・・・に注目するのは私たち市井のライダーだけではありません。近年、世界各国の軍隊が、主に偵察用の車両としての2輪EVを研究、および配備するのがブームになりつつあります。

ICE車のように高熱や排気音を発したりしない2輪EVのステルス性能の高さは、偵察の任務にはピッタリの特徴と言えるでしょう。軍用車に搭載してラスト数マイルの偵察に使用したり、輸送機に搭載して兵士とともにパラシュート降下させ、地上での移動手段に活用したりと、戦場などで2輪EVが活躍できる場面は数多くイメージすることができます。

一方、戦争以外での偵察業務・・・アフリカ大陸で密猟を防ぐ活動をしているレンジャーの足にも、2輪EVが活用されている例もあります。警察車両などに2輪EVが普及したら、そのステルス性能の高さから、追尾されていたとしても気づかなかったりすることがあるのかも・・・? 

画像: 今年10月にSAWC(サザン・アフリカン・ワイルドライフ・カレッジ)のレンジャーに提供されたカルクAP特装車。CAKE=ケーキとSAWCは共同で、密猟者パトロール用のカルクAP特装車を開発。ICE車よりもはるかに静かな2輪EVの特性を活かし、気付かれることなく密猟者に接近できるのがこの特装車の強みです。 ridecake.com

今年10月にSAWC(サザン・アフリカン・ワイルドライフ・カレッジ)のレンジャーに提供されたカルクAP特装車。CAKE=ケーキとSAWCは共同で、密猟者パトロール用のカルクAP特装車を開発。ICE車よりもはるかに静かな2輪EVの特性を活かし、気付かれることなく密猟者に接近できるのがこの特装車の強みです。

ridecake.com

来年もよろしくお願いいたします!

2022年もLawrenceは、2輪EVなどカーボンニュートラル関連の話題を、みなさまにお届けしていきたいと思います。来年もよろしくお願いいたします!

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