同じイタリアのメーカー、マヴェル社との共同開発!
イタリアの2輪EVメーカーのエネルジカが公表した新型モーター"EMCE"は、イタリアのヴァッレ・ダオスタ自治州ポン=サン=マルタンに本拠を置く企業、マヴェルとの協力関係から生まれました。マヴェルはそもそも水力発電所だった場所にあり、電力やオートメーションの研究、開発、生産に特化したメーカーです。
マヴェルはすでに4輪EVの分野では国際的なOEM企業のひとつとして評価を得ていますが、2輪EVに関してはエネルジカとのコラボが初、となります。
ジャンピエロ・テストーニ(エネルジカ・モーター・カンパニー S.p.A.、CTO)
「イノベーションは当社の技術部門の最大の強みであり、マヴェル社との完璧なコラボレーションにより、現在の技術の限界を押し広げ、すでに高性能な製品をさらに向上させることができました」
エネルジカによると、新型EMCEモーターは当初2022年度からの導入を予定していましたが、COVID-19パンデミックの影響によるサプライチェーンの混乱のなか、あえて予定を前倒ししてマヴェルと共同開発を進めわずか半年でそれをやり遂げ、現行モデルに導入を開始したとのことです。
そしてエネルジカは、EMCEの特徴を以下の4項目で説明しています。
・革新的なローターとステーター形状を採用
エネルギー損失を最小限に抑え、性能を最大限に引き出す革新的な構造を採用。トルクの均一性と重量の最適化により、パワーとトルクの密度の点でユニークなエンジンとなり、生産プロセスの最適化を可能にしています。
・特許を取得したローター冷却システム
新採用したローターの冷却システムは、内部に空気の流れを発生させて磁石を周回させ、冷却することを可能にしています。また高速走行時にも、エンジンの潜在能力を引き出すことができます。
・新たな制御アルゴリズムの採用
インバーターが可能な限り、常に効率的にシステムを作動させることができるようにする、適応制御アルゴリズムを新採用しています。
・特許を取得した新型センサー類
特許取得済みの新型センサー類は、モーターの動作データを収集・保存し、故障の発生を予測することが可能になっています。
メイド・イン・イタリー、であることの"強み"とは?
EMCEモーターは統合された液冷方式を採用し、モーターとインバーターをひとつの冷却回路で同時に冷やすように構築されています。ピークパワーは126kW/8,500rpm≒167hpの高出力ぶりを誇り、ライディングスタイルによって大きく航続距離は変化するものの、EMCEモーターは従来型よりも5〜10%航続距離を伸ばすことに成功していると、エネルジカは主張します。
また従来型モーターと比較し、EMCEモーターは10kgの軽量化を実現。容積が小さく、軽量化されたモーターながら従来型よりも優れた加速性能を手に入れるとともに、完成車パッケージとしても動力部の軽量化によってハンドリングのパフォーマンスが向上しているとのことです。
2輪EVの製造は、アジアエリアの関与の度合いが高いのも特徴ですが、モデナを本拠に置くエネルジカは同じイタリアのマヴェルと組む"ローカリゼーション"のプロセスのメリットを主張します。つまりイタリア現地生産にすることで、主要部品のモーターの納期を短縮するとともに、将来のサプライチェーン不安も最小限にできることを、エネルジカは"強み"として考えているわけです。
モデナとポン=サン=マルタンは車で約3時間半くらいの距離・・・。イタリアの"モーターバレー"エリアで開発と製造が完結することは、原材料調達まではカバーし切れないとしても、COVID-19パンデミックの影響などで生じるサプライチェーンの混乱にも確かに"強い体制"といえますね・・・。長い歴史を持つイタリア工業界の、伝統に裏付けられた層の厚みが、エネルジカのアドバンテージになっているのでしょう。