メーカーはハーレーダビッドソンとインディアンのみ・・・NAも過給器付きも参加できます!
アメリカのレース主催団体、"モトアメリカ"が行う"キング・オブ・ザ・バガーズ"には、かなり細かく参加車両についてのレギュレーションが定められています。その2021年版レギュレーションの数々の規定のなかから、このレースならではのユニークな項目を紹介いたします。
まず、すべての"バガー"・・・大容量パニアバッグを備えたクルーザーモデルが参戦できるワケではありません。ベース車両に使えるのは全年式のハーレーダビッドソンFLツーリングモデル、そして全年式のインディアン製バガーとツーリングモデルです。どちらもアメリカン・ブランドですが、将来"キング・オブ・ザ・バガーズ"が発展したら、アメリカ車以外の参加もOKにしてもらえると面白いですね(レギュレーション調整が大変でしょうけど)。
非常にユニークなのはハーレーダビッドソンもインディアンも、ツーリングモデルであれば全年式OKとなっているところです。あえて古い世代のモデルを使う人はいないと思いますが・・・そういう変わった参加者が登場することを期待したいです!
ハーレーとインディアン、それぞれ排気量上限が細かく決められています。まずハーレーは・・・
・空冷プッシュロッドVツインエンジン、最大排気量131ci(2,146.71cc)。 自然吸気。
・S&S、ジムズの空冷プッシュロッドツインカムエンジン(MSO付き)は131ci。自然吸気。
・過給器付き空冷プッシュロッドVツインエンジンは最大107ci(1,753.42cc)。
・・・と、ハーレー純正以外の、アフターマーケットメーカーであるS&Sやジムズのエンジンも使用することができます。そしてNA=自然吸気だけでなく、ターボチャージャーなどの過給器を使うこともOKです。第二次大戦後、FIMはロードレースでの過給器の使用を禁じていますが、"キング・オブ・ザ・バガーズ"では興味深いNA 対 過給器付きの戦いが楽しめるワケです。一方、インディアンについては・・・
・水冷V型2気筒エンジン、最大排気量112ci(1,835.35cc)。 自然吸気。
・空冷プッシュロッドVツインエンジン、最大排気量131ci。 自然吸気。
・過給器付き空冷プッシュロッドVツインエンジンは最大111ci(1,818.96cc)。
・・・と、水冷と空冷で最大排気量を分け、こちらも過給器付きの参加を空冷OHVに関しては認めています。
なお、エンジン内部についてもいろいろ細かく規定されていますが、大雑把に説明すると水冷エンジンはシリンダーヘッド変更が禁じられたり、ピストンまわりのパーツは元々の製品や公認部品でないといけないなど、空冷より水冷の方がちょっと改造制限が厳しいです。
ただ、カムシャフト、シリンダーヘッドのポーティングや燃焼室加工、バルブ、コンロッドなど改造や変更できるエンジンパーツは多く、いかに戦闘力のあるエンジンを作り上げるかは、各パーツメーカーやスペシャリストたちの腕の見せ所になるでしょう。
戦力を調整する、"バランシング・システム"を採用!
"キング・オブ・ザ・バガーズ"のレギュレーションでユニークなのは、参加車両のパフォーマンスを同等にするため、性能強化または性能制限をする・・・ことが明言されていることでしょう。
まだ昨秋の1戦しか行われておらず、2021年シーズンが始まっていないこともあり、まだ細かい"バランシング・システム"の内容は定まっていません。ただ、最低重量、吸入制限であるエアリストリクター、回転数制限などが、ケースに応じて適用されることになるとのことです。
また公正な競争を保つため、"バランシング・システム"はシーズン中にも適用されることになります。このあたりはシーズン王者争いを熱くさせる演出にもなる措置ですから、モトアメリカのコミッションの腕の見せ所でしょうね! 実際にどのようなシステムが発動するのか? 2021年シーズンの始まりが楽しみです。
"バガー"ですから、ちゃんとパニアバッグが付いていないとダメです!!
車体関連の2021年版レギュレーションは、"バガー"であること・・・にこだわった規定が面白いです。ツーリング型クルーザーでおなじみの大型フェアリングについては、ハーレーダビッドソンはバット・ウイングまたはロードグライドタイプ、インディアンは元々装着されていた形状のもの・・・に限定されています。またスクリーンは交換可ですが、スクリーンを装着することは義務付けられています。
そしてバガーがバガーである"ゆえん"たるハードタイプのパニアバッグは当然装着が義務付けられており、その内部には13.6×5.4×9インチ(約345.4×137.2×228.6mm)の箱が収納できるようになっており、最低でも2200立方インチ(約36リットル)の容量が確保されていないとダメです!!
気になるのは、突起物でもあるパニアバッグは転倒時の際にロードレース的には危険なのでは・・・? ということです。この点についてモトアメリカは、転倒時にバッグが「壊れて」しまうような取り付け方法を検討中・・・とのことです。安全第一な方法が考案されることを期待しましょう。
およそロードレースに向いているとは言えない大きくて重たいバガーを使って、真剣勝負をやってしまおうという"キング・オブ・ザ・バガーズ"は、既存のロードレースファン以外からも大きな注目を集めています。大きなマーケットがあるアメリカンクルーザーの文化を、ロードレース文化と融合させようというモトアメリカの試みは、とてもユニークかつビジネス的にも興味深いものです。
将来的には、日本のライダー、チューナーたちが"キング・オブ・ザ・バガーズ"に参戦!! というのも期待したいですね。興味ある方は、下のリンクを参考に2021年版レギュレーションを研究し、参戦マシンの構想を練ってみてはいかがでしょうか・・・?