排ガス規制だの騒音規制だの、オトナの事情で私たちは大事なものを失ってしまった。2ストロークエンジン、そしてレーサーレプリカという名のライトウェイト・スーパースポーツ。
誰にでも乗れる、とは言わない。扱いやすい、ではやや誤解がある。
けれどオートバイを乗りこなす快感、オートバイという乗り物の無限の可能性を味わうことがこの魅惑のカテゴリーに、たくさん詰まっていたのも事実なのだ。

今回は、『RIDE57』でピックアップされた YAMAHA TZR250 を中心に2ストの魅力を表現した、中村浩史さんの文を、一部抜粋してご紹介する。

最高速度なんかいらない。新世代のコーナリングマシン。(文・中村浩史)

キックを踏むというより、するっと下ろすような軽さで、2ストロークパラツインはあっけなく目覚める。
ころころころ、と頼りなげなアイドリング音は、このエンジンが持っているパフォーマンスを誇示するようなことが一切ない。そうそう、チャンバーを交換していないノーマルの2ストエンジンって、こんな感じ。
ギュルギュルギュル、とこれから待ち受ける爆発を待ちきれないでいるような高出力の4ストエンジンとは、ここが決定的に違うのだ。
徐々に「あの頃」の感覚がよみがえってきたーー。僕が言う「あの頃」とは、88年春のことだ。まさにその時、初めて乗った2ストスーパースポーツが、まさにTZR。
88年型NSRとの比較試乗で乗った、ストロボラインがタテに入った、2XTだ!

画像1: ©モーターマガジン社

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NSRとTZRは、特に88年型を比較してみると、真逆の性格だった。
ポジション、パワーバンド、車体の動きがすべて尖りに尖って、上手いライダーしか寄せ付けなかったNSRと、あくまでも2スト本来のスポーツ性能を前面に押し出したTZR。

速いNSR、乗りやすいTZRという評価が定着して、サーキットでは徐々にNSR優勢になってはきていたけれど、上手い人が乗れば、ちゃんとサーキットでもNSRを打ち負かすパフォーマンスだってあったのだ。

ちょっとずつコーナリングスピードをあげてみる。パワーバンドは6000回転あたりから徐々に盛り上がって9000回転オーバーあたり。
その分、この回転域を外すと、TZRはモモモモ、とあっけなく失速する。

4ストに比べてエンブレの効かなさに体を慣らしながら、高回転をキープ。
目安はパンパンパンとシフトダウンをして、立ち上がりでアクセルを開け始めた時に、7〜8000回転あたり。軽い車体はあっけなくバンクして、僕のヒザを路面にこすりつける。
アクセルオンで車体を起こしながら、次のコーナーへ。さっきまでの頼りげなくもぐった音から一変し、2ストらしいサウンドが峠にこだまする。

画像2: ©モーターマガジン社

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パリパリパリ、パイイィィィン。
一瞬でも失速させずに上手く立ち上がれた時の、なんという気持ちよさ。2ストのパワー特性の、軽量な車体の、なんという運動性能か!

意のままにオートバイを動かすことができて、バンク中の路面のギャップに振られてもコントロールさえできるこの気持ちよさ。こんな快感、味わったことなんてなかった。。

よぉし、今また2ストレーサーレプリカをきちんと乗ろう、と思ったって、それは叶わぬ夢になってしまった。排気ガス規制、騒音規制というオトナの事情で僕らが失ってしまった2ストロークスーパースポーツ。

2ストが生き残れないなんて時代の流れだよな、しょうがないな、なんて思いながら、僕たちは、とんでもなく大事なものを失ってしまったのだ。

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