『RIDE18』に掲載された、中村浩史さんによるカタナへの熱い思い。彼がカタナを手にした背景とは?バイクって、やっぱり特別だ。
キリンのカタナに燃えた日々(前編)/文:中村浩史
男はBMWに乗っていた。さしてスポーティでもなんでもない、古いOHV。ヒゲ面の、さえない38歳のバツイチ男。オンナ好きで、酒好き。BMWは、持ってはいても、そう乗ってはいない様だった。
4年前、東名の上りでポルシェとバトルになって、走りに夢中で料金所に気づかず、高速で激突したのだという。2年半も入院して離婚をして、それからBMW。けれど、なんだか物足りなくなったのか、次に選んだオートバイがカタナだった。
「もしも人生の折り返し地点があるならば、今がその時なのだと確信した。人生のターニングポイントを曲がろうと決心した」
そんな男が選んだオートバイだ。男は、まわりからキリンと呼ばれていた。
僕がカタナを知ったのは、中学生の頃だった。人気の刑事ドラマで、上下の革ジャン&革パンツ、ジェットヘルメットの刑事が乗っていたのが黒いカタナ。シビれたーー。
さしてオートバイのことなんか知らなかったのに、毎月1日に発売されるブ厚いオートバイ雑誌を見たら、それはスズキのカタナというオートバイ。僕はいっぺんにオートバイの虜になった。中学生の僕の、ひとつめのターニングポイントだったのだろう。
確か、当時の販売価格は200万円オーバー。夢でしかないレベルだ。
彼がカタナを手にする日とは
大人になり大型免許を取った彼は、憧れであるカタナを一旦諦めることになります。その後手に入れ、もう離さないと決意するまでに至りますが、彼をそうした理由とは?後編に続きます。
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