MT-07 : 見た目のクールさと比べて、機械としての素直さに好感
今年(2016年)に入ってから、YAMAHAの人気車3台を連続してお借りしている。
最初に オーバーリッターバイクのXJR1300に乗り、その4分の1程度の小排気量のMT-03を乗った。そして今度は、700ccという、現代ではミドルクラス、中重量級と言えるサイズのオートバイ、MT-07を試させてもらった。
MT-07というバイクは、正直特筆すべきスペックではない。直列2気筒688ccのエンジンは、スポーツバイクとしては平凡以下の73馬力。見た目の異形さと比べると実にマイルドな心臓を持つ。
エンジンだけではない。フレームから足回りまで、このバイクは実に普通に作られていて、例えば同じYAMAHAのR1/R1Mのように、性能面におけるオートバイの世界の頂点を狙って開発されたわけではない。
このオートバイは、いたって普通だ。恋人にするなら多少悪くてやんちゃなほうが楽しいという時期もあるだろうが、長く交際したり一緒に生計を共にしようと考える相手としたら、多くの女性が普通の青年を選ぼうとする。
それと同じで、長く乗って、日々の走りを楽しむという、素直な想いで理想のオートバイを探した時、このMT-07は、やはり最有力候補として浮かんでくるのだろう。
見た目は若干突飛。けっこうエッジの効いた(ストリートファイターにも似た)デザインだが、乗り味や取り回しの軽さは、とにかくライダーに身構えさせることのない、普通のオートバイである。
速くて乗りやすい・・初心者にはこれ以上ないほどのメリット
平凡と書いたものの、このMT-07。実はとっても速い。
絶対的な高速域では物足りなさを感じるだろうが、普通に街乗りをするだけなら、その車重の軽さ(180Kg程度)を利して、ひらひらと蝶のようにストリートを舞い飛ぶことができる。特性はMT-03に似ているが、それほど高回転を維持しなくても十分に速いし、低回転域では力強いトルク感を味わえる。
XJRに乗った時も、日常使いとして実に乗りやすいと感じたが、MT-07に乗ると、やはりその軽さを実感する。 XJR1300は大きなバイクだったんだな と改めて思うのだ。
大型免許を取得して、もし初めてのバイクがXJRなら、やはり少々持て余すと思うが、このMT-07なら、買ったその日から しっくりと馴染んで、乗りこなすことができるだろう。
こりゃ売れるよ・・・・
見た目の過激さと、乗り出した時に感じる軽さと素直さのギャップが、MTシリーズの人気の秘訣かもしれない。いわゆるギャップ萌え、というやつだ。
MT-07が、もしいまのような、21世紀的なモダンデザインではなく、昔ながらのヘリテイジというか、クラシックな外観を持っていたとしたら、果たして同じように売れているだろうか??
(案外 売れているかもしれないな)
見た目はいまどきのファッションに身を包んでいながら、中身はいたって真面目な好青年。
そんな文法をバイクの形にしたら、MT-07になる、と思った。
とはいえ。
MT-07は前述したように、実際にはとても速い。素直な特性が安心感を生み、乗りやすいから速く走れるし、使いきれる性能が街乗りにはちょうどよくて、誰もがこのバイクを速く走らせることができるように思う。
こんなバイクが70万円程度で買える・・・。そう考えれば、売れているのは当たり前、ということになるだろう。