本来であれば交わるはずもない、異質なヒーローたちが、同じ世界観の舞台で戦い、コラボする。
子供の夢想のような企画が今、世界的に人気になっている。
3月に公開が待たれる『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』しかり、『アベンジャーズ』しかり。
本作『サイボーグ009 vs デビルマン』は、そんな”夢の企画”の一つだ。
本来、人間が作ったサイボーグが、悪の組織と戦うヒーロー物語の「サイボーグ009」と、人間と悪魔の戦いを描く「デビルマン」とでは、根底から違う、異質な設定であるから、かなり強引な結びつきだと思うのだが、「バットマンvsスーパーマン」もまたテクノロジーによって戦う生身のヒーローと、宇宙からきた正真正銘の超人の激突という、無茶な組み合わせである。
もっと言えば、「アベンジャーズ」もバイオテクノロジーによる強化人間(キャプテンアメリカ)やハルク、バットマン同様お金にモノを言わせたテクノロジーによるパワードスーツのヒーロー(アイアンマン)、異世界から来た神(マイティ・ソー)などを同じ舞台にのせてしまう。
これらに比べれば、『サイボーグ009 vs デビルマン』はマシ、と言えるかもしれない(笑)。
機械人間vs悪魔人間
「サイボーグ009」は、仮面ライダーやキカイダーを生んだ、SFヒーロー漫画の偉才 石ノ森章太郎先生の原作。
機械による改造人間(サイボーグ)を兵器として販売する 死の商人ブラック・ゴーストから脱出して、正義のために戦う使命を負った9人のサイボーグたちの活躍を描く傑作だ。
『デビルマン』は、稀代のストーリーテラーであり、ヒーローものとしては「マジンガーZ」や「キューティーハニー」などで知られる天才漫画家 永井豪先生の原作。
古代の地球を支配していた悪魔(デーモン一族)が復活し、人類を滅ぼして覇権を再び握ろうと考えるが、最強のデーモンの一人であったアモンと合体して”デビルマン”となった不動明がデーモンたちの前に立ちふさがる、という設定。
テレビアニメでは悪魔の力と人間の心を併せ持つ変身ヒーローとして描かれたデビルマンだが、本作に登場するデビルマンは、テレビではなく少年誌に連載された、よりダークでデーモニッシュな世界観に基づいている。
コミック版「デビルマン」では、人類はデーモンに蹂躙され、絶望の中で滅亡していくが、デーモンと合体しつつも人の心を保つことができた不動明たち 悪魔人間(デビルマン)が、デーモンとの生き残りを賭けて最終戦争に挑む、というストーリーである・・・。
衝撃のラストシーンは、少年漫画の歴史上、伝説となっている。
本来は交わらない企画と思えるが、うまく成立させた制作サイド
本作では、009たちサイボーグを作った悪の組織ブラック・ゴーストのマッド・サイエンティストが、バイオ強化された人間のボディに、最強の悪魔を憑依させて、最強のサイボーグを作ろうと試みる。
ブラックゴーストと戦う009たちと、デーモンと戦う不動明(デビルマン)の接点がそこに生まれ、共同戦線を張っていく理由と背景が作られる。
サイボーグ009の原作は 未完の作品であり、さまざまな設定が複数存在する。デビルマンは前述のようにテレビ版とコミック版で大きく世界観が異なる。逆に言えば、だからこそ二つの異質なストーリーを紡ぎ合わせることができた、とも言えるかもしれない。
そして、009たちの相手として、テレビ版ではない、コミック版のよりダークで悪魔的な世界観のデビルマンを持ってきた制作者たちの勇気を、僕は讃えたいと思う。