本連載「1/100の映画評」とは、年間100本以上映画を観る(残念ながらそのほとんどはDVDでの鑑賞なのだが)僕の、個人的な映画評だ。
今回はこの夏の大作の一つ『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』について語る。
最近の大作映画に共通する「人工知能=AI」への恐怖がテーマ
「ターミネーター」もそうだし、昨年のジョニー・デップのSF映画「トランセンデンス」もそう。古くは「マトリックス」もそうだが、とにかくいま、ハリウッドでは人工知能が世界を滅ぼす元凶、というプロットが大流行している。
まあ、考えればそうだ。戦争をするのも人類、環境破壊をするのも人類、地球上の生態系を乱しているのも人類のエゴだ。地球を守るのであれば、人類を抹消することが最良の策だと人工知能が判断してもまったく不思議がない。
もちろん、人工知能に与える命題が、地球を守れ、ではなく、人間を平和にしろ、というものであれば答えは変わるかもしれないが、人工知能は自ら考え、自ら判断を下すわけであるから、そうそうこちらの希望通りに思索してくれるわけではないのである。
本作『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では、人工知能ウルトロンが、他のストーリー同様に人類を駆逐しようと考えることで大混乱が起きる。ウルトロンを作り出してしまったのはアイアンマン=トニー・スターク。彼は前作で戦った宇宙人に対する恐怖心がいまだに抜けず(「アイアンマン3」でも、宇宙人との闘いが深いトラウマになっている様子が描かれている)、人類を守り抜く強力な防衛システムとしてウルトロンの開発に取り組んでいた。自らも加わっている正義のヒーローチームであるアベンジャーズの力だけでは、宇宙人には勝てない、と感じていたからだ。
トニーは、アベンジャーズシリーズの前作で登場した悪神ロキ(アベンジャーズの一人 雷神ソーの弟の設定)が残した魔力を持つ杖を入手することで、その杖の力をウルトロンに組み込もうとするのだが、予想外の方向に作動させてしまい、最悪な形で人類の敵を生み出してしまう。
他の人工知能とウルトロンが違うのは、インターネット上に自らを張り巡らせるのではなく、なぜかトニーが開発していた遠隔操作のアイアンマン型ロボットたちに”憑依”して物理的なカラダを得ようとするところだ。ロボットどころか、トニー・スタークの知人の科学者を使って人造人間としての肉体までも手に入れようとするのだ。そして、それがゆえにアベンジャーズとの直接対決となり、ウルトロンは敗れることになる・・・。
見所は・・ハルクvsアイアンマン
映画「アベンジャーズ」はキャプテン・アメリカをリーダーとしているが、強さで言えば、
1位 ハルク
(放射線を浴びて遺伝子が変化してしまって、激昂すると緑色の怪物となる)
2位 ソー
(もともと北欧神話の神であり、魔法のハンマーを使う雷神)
3位 アイアンマン
(パワードスーツ着用。ある意味バットマンに近いテクノロジー依存型ヒーロー)
となると思う。
しかし、今回は超能力者の姉(スカーレット・ウィッチ)と高速で動き回る弟(クイック・シルバー)や、ウルトロン対抗の人造人間(ヴィジョン)など、トップスリーをあっさり脅かす下克上型の新キャラが続々と出てくるので、まるで「ドラゴンボール」のようにキャラクター間の強弱のテーブルがコンニャク並みに揺らぐw
そのあたりを深く考えずに、とにかくアクションを楽しむ!というのが本作の正しい鑑賞方法であると思う。
ちなみに僕にとって最大の見所と言えたのは、ウルトロンにそそのかされたスカーレット・ウィッチによって暴走するハルクと、彼を制止しようとするアイアンマンの激突だった。
上述のように、前作ではハルク最強で、アイアンマンといえども敵でなかったわけだが、今回はアイアンマンの体の上にさらに巨大なパワードスーツを”重ね着”することで、対ハルク仕様の装備で対抗する。
とやかく言わずに、猛烈なアクションを楽しむべし
ウルトロンが最終的に人類を滅ぼそうとする方法は、”恐竜を滅ぼした巨大隕石”を模した、かなり荒っぽいやりかただったが、そんなことをすれば人間だけでなく他の生態系も破壊し、死滅させてしまうので、ちょっとどうなの?と突っ込みたいところだ。
が、そういう細かいところを挙げていくときりがないのが「アベンジャーズ」という映画だ。他にもブラック・ウィドウことナターシャ(KGB出身の女殺し屋。演じるのはスカーレット・ヨハンソン)がハルク(の変身前のバナー博士)と恋仲になるなど、唐突でよくわからない展開もあるし。
しかし、繰り返すが、そういうことを言わずに、とにかく圧倒的なアクションを楽しむ。そのことだけを考えて見ていただきたい。それが「アベンジャーズ」という映画なのだ。
どうやら「アベンジャーズ」は次回作の製作も決定しているようだ。それを示唆するように、次の敵の存在が明らかになるし、アイアンマンやハルク、ホークアイ(生身の人間で弓の達人。活躍できる理由が一番わからない人w)がアベンジャーズから去っていき、新たなメンバーがアベンジャーズとして加わる様子が描かれる。
新しいアベンジャーズがどうなっていくか。僕は次も必ず観るし、本作も非常に楽しく観れた。
夏の暑さを吹き飛ばし、とにかくスカッとするならば、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』、オススメだ。