スタンダードなスタイリングのバイクが好きな私が、ずっと乗ってみたいと思っていたマシンのひとつがこの「YAMAHA XJR1300」だ。超高性能なスーパースポーツがメーカー各社のフラッグシップとなり、スーパーチャージャー搭載車まで登場するにいたった現代に、いまでもオーセンティックなスタイルを貫き続けるXJRとはどんなマシンなのだろうか。
画像1: 【LRNCインプレ】バイクとはかくあるべし「YAMAHA XJR1300」

今年の冬は暖かいらしい。暖冬となるとスキー場に雪があまり降らなかったり、コートやセーターの売上げが伸びないなど、経済上困ることも多いかと思うが、冬でもバイクに乗りたいっていう元気なロレンス読者にとってはむしろ大歓迎なのではないだろうか。そもそもベテランライダーなら、冬の張りつめたような空気の中を走るのが好きって方も多いことだろうから、暖かいこの冬はここぞとばかりバイクに乗りたいものだ。

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いまは防寒にも優れたハイテク・ライディングウエアが一般的だろうし、ぽかぽかな電熱ジャケットを着込めば、南極だって走れるんじゃないかと思わされるくらいだ。ところが、いまだに30年前と変わらぬ革ジャンスタイルの私にとっては、この季節にバイクに乗るのはなっかなか気合いが必要。それでもヒートテックやらインナーダウンくらいは採用しているので、それやこれやを着込んで冬晴れの青空の下をXJR1300で走り始めた。

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前置きが長いよね(笑)真冬ながらこの日の陽気とXJR1300の組み合わせが、あまりにも気持ちよかったので。はい、インプレッションしますよ。。。

ロレンス読者はご存知かと思いますが、私の愛車は82年式 Kawasaki Z1000Jというネイキッド・スポーツの元祖みたいなマシンで、メーカーは違えどいって見ればXJR1300は、空冷ネイキッドの系譜を現代に伝えるいまでは数少なくなった車種のひとつではないかと思うのです。つまりバイクのカタチのひとつとして普遍的ともいえるネイキッド、しかもZ1000Jと同様に空冷の大きなエンジンを搭載したこのマシンに強い関心があったのです。そして、そのXJR1300に乗ってみた感想は、、、、

古いZ1000Jに乗っているのがバカらしく思えてきた。

なのです。。。

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XJR1300は1984年に登場したXJR1200から、そのスタイリングをほとんど変えずに20年以上を生き続けた長寿モデルだ。ヤマハというメーカーは、R1やMTシリーズといった、最先端のモデルを世界に発信しつつ、SR400やこのXJRというオーセンティックなモデルもラインナップし続けている。この事実はもっと驚いてもいいかもしれない。

XJR1300のルーツを探ると、1980年のアメリカンモデル「XJ650 SPECIAL」に遡るらしい。これが、1981年に登場する大型スポーツバイクの「XJ750E」となりXJRへと進化してゆくのだ。リッタースポーツが華やかとなった当時としては (この当時の空冷4発のフラッグシップはこちらの記事を参照ください) 、ナナハンとしてもだいぶ地味なマシンだったXJ750Eの、コンパクトでキチッとしたたたずまいと、力強く美しいエンジンの造形、そしてこのエンジンが発する独特の“リューン”という端正なメカノイズが大好きだったのだ。

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思えば1981年のXJ750Eからずっと気になっていたヤマハのXJ。ようやく乗る機会をえた最新のXJR1300は、バイクとかかくあるべしというほどパーフェクトなマシンだった。「古いZ1000Jに乗るのがバカらしく…」というのは、オーセンティックなスタイルのネイキッドスポーツを30年前のバイクと“無駄に比較”して思ったことではある。とはいえ長い歳月で熟成され最新の技術をそれとわからぬよう投入し、たったいま新車として購入できるXJR1300はなんと貴重な存在なのだろうか。

画像8: 【LRNCインプレ】バイクとはかくあるべし「YAMAHA XJR1300」

画像9: 【LRNCインプレ】バイクとはかくあるべし「YAMAHA XJR1300」

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リッターネイキッドの中でも大きく感じる車体、ちょっと高めのシートにまたがりハンドルを握ると、なんとも自然なポジションとなる。ムリなところがどこにもない。それは走りはじめるとさらに実感するところとなる。

都心から出発するツーリングだと、高速道路から一般道を経てツーリングスポットへ至ることだろう。これまでいろいろなバイクに乗ってきたが、このあたり前のプロセスの全般でXJR1300ほどストレスなく走れるバイクはなかったかもしれない。

たとえばスーパースポーツやスポーツツーリングマシンは、高速道路で気がついたら時速200kmを越えていた、なんてこともあるかもしれない。私は現代のリッタースポーツであるXJR1300もそういったものではないかと思っていたのだが、その予想は裏切られ高速道路でも法定速度を超えるような速度になることはなかった。

画像11: 【LRNCインプレ】バイクとはかくあるべし「YAMAHA XJR1300」

XJR1300はもちろん最新のリッターマシンであるから、アクセルをひねると30年前のZ1000Jとは比較にならないパワーと加速を味わうことができる。だが、XJR1300は自然に気持ちよく走っていると、“気がついたら法定速度”となっているのだ。法定速度を守るのはあたり前ですよ!と、つっこまれそうだが、超高性能となった現代の最新バイクにとって、意外と重要な問題ではないのかな。

これは一般道でも同様で、ノロノロとした一本道でもあまりイライラすることがない。たまたまその日のお天気がよかったからってこともあるかもしれないが、XJRのエンジンの性格と車体の安定感によるところが大きいのではと思う。というのも1300ccという大きな排気量は、パワーを発生するより余裕を生み出すためにあるようだ。このエンジンはアイドリング程度の1000回転くらいの低速からアクセルを開けても、スムーズに車体を前に進めてくれるのだ(4速だとしても!)。そもそも今どきミッションが全5速ってのも、悪くないよなぁ。

低速でフラフラすることがない車体の安定性も、同様にストレス低減につながっているだろう。これも意外と重要ポイントで、この大きな車体を安定して走らせるというのは、ウデが上がったように感じられて自信にもつながるよね。XJR1300をゆったりと走らせていると、堂々とした気分になってきて実に気持ちがいいのです。

付け足しのようで恐縮ですが、XJR1300のリッタースポーツバイクとしての動力性能はもちろん素晴らしかったし、前後17インチのハイグリップタイヤによるコーナーリング性能ももちろん申し分ない。その辺の詳しい分析は専門誌をご覧下さい。

画像12: 【LRNCインプレ】バイクとはかくあるべし「YAMAHA XJR1300」

バイクの進化の歴史というのは、速く走りたいとか悪路を走破したいとか、目的によって工夫されてきたように思う。そうした欲求が熟成しきった現代のバイクはどこへ向かえばいいのだろうか。そういう意味で、言い方は悪いが変哲もないXJR1300に乗ってみて、“バイクとはかくあるべし”ということにあらためて気がつかされるのだ。あたりまえのことを追求し、そのクオリティを高めることがいまいかに大切か。これはデザイナーとしての私の最近のテーマでもあるのです。

同じスタイルだからかどうしても比較してしまうが、Z1000JがXJR1300のように現代まで進化し続けたら、どんなマシンになっていたのかなぁ。Zに変わってKawasakiは後に、ゼファーというまさにネイキッドを世に定着させるモデルを生むことになるのだけど、それはまた別の話であろう。XJRのような進化はひとつのモデルとして、とても幸せなことなのではないだろうか。

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