先日、2019年の初年度から電動ロードレーサーによる選手権「FIM エネル MotoE ワールドカップ」に参戦車両をワンメイク方式で供給してきた伊・エネルジカが、2022年限りでその座から降りることをお伝えしましたが、ドゥカティが2023〜2026年度の間、代わりにその座に就くことが発表されました! 来る「電動の時代」に向け、ドゥカティが大胆な一手を打って出たことは、ロードレース業界以外の分野にも、大きな波紋を起こしています。

本格電動バイクをラインアップしないドゥカティが、名乗りをあげる!

2022年限りで、MotoE参戦車両としてエゴ・コルサをワンメイク方式で供給してきたエネルジカが撤退するという報のすぐ後、ドルナ・スポーツとドゥカティは2023年から2026年の間、ドゥカティがMotoE用のEVロードレーサーを供給することを公表しました。

握手を交わす、ドルナ・スポーツCEOのカーメロ・エスペレタ(右)と、ドゥカティCEOのクラウディオ・ドメニカリ。2002年からMotoGPに参戦し実績を積み上げてきたドゥカティが新興分野であるMotoEをサポートすることは、このカテゴリーの将来を考えると明るい話題と言えるでしょう。

www.ducati.com

公開されたイメージイラスト。これが実際に開発されているMotoEクラス用ロードレーサーを、どれだけ忠実に描写しているのかは定かではありませんが、車体中央にバッテリー、スイングアームピボット寄りにで年季モーターを搭載する、電動バイクのひとつのセオリー的な構成であることがうかがえます。

twitter.com

親会社VWグループの意向を反映したかたち・・・?

2022年までMotoEを支えるエネルジカは電動バイク専業メーカーですが、ご存知のとおりドゥカティは今まで、本格電動バイクを販売した実績はありません。2019年からはペデレック(電動アシスト自転車)市場に参入していますが、多くの人は今回のMotoEサプライヤーにドゥカティが名乗りを上げたことに対して、唐突なことに思えたでしょう。

ドゥカティが7,995ドル≒90万8,000円で販売するMTBタイプのEバイク、「TK01-RR」。イタリアのEバイクブランドのThok組んで、生み出されたプロダクトです。

www.ducati.com

現在ドゥカティは、VW(フォルクスワーゲン)グループの傘下にありますが、同グループは2030年まで段階的にICE(内燃機関)車の販売比率を減らし、世界販売の50%をEVとする「ニュー・オート」を公表し、さらに2040年までにゼロエミッションを目指す方針を明らかにしています。

近年のドゥカティの本格2輪EVの話題といえば、イタルデザインが860-Eコンセプトを先日公開したことくらい・・・ですが、水面下ではさまざまなプロジェクトが進行していたようです。ドゥカティもグループの一員として「ニュー・オート」の方針に従うことになるわけですね。

Twitter: @DucatiMotor tweet

twitter.com

エネルジカ期(2019〜2022年)のMotoE用ロードレーサーであるエゴ・コルサは、公道用市販車のエゴをベースに開発されました。はたしてドゥカティのMotoEマシンは、どのような形態で私たちの前に姿を現すことになるのでしょうか?

ドゥカティの声明を見る限りでは、水冷8バルブVツインの851系のルーツとなるレーサー・・・748IEが1986年にデビューしたように、同社の伝統どおりレースという究極の開発の場で技術研鑽に励み、そのフィードバックを市販車に活かすつもりのようです。過去の例である748IEから851・・・のスパンを当てはめるとすると、MotoEレーサーの技術を活かした、ドゥカティの本格2輪EV市販は2023年の2年後・・・2025年ですかね? ←気が早い?

クラウディオ・ドメニカリ(ドゥカティ・モーター・ホールディングCEO)
「当社にとって、歴史的な瞬間である今回の合意を誇りに思います。ドゥカティは常に未来に目を向け、新しい世界に参入する度に、可能な限り最高のパフォーマンスを発揮する製品を生み出しています。この合意は、長年にわたって電気駆動列の状況を研究してきたドゥカティにとっては、適切なタイミングです。この合意により、多くの人が知るよく管理された競技の場で、実験できるようになるからです。私たちは、FIM エネル MotoE ワールドカップすべての参加者に、高性能で軽量な電動バイクを提供できるよう努力します。最大の課題は、まさにスポーツバイクの基本要素である重量です。軽さは常にドゥカティのDNAであり、急速に進化しているバッテリーの技術および化学のおかげで、素晴らしい結果が得られると確信しています」

ともあれ、エゴ・コルサは動力性能と信頼性の面では評価されましたが、250〜260kgくらいという、ロードレーサーとしてはかなりヘビー級だった点は常に欠点として指摘されました。上述の引用のC.ドメニカリの言葉どおり、ドゥカティはMotoEレーサー開発において"軽さ"にフォーカスしているみたいです。一体どのようなマシンが2023年にMotoEを盛り上げることになるのか? 鬼に大爆笑されちゃいますが、楽しみにそのときを待ちましょう!