1982年まで、日本の量産車にはカウリングも低いハンドルも許されていなかった。これらの規制が緩和されたのがレーサーレプリカの誕生を促したのである。そして1983年2月20日SUZUKIから発売された日本のレーサーレプリカ第1号RG250Г。そこから始まったレーサーレプリカブームの軌跡を辿っていきたいと思います。

3年ぶりのフルモデルチェンジ

(日本のバイク遺産 -レーサーレプリカ年代記-©モーターマガジン社)

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'94年型モデルは、シャシー、エンジン、電子制御システムが変更されている。今回のモデルチェンジの目玉となっているのは、片持ち式リアアームと知能を持ったカードキーを利用したエンジンセッティング機能。ただし、注目のカードキーの使い勝手については試乗地が筑波サーキットだったため、あまり恩恵を受けていない。しかし、点火進角など、出力制御に関わるPGMのパートをワンタッチでリセッティングできるというメリットについては拍手。将来的にはストリートでも自分好みのエンジン性格を選択できるようなシステムが出てくればもっと嬉しい。ちなみに、出力規制に対して非常に大きな、10psくらいのパワーダウンを狙っている箇所はチャンバーのエキパイ部で、そこの入り口の内側を狭くすることで実行している。材質は鉄。キャスターが微妙に立ち、片持ち式のリアアームが組み合わされたシャシーによるハンドリングの変化はどうか?第一印象で言うと、これまでより旋回性がさらに強力。減速行程から寝かし込み、アクセル開け側のパーシャル、パワーオンの状態にもっていく時、バイクはグイーッと向きを変える。ここの部分でのハンドリングタッチというのはスポーツライディングをするときに、バイクをどこに進めるかといった計画、それからのアクセル加減を決めるのにすごく重要。乗り手の操作、加重移動やアクセルワークといったリズムやタイミングにダイレクトに反応するか、多少遅れるか、リズムの取り方によってどれくらい変化するのかといった可変率なども乗り手は“感覚”として自分の中にインプットし、それに合わせて操作している。これがあるレベル以上でないと意のままに操作できない。つまり曲がらなくなるとか、曲がり方が極端に変わると、走れる場所、ライダーも決まってくる。デビューからしばらくNSRはこのタイプだった。だが'94モデルは、コーナリング前半での方向転換に過度なシャープさがないので操作のリズムを見極めやすく、サスを意識的に使わないレベルでも、しっかりと、それなりのバランスの良い方向転換をする。曲がると言うことに関しては従来型以上に効率が良い。

250ccレプリカスポーツクラスの中では群を抜く人気のベストセラーモデルであるNSR。スポーツライディングとしてハイレベルな走りと操縦感覚を兼ね備えるこのモデルの3年ぶりのフルモデルチェンジとして、期待に胸を膨らませた人も多かったのではないでしょうか。

スポーツ感覚や潜在的なポテンシャルをどんどん向上させながら進化してきたNSR。キャブからエグゾーストポートまで高度に電子制御化されたパワフルなエンジンに、コーナリング時の車体の安定性など、乗り手が個々のスキルで自分なりのスポーツライディングを楽しんで遊べるように融通も利くというような扱いやすさが印象的な1台となっていったのです。