戦後の勃興から、長年庶民の足として活躍した50ccの原付一種
「原付」はそもそも、第二次大戦後の日本で流行した「原動機付き自転車」から生まれた呼称でした。1947年（昭和22年）の道路交通取締法（当時）で「原付」は初めて車両区分の名称として定義されることになり、現代の道路交通法に引き継がれてきました。
1947年、ホンダの名前で初めて製品化されたホンダA型。50ccの空冷2ストローク単気筒を、市販の自転車に取り付ける方式でした。
www.autoby.jp1950年代後半には、2ストローク、4ストロークともに50cc単気筒エンジンの高性能化が進み、1958年には世界で最も多く作られた2輪車であるスーパーカブシリーズの始祖、C100がホンダから発売されることになります。C100を端緒としたモペッドブーム、1970年代のソフトバイクブーム（ヤマハパッソル、ホンダロードパルなど）、そして「HY戦争期」に被る1980年代の国内第2次スクーターブーム・・・と、国内市場の主力製品の排気量レンジとして数多くの50ccモデルが生み出されることになりました。
しかし、国内ビッグ4メーカーが輸出市場に注力していた1960年代末のころから、次第に輸出市場向け小型車の排気量下限は100cc以上となっていき、周知のとおり現代では世界市場の最小クラスは125ccが主流になっています。一方国内は「普通4輪免許で運転OK」という日本独自の法律もあって、50ccの原付一種のモデルがずっと存続する状況が続きました。
1965年最終戦日本GP（鈴鹿）で、空冷4ストローク並列2気筒50ccを搭載するRC115を疾走させるL.タベリ（奥）とR.ブライアンズ。戦後の世界的モペッドブームを受けて、FIM（国際モーターサイクリズム連盟）は、世界ロードレースGP（現MotoGP）に50ccクラスを1962年より創設。1984年以降は50ccに代わり80ccクラスになりますが、1989年限りに廃止されることとなりました。
www.honda.co.jp4輪普通免許保持者に125ccはキケン!! という声は、新基準原付に対しては今のところそんなに多くはないみたいです？
先日アップした[2025年10大ニュース:5] 2輪EV用交換式バッテリーの、世界統一規格は幻のものになるのかな？のなかでも触れましたが、ヤマハとホンダは2016年10月より国内原付一種市場の業務提携に向けた協議を開始し、2018年3月からはホンダのヤマハへのICE（内燃機関）50ccスクーターのOEM供給を開始していました。
1986年7月の道路交通法改正によるヘルメット着用義務化、1993年のヤマハPAS発売以降の電動アシスト自転車の普及、そして2009年の2輪駐車違反反則金制度拡充などなど、年々原付一種を販売する環境が厳しくなっていくなか、ホンダ、ヤマハ、スズキは国内向け原付一種を作り続けることの負担がかなり重くなっていきました。上述のヤマハとホンダの業務提携による50ccスクーターのOEM供給は、そんな負担を両社が軽減させるために選択した道といえます。
2018年4月発売のヤマハJOG/Deluxeは、ホンダからOEM供給された原付一種スクーターでした。
www.autoby.jp![画像: [2025年10大ニュース:5] 2輪EV用交換式バッテリーの、世界統一規格は幻のものになるのかな？ - LAWRENCE - in partnership with Motor Magazine Media](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16781465/rc/2025/12/29/1cc5e81a6579ee06e2316c0c193685b4eeb58ab6.jpg)
ネットスラングによる表現にはなりますが、ある意味50ccの原付一種は国内メーカーにとってラインアップに長年維持するにはキツい、「特級呪物」になってしまっていたわけです。
世界市場と同じように125ccクラスを最小枠として法改正できれば、国内メーカーはそれぞれの仕向地向けのレギュレーション対策を125ccモデルに施すだけで済みます。しかし、そのような超合理的な法改正が日本で行われることは終ぞありませんでした。
125ccを原付一種にする・・・というアイデアには、「普通4輪免許で運転OK」の原付一種を125ccにすると、出力的に2輪の運転に慣れてない人にはキケン!! と指摘する人が少なからず存在しました。警察的にも、出力増という事故リスクアップを想像させる話はあまり好ましく思わないでしょう（特定小型原付はノーヘルOKと、妙なところではユルいですが・・・）。
クロスカブ110 Lite。ホンダは新基準原付で作られた各機種を「Honda Lite シリーズ」とネーミングしています。
www.honda.co.jp新基準原付は、125ccクラスのモデルを原付一種で販売できたら・・・という願望と、普通4輪免許で125cc車を運転させるのはいかがなものか・・・？ という世の中の空気を、うまいこと折衷させたアイデアといえるのかもしれません？
そして2025年11月適用開始の令和2年度排出ガス規制により、ガソリンを燃料とする国内の原付一種はすべて生産が終了・・・。事実上、日本独自の50cc文化は2025年限りで終焉に向かうことになります。webオートバイでは【イマなら買える！50cc原付バイク図鑑】と題して、もしかしたら未だ新車在庫が残っているかも？ という50cc各機種をシリーズで紹介しています。50ccの新車を手に入れたい!! という方は、ぜひチェックすることをオススメします。
