ビジョンDCロードスターの開発は中止されることに・・・!?
「コンコルソ デレガンツァ ヴィラデステ2024」は、BMWグループがメインスポンサーをつとめるコンクールイベントですが、催しのひとつとして行われたR20コンセプトのプレゼンテーションのなかで、M.フラシュはBMWの電動車開発の「今後」について触れました。
フラシュによると、BMWは現在ラインアップしている電動スクーターのCE 04と、e-パルクーラーと称する小型電動車のCE 02で、2輪EV市場の77%をカバーできているそうです。残る23%はまだBMWが商品を投入していない電動スポーツバイクのカテゴリーとなりますが、フラシュは23%の市場の売り上げを手にするために、BMWがそこに資金を投資する理由はわからないと述べました。
ライダーたちに話を聞いても、『湖の周りを走ったり峠を登ったりするために、電動バイクに3万ユーロを費やす用意がある』という人はいない。これらは確かに漠然としたものだが、「モーターサイクリングは自由と独立を求めるものだから、今のところ電気自動車は役に立たない」
フラシュの考えは、現状で2輪EVの主流である「アーバン モビリティ」に重点を置くのが最良の策であり、大きな市場にはなっていない電動スポーツバイクの分野については、手をつけない方がベター・・・ということのようです。そして氏は、2019年6月にBMWが公表した電動スポーツバイクのプロトタイプ「ビジョンDCロードスター」の開発を中止させてことを、明らかにしています。
フラシュによると、ビジョンDCロードスターのコストとパフォーマンスの評価としては、電動バイクとしては良くできたものではあるものの、ICE(内燃機関)を搭載するBMWのスポーツネイキッド、M1000RRのようなモデルに対する競争力はない・・・というものでした。
大きな技術的ブレイクスルーがない限り、電動バイクは普及しないでしょう・・・
市販版CE 04を発表した2021年の夏時点、BMWは全固体電池開発への多額の投資をすること、そしてEVを2025年までに約200万台、2030年までに1,000万台販売する計画を喧伝していました。しかしフラシュによると現在EV市場はプラトー(成長曲線が伸び悩み平坦になること)状態にあり、それゆえにBMWはEV戦略を見直さざるを得なかった、ということなのでしょう。
スターク フューチャー製モトクロッサーやエレクトリックモーション製トライアル車など、オフロード競技車の分野ではすでに電動車は、十分な商品性があることを競技の舞台で実証しています。しかし公道用スポーツバイクの用途のひとつである「ツーリング」のことを考慮すると、航続距離がICE搭載車よりも短くなってしまうことが、現状の電動スポーツ車最大の弱点といえます。
現在電動車用として主流のリチウムイオン電池は、商品化された当初の1990年代のモノに比べればはるかに進化してはいますが、公道用スポーツバイクの分野においてゲームチェンジャーになるほどのポテンシャルは有していないのが実情です。
リチウムイオン電池に代わる革新的バッテリー技術の完成や、充電インフラ充実などの環境整備が整うときまで、BMWのビジョンDCロードスターほか電動スポーツモデル開発の「リブート」はないのかもしれません。ともあれ、BMWモトラッドCEOによる電動車戦略改訂の公表は、業界に大きな影響を与えることになるでしょう。