MOTC(台湾ハイウェイ総局)のデータによると、2022年度の台湾市場における電動スクーターの販売シェアは、今年もGogoroが首位になりました。2015年度よりバッテリー交換ステーションのサービスを台湾で開始したGogoroですが、これで7年連続で首位の座を守ったことになります。

台湾における2022年度の電動スクーター販売は、全スクーター販売の12%でした

2022年度の台湾経済は、世界的なインフレーションと主要市場における消費者需要の減速もあって、多くの先進国同様低迷気味でした。そして台湾2輪産業については国内販売・輸出販売ともに期待値を下回り、過去7年間で最低水準になると予測されています。

しかし2015年のGogoroのサービス開始以来、順調に成長を続けている電動スクーターの分野は2022年も好調といえ、全スクーター販売中12%を電動スクーターが占めるまで割合が増加しました。また先駆者であるGogoroは7年連続でシェア1位をキープし、シェア2位の座もPBGN(パワード・バイ・ゴゴロ・ネットワーク=俗称Gogoro連合)のA-モーターがつきました。

画像: 2022年の台湾市場における、電動スクーターのシェア。図では3位が省略されていますが、ここにはライバル陣営のアイオネックス(キムコ)が入ります。 www.gogoro.com

2022年の台湾市場における、電動スクーターのシェア。図では3位が省略されていますが、ここにはライバル陣営のアイオネックス(キムコ)が入ります。

www.gogoro.com

4位にはPGO、5位にはeムービング、そして6位にはヤマハが入っていますが、これらはいずれも台湾市場でPBGNに加わっているので、ベスト6中5メーカーを「Gogoro連合」が独占した結果というわけです。

台湾市場で長年スクーター分野のトップを走ってきたキムコは、独自のバッテリー交換ステーション網と電動スクータープラットフォームの「アイオネックス」を2021年から本格的に展開し、PBGN勢の猛追を試みました。

しかし、2022年度の台湾におけるバッテリー交換シェアはPBGNが90%という圧倒的な結果となり、円グラフ中「Others」で示されたアイオネックスの数値は10%にとどまりました。後発のアイオネックスも、2022年にはステーション設置数2,000を突破させるという努力をしたのですが、先駆者としての実績を持ち、2,500以上のステーションを運営するPBGNをキャッチアップするのは、容易なことではないようですね。

画像: 2022年度の台湾市場・交換バッテリーシェアリングサービスのシェアは、Gogoro連合ことPBGNが9割を占めました。なおPBGNがサポートする台湾のユーザー数は、現在52万4,000人以上に及びます・・・。 www.gogoro.com

2022年度の台湾市場・交換バッテリーシェアリングサービスのシェアは、Gogoro連合ことPBGNが9割を占めました。なおPBGNがサポートする台湾のユーザー数は、現在52万4,000人以上に及びます・・・。

www.gogoro.com

世界市場での"バッテリー交換サービス"の戦いは、誰が制する!?

台湾市場を制圧しているPBGNの盟主Gogoroは、インド、インドネシア、シンガポール、韓国、中国、フィリピン、イスラエル・・・と、アジア全域での勢力拡大を現在推し進めています。そして当然その目は、欧州やアメリカ大陸などのマーケットにも向けられているでしょう。

新興メーカーでもあるGogoroの世界戦略に対抗すべく、ホンダ、ヤマハ、KTM、ピアッジオなどのコアメンバーを中心に、数多くの2輪メーカーらが形成した交換式バッテリーのコンソーシアムであるSBMC(スワッパブル・バッテリー・モーターサイクル・コンソーシアム)ですが、2022年中にはSBMCの共通仕様の交換式バッテリーを世界に公開することはできませんでした・・・。

画像: 2022年12月27日の発表より。アイオネックスのステーション設置数2,000を達成したことを祝う、キムコ会長のアレン・コー(柯勝峰)。 www.ionex.com.tw

2022年12月27日の発表より。アイオネックスのステーション設置数2,000を達成したことを祝う、キムコ会長のアレン・コー(柯勝峰)。

www.ionex.com.tw

SBMCのメンバーのなかで、気になる存在といえるのがアイオネックスを保有するキムコです。上述のとおりアイオネックスはすでに独自規格のバッテリー交換網・プラットフォームを台湾市場で展開していますが、会長のアレン・コーは強大なPBGN勢との戦いに対する意欲マンマンで、2023年にはアイオネックスのステーション数2,600達成、そして2024年に台湾首位だけでなく、世界一の2輪EVブランドになることを目標に掲げています。

またキムコは、ハーレーダビッドソンが産んだ2輪EVブランドである「ライブワイヤー」と2021年暮れに2輪EV開発のパートナーシップを締結しました。この提携によりキムコの技術は、ライブワイヤー「S2 デル・マー」の次に作られる、軽量クラス2輪EVのS3(システム3)に活用されることになる予定です。

画像: 投資家向け資料で示された、ライブワイヤーのモデル開発計画。S2モデルに採用された「アロー」アーキテクチャのスケールダウン版を採用するS3モデル開発に、キムコは協力することになります。 investor.harley-davidson.com

投資家向け資料で示された、ライブワイヤーのモデル開発計画。S2モデルに採用された「アロー」アーキテクチャのスケールダウン版を採用するS3モデル開発に、キムコは協力することになります。

investor.harley-davidson.com

はたしてキムコは、SBMCの共通交換式バッテリーができ上がったときに、独自のアイオネックス規格を「放棄」するのでしょうか? これまでの投資額の大きさを考えると、それはないと思うのですが・・・。

一方SBMCにも加わる「国内コンソーシアム」のホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキの4メーカーが参画して生まれた、日本向けのサービスであるGachaco(ガチャコ)は基本的にホンダの技術をベースにしたプラットフォームを構築しているのですが、国内コンソーシアムの4社がどれだけSBMCの仕様決定に強い影響力を発揮できるのかも、気になるところです。

SBMCに加わる各メーカーは現在それぞれ独自の2輪EV開発にも励んでいますが、電動スクーターや電動コミューターのような、"商い"のスケールが大きい小型2輪EVのマーケット開拓・確保のために、いち早くSBMCの共通交換式バッテリーを具現化すべきと思いますが・・・。今年はこの分野の行末を、決定付ける年になるような気がしますね(妄想?)。Gogoro勢の動向とともに、注目したいです。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.