MENA(ミーナ)地域という、新たなビジネスチャンスの舞台
かつてアフリカ大陸や南米大陸で行われていたダカールラリーが、2020年からサウジアラビアで開催されるようになったのは周知のとおりです。中東の地へのダカールラリーの誘致は、石油依存経済からの転換を目指し、"サウジ・ビジョン2030"という壮大なプロジェクトを推進中のサウジアラビアの思惑が背景にありました。
中東は20世紀の産業を加速する燃料だった「石油」を豊富に埋蔵することで、多くの富を得てきた土地です。しかし、近年は"サウジ・ビジョン2030"のように石油頼みの経済から脱却し、その他の稼ぐ方法を模索する国が中東では増加しています。言うまでもなくその理由のひとつには、世界的なカーボンニュートラルへの取り組みの影響があります。
ところでみなさんは、MENA(ミーナ)という言葉をご存知でしょうか?
MENAとは、Middle East & North Africaの略で、中東・北アフリカ地域の国々を指す略称です。
産油国であるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、クウェートなどを中心とした地域で石油収入をもとに経済基盤の改革・整備が行われ、また北アフリカ諸国は安価で豊富な労働力を持っており、今後も成長していく市場として期待されています。
石油による潤沢な資金を持ちつつ、安価な労働力が調達できる場として世界の資本家から注目されているMENA地域は、様々な新しいビジネスが誕生しています。今回紹介する、UAEの首都アブダビに本拠を置く電動モビリティ企業の「バークEV」は、急速に成長していいるMENA地域でのラストマイルデリバリー市場の発展に取り組んでいます。
アブダビのエミレーツパレスホテルで開催されたバークEVの式典では、UAE唯一の商用ドローン配送サービスプロバイダーでもある同社が誇る最新ドローン「YAS1」、最も小回りの効く電動モビリティであるEバイクの「レナライト」、そしてデリバリーに特化した2EVである「レナマックス」が紹介されました。
設計は世界的に著名なデザイナーが設立した、"カラム"が担当
レナマックスは、大手レストラングループの「アメリカーナ」とデリバリープラットフォーム企業のJahezと共同で構想・開発された2EVであり、その設計を担当したのはフォード、TWR、ジャガーのデザインディレクターを歴任したイアン・カラムが、2019年のジャガー退任後に設立したデザイン&エンジニアリングのコンサルティング会社「カラム」です!
イアン・カラムCBE(カラム創設者)
「モダンでシンプル、そして機能的なバークのレナマックスは、明日の配送の課題を解決するためにデザインされました。働くライダーの厳しい環境と要求、そしてあらゆる機能的な側面をカラムは考慮しました。それは、パンクを最小限に抑えるチューブレスタイヤ、最大限の航続距離を稼ぐため軽量で反応の良い構造、そして乗る喜びまで・・・に及びます。
アブダラ・アブ・シェイク(バーク創設者兼CEO)
「ライトモビリティは世界的に大きな(ビジネスの)チャンスですが、私たちは中東とアフリカのために専用車両で最初の動きをしたいと考え、そのために最高の頭脳を集めました。数え切れないほどのライダーの経験と、オンデマンドプラットフォームの豊富なデータを分析した成果により、レナマックスは生まれました。その結果は驚くべきもので、"スクーター界のテスラ"ともいうべきものです。ユーザーエクスペリエンスと運用効率にかつてないほど焦点を当てた、目的に適ったスクーターです。
バーク創設者兼CEOのコメント中にある"スクーター界のテスラ"という称号は現在、バッテリー交換式電動スクーターのプラットフォームで、大成功をおさめている台湾のGogoroにもっぱら使われています。もしバークEVの思惑どおりに今後事業を成功させることができれば、その称号を自他共に認めるものにすることができる、かもしれません・・・?
レナマックスの生産は今年スタートし、2025年までにUAE、サウジアラビア、エジプトなどのMENA地域内向けに5万台を製造する予定とのことです。また同地域の宅配業者たちは、デリバリープラットフォームを介してレナマックスをリースすることができます。
石油がジャンジャン産出されるこの地域にて、電動モビリティビジネスを展開するというバークEVの挑戦の行方に・・・注目したいですね!