ヤマハモーターヨーロッパN.V.と、ロイヤルダッチモーターサイクリスト協会(KNMV)が支援する、オランダ発の電動モトクロッサープロジェクト!!
今年に入って、「FIM E-エクスプローラー ワールドカップ」の公式マニュファクチャラー決定の報が続々と届いていますが、3番目にその名前があがったオランダの「EMXパワートレイン」は2018年にドームス・プロイェクテンB.V.社とELEOテクノロジーズ社(当時はスパイクテクノロジーズ社)の技術コラボレーションとして、その歴史をスタートさせています。
ドームス・プロイェクテンB.V.のエルマー・ドームスは電気・機械工学の専門家であるとともに、モトクロスのライダー兼トレーナーという人物です。彼は数年前、欧州をはじめ各地域でモトクロスを取り巻く環境(騒音や排ガスの問題)に大きな変化が起きており、既存のICE(内燃機関)車では対応しきれないと考えるようになり、競技用電動モトクロッサーのアイデアを生み出しました。
時を同じくして、モータースポーツの"持続可能性"調査を行なっていた、オランダのロイヤルダッチモーターサイクリスト協会(KNMV)のパトリス・アッセンデルフトは、ドームスのプロジェクトに着目しました。
パトリス・アッセンデルフト(KNMVディレクター)
「私はモトクロスの大ファンであり、ガソリンの匂いやエンジンの音も大好きです。ですから、私たちは従来の内燃機関をあきらめるつもりはありませんが、将来の可能性にも目を向けなければなりません。特に、サーキットでの走行が制限されるようになれば、将来への備えが必要です。有害物質を排出せず、騒音もない電動モトクロスマシンは、モトクロスの練習を容易にしてくれるのです」
そしてKNMVとともに、ヤマハ発動機のグループ企業であるヤマハモーターヨーロッパN.V.もドームスのプロジェクトを支援。Covid-19パンデミックの影響でスケジュールは遅延しましたが、2021年5月にはプロトタイプ車の最初のトラックテストを実施。着実に技術を蓄積し、前進を続けています。
彼らが開発のターゲットに掲げているのは、若手からベテランまで広いユーザー層を持つICE250ccクラスのモトクロッサーに対抗可能な電動モトクロッサーを生み出すことです。また電動モトクロッサー最大の利点のひとつ・・・電力をコンピュータ制御できるという特性を活かすことも、開発のテーマになっています。
つまり、彼らの作品「EMX-PRO」はICE125cc以下のレベルに電力を調整することで、ビギナーに適したマシンに仕立てることも、プロライダー向けのフルパワー仕様にすることも、簡単にできるわけです。またICE車のように、戦闘力を維持するためエアフィルター、クランク、ピストンなどのパーツの頻繁なメンテナンス・交換を必要としない点も、電動モトクロッサーならではの利点であると、プロジェクトのリーダーであるE.ドームスは主張しています。
EMX-PROはバッテリーに、交換式を採用しています!
EMX-PROの詳細なスペックは明らかにされていませんが、ELEOテクノロジーズ社が開発するバッテリーは簡単に交換できる仕様になっています。モトクロス競技では2ヒート制を採用することが一般的ですが、EMX-PRO用交換式バッテリーはヒート1とヒート2の間にバッテリー交換を行うことを想定しているわけです(外部充電器を使っての、プラグイン充電も可能です)。
バレンティン・ギヨネ(E-エクスプローラー創設者兼CEO)
「EMXパワートレインは、2021年夏にFIM E-エクスプローラー ワールドカップのシリーズを立ち上げる際、我々の呼びかけに応えてくれた最初のOEMのひとつです。(中略)エルマー(・ドームス)は電動パワートレイン開発において誰もが羨むほどの実績と、モトクロスにおける数十年もの実績を持っています。EMXパワートレインとのパートナーシップの成果を見るのはとても興味深いことで、このシリーズがどのように技術をさらに前進させることができるのか、とても楽しみにしています」
エルマール・ドームス(EMXパワートレイン創設者)
「FIM E-エクスプローラー ワールドカップは、EMXパワートレインにとって素晴らしい電動プラットフォームであると同時に、電動ダートバイクの認知度を上げ、その可能性を強調するものです。私たちは、電動モーターレースを未来に推進するという同じゴールを目指しながら、定評あるブランドや独創的なパイオニアたちと、タイトルを競い合うことを楽しみにしています」
今年からスタートするFIM E-エクスプローラー ワールドカップですが、EMXパワートレインに続いて公式マニュファクチャラーに名乗りを上げるのはどのメーカーになるのでしょうか? そのニュースをお伝えすることを、楽しみに待ちたいです!