米国を代表する2輪メディア、CYCLE WORLDが、カワサキのハブリッドモデルに関するパテントを元に、その仕様を紹介しています。そのメカニズムの大きな特徴は、昨年紹介されたプロトタイプに搭載されていたICE(内燃機関)並列2気筒以外のエンジン型式にも応用できる、その汎用性の高さにあります。

ハイブリッドシステム用48Vバッテリーは空冷式

昨年10月6日、カワサキは事業方針説明会にて、まず2025年までに10機種以上のEV(バッテリーEV=BEVおよびハイブリッドEV=HEV)を市場に投入し、そして2035年までに先進国向けの主要モデルを「電動化」する予定であることを公表し、多くの人を驚かせました!

画像: 昨年秋に公開された、カワサキのHEVプロトタイプ。ニンジャ250/400系のエンジンとフレームをベースにしているように見えますが、スチールパイプのフレームは完全新設計されたものとのことです。電気モーターのみ、ICEのみ、そして2つの動力を同時に使える3つのモードを備えた、いわゆる「ストロング方式」のハイブリッドシステムを採用しています。 www.autoby.jp

昨年秋に公開された、カワサキのHEVプロトタイプ。ニンジャ250/400系のエンジンとフレームをベースにしているように見えますが、スチールパイプのフレームは完全新設計されたものとのことです。電気モーターのみ、ICEのみ、そして2つの動力を同時に使える3つのモードを備えた、いわゆる「ストロング方式」のハイブリッドシステムを採用しています。

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先日、カワサキのHEVプロトタイプに関連する特許が公開され、カワサキのHEVに盛り込まれるであろう? さまざまなアイデアが明らかになり話題となっています。まず最初の注目点は、シート下の動力用リチウムイオン48Vバッテリーを、どのように冷却するのか? というメカニズムでしょう。

画像: パフォーマンス重視の2輪EVでは、バッテリー温度制御に液冷式を採用する例もありますが、カワサキのHEVでは軽量かつシンプルで、低コスト化にも有利な空冷式を採用しています。エンジンの側面を通るエアインテークダクトは、バッテリーがおさまるケースに接続されて走行風を導入。そしてケースの後ろ側には熱を排出ダクトが設けられ、ケース内に溜まった熱を外部に放出する仕組みです。 www.jpo.go.jp

パフォーマンス重視の2輪EVでは、バッテリー温度制御に液冷式を採用する例もありますが、カワサキのHEVでは軽量かつシンプルで、低コスト化にも有利な空冷式を採用しています。エンジンの側面を通るエアインテークダクトは、バッテリーがおさまるケースに接続されて走行風を導入。そしてケースの後ろ側には熱を排出ダクトが設けられ、ケース内に溜まった熱を外部に放出する仕組みです。

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昨年秋の公開されたHEVプロトタイプは、ICE冷却用の水冷ラジエターとは別系統の、モーターなどのハイブリッドシステム冷却用(らしき?)ラジエターがありましたが、新たに公開された特許からはモーターは液冷にして、バッテリー冷却に関しては空冷にするのが最適解・・・と考えているのかもしれません?

画像: 4輪小型車用バッテリーとほぼ同じサイズの動力用48Vバッテリーと、電装用12Vバッテリーをシート下に配置するレイアウト。公開されたHEVプロトタイプには冷気導入ダクトは見当たらないので、特許の方式は新たに生み出されたアイデアなのかもしれません? www.autoby.jp

4輪小型車用バッテリーとほぼ同じサイズの動力用48Vバッテリーと、電装用12Vバッテリーをシート下に配置するレイアウト。公開されたHEVプロトタイプには冷気導入ダクトは見当たらないので、特許の方式は新たに生み出されたアイデアなのかもしれません?

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リアショックの取り付けに、電気モーターを利用!!

新たな特許のそのほかの注目点は、ボトムリンク式リアショックのマウント方法です。昨秋公開のHEVプロトタイプは、6速トランスミッションの「上」に電気モーターを搭載していましたが、このモーターや動力用48Vバッテリーなどのハイブリッドシステムを搭載したために、構成各パーツの配置が非常にややこしくなっています。

新特許ではスペース効率も向上させるねらいで、リンク式リアショック部のマウントをモーターとフレームを結合させる鋳造パーツに設けていることを図示しています。

画像: モーターとフレームを結合させる鋳造パーツは、縦横にリブが入る構造により補強されています。上側にはショックユニット上部をマウントし、下側はリンク機構のライジングレートリンケージをマウントする構成になっていることがわかります。 www.jpo.go.jp

モーターとフレームを結合させる鋳造パーツは、縦横にリブが入る構造により補強されています。上側にはショックユニット上部をマウントし、下側はリンク機構のライジングレートリンケージをマウントする構成になっていることがわかります。

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画像: ニンジャ250/400系をベースにしたと思われる、排気量未公表のHEVプロトタイプの心臓部。電子制御変速機構はクラッチ操作不要で、左ハンドルバーのスイッチ操作で変速を行うユニークな方式を採用しています。そのため、クラッチレバーとシフトペダルは備えていません。 www.autoby.jp

ニンジャ250/400系をベースにしたと思われる、排気量未公表のHEVプロトタイプの心臓部。電子制御変速機構はクラッチ操作不要で、左ハンドルバーのスイッチ操作で変速を行うユニークな方式を採用しています。そのため、クラッチレバーとシフトペダルは備えていません。

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さまざまなエンジンレイアウトに搭載可能なハイブリッドシステム!?

並列4気筒、並列2気筒のシリンダー背面スペースに、ACG(交流発電機)などの部品を配置するのは、1980年代にはすでに広く使われるようになったアイデアですが、カワサキのハイブリッド技術は電気モーターなどを配置する空間として活用しています。昨秋公開されたHEVプロトタイプに搭載されたICEは並列2気筒でしたが、この"カワサキ方式"であれば単気筒、並列4気筒などにもこの技術を採用することが可能です。

画像: こちらは過去に公開された、カワサキのハイブリッドシステムの特許図です。ICE部は昨秋公開されたHEVプロトタイプと同じ並列2気筒ですが、車体がリアツインショックのネイキッドスタイルなのが興味深いです(ハイブリッドシステムことが特許の対象なので、描かれている車体には深い意味はないのでしょうが)。 patentimages.storage.googleapis.com

こちらは過去に公開された、カワサキのハイブリッドシステムの特許図です。ICE部は昨秋公開されたHEVプロトタイプと同じ並列2気筒ですが、車体がリアツインショックのネイキッドスタイルなのが興味深いです(ハイブリッドシステムことが特許の対象なので、描かれている車体には深い意味はないのでしょうが)。

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画像: 過去に公開されたカワサキのハイブリッドシステムの構成図。この図ではシリンダー背面の電気モーター(M)の動力は、スプロケットとチェーンでメインシャフト(12a)を駆動していますが、この部分はギア駆動でもプーリー+ベルトでもかまわないと説明しています。 patentimages.storage.googleapis.com

過去に公開されたカワサキのハイブリッドシステムの構成図。この図ではシリンダー背面の電気モーター(M)の動力は、スプロケットとチェーンでメインシャフト(12a)を駆動していますが、この部分はギア駆動でもプーリー+ベルトでもかまわないと説明しています。

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画像: 過去に公開されたカワサキのハイブリッドシステムの解説図。プライマリーギア(17)とメインシャフト側ギアの間にモーターで駆動されるスプロケットがおさまっています。エンジン駆動力は第1ワンウェイクラッチ(21)、電気モーター駆動力は第2ワンウェイクラッチ(22)に伝達され、これら2のワンウェイクラッチはオイルポンプ動力伝達装置(30)を構成しています。エンジン・トランスミッション用オイルポンプ(P2)はその名のとおりエンジンとトランスミッションを潤滑し、クラッチ専用オイルポンプ(P2)はECU(25)で制御されるオイルコントロールバルブユニット(24)を介し、油圧式クラッチへ作動油を送ります。なおECUには、スロットル(T)、燃料噴射装置(F)、点火装置(I)もつながっています。 patentimages.storage.googleapis.com

過去に公開されたカワサキのハイブリッドシステムの解説図。プライマリーギア(17)とメインシャフト側ギアの間にモーターで駆動されるスプロケットがおさまっています。エンジン駆動力は第1ワンウェイクラッチ(21)、電気モーター駆動力は第2ワンウェイクラッチ(22)に伝達され、これら2のワンウェイクラッチはオイルポンプ動力伝達装置(30)を構成しています。エンジン・トランスミッション用オイルポンプ(P2)はその名のとおりエンジンとトランスミッションを潤滑し、クラッチ専用オイルポンプ(P2)はECU(25)で制御されるオイルコントロールバルブユニット(24)を介し、油圧式クラッチへ作動油を送ります。なおECUには、スロットル(T)、燃料噴射装置(F)、点火装置(I)もつながっています。

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HEVはゼロエミッションの観点では排ガスを出すICEを使うことが問題視されてしまいますが、電気モーターの力を使うことで燃費を向上させるとともに、ICEのパワーに電気によるプラスアルファのパワーを与えることが可能・・・というメリットがあります。また現時点では、BEVよりも航続距離の面でHEVの方がはるかに優位なことも大きな魅力です。

カワサキが2025年までに、市場に投入することを予定している10機種以上のEVのうち何台がHEVになるのかは現時点では不明ですが、気筒数・排気量の異なる複数のモデルに採用することで、部品供用化などにより小売価格を頑張って抑えることができるのであれば・・・カワサキ製HEVは多くのユーザーに歓迎されることになるのではないでしょうか? 期待しましょう!

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