ICE(内燃機関)車に比べると、まだ普及率がかな〜り低い電動バイクですが、チラホラとカスタムを施す例が登場しており、電動バイクのカスタムが新しいトレンドになる予感がします。こちらに紹介する「E-レーサー ビースティアル-e」は、販売を前提に開発が進められている作例です。

ベース車はゼロ モーターサイクルズのSR/Fです!

E-レーサー モーターサイクルは2019年のEICMAに、ゼロ モーターサイクルズのSR/FとFXSベースのカスタムを出展し、当時話題となりました。当時は2020年春から生産・販売すると予告されていましたが、Covid-19パンデミックの影響を受けたためか、その話はいつの間にか立ち消えになったのかな・・・と思われました。

左がSR/Fをベースにした「エッジ」、右がFXSをベースにした「ラギッド」です。

ottonero.blogspot.com

しかし2022年1月12日に、E-レーサー モーターサイクルはSR/Fベースのエッジを発展させた仕様である「ビースティアル-e」を発表。あわせて、イタリアのトスカーナにあるゼロ モーターサイクルズのディーラー、E-モーション イタリーと提携して、新たに世界的な流通プログラムを行うことも明らかにしました。

画像: E-レーサー ビースティアル-eは、アメリカの電動バイクメーカー、ゼロ モーターサイクルズの高性能ネイキッドモデル、SR/Fをベースにしたカスタムです。

E-レーサー ビースティアル-eは、アメリカの電動バイクメーカー、ゼロ モーターサイクルズの高性能ネイキッドモデル、SR/Fをベースにしたカスタムです。

画像: なお、こちらがベース車両のSR/Fです(2020年型)。最高出力82kW(110馬力)、最高速度200km/h、最大航続距離259kmのパフォーマンスを誇る、高性能電動ネイキッドバイクです。

なお、こちらがベース車両のSR/Fです(2020年型)。最高出力82kW(110馬力)、最高速度200km/h、最大航続距離259kmのパフォーマンスを誇る、高性能電動ネイキッドバイクです。

ビースティアル-eは、フロントヘッドライト、タンク、バックテールの3つのセクションをカスタムしたことで、元のSR/Fからより精悍なルックスを得ています。タンクとバックテールはカーボンファイバーを使用することで、軽量化をはたしています。

画像: ヘッドライトはポジション、ロービーム、ハイビームいずれも多灯LEDを採用。ハンドルバーの両端には、LEDデイライトが取り付けられており、その存在感をより周囲にアピールします。

ヘッドライトはポジション、ロービーム、ハイビームいずれも多灯LEDを採用。ハンドルバーの両端には、LEDデイライトが取り付けられており、その存在感をより周囲にアピールします。

画像: レーシングスペックのブレンボ製フロントディスクブレーキシステムを採用。

レーシングスペックのブレンボ製フロントディスクブレーキシステムを採用。

画像: バックテール部は、軽量なカーボンファイバーを採用。2019年のエッジは、茶色いラグジュアリーな厚手のシートが特徴でしたが、ビースティアル-eはシートも黒仕上げとなり、よりスパルタンかつレーシーなデザインになっています。

バックテール部は、軽量なカーボンファイバーを採用。2019年のエッジは、茶色いラグジュアリーな厚手のシートが特徴でしたが、ビースティアル-eはシートも黒仕上げとなり、よりスパルタンかつレーシーなデザインになっています。

オーディオで安全性を電動バイクに与える試み!?

2019年のエッジにも採用されていた、ユニークなオーディオ機能はビースティアル-eにも継承されています。BOSEのサウンドシステムを搭載する「オーディオフォースバックシステム - E-RAF」は、2つの機能を有しています。ひとつは、ICE車よりはるかに静かな電動バイクの存在を周囲の交通に知らせるためにサウンドを発する機能。もうひとつは、速度に応じて変化する音を発することで、ライダーにスピードを意識させる機能です。

電動の2輪車のあまりの静かさは、新たな安全性の問題を生み出すことになる・・・というのは、多くのメーカーの研究対象になっていますが、E-レーサーの試みはそのひとつの解答例といえるでしょう。

画像: ダミータンクのカバーを開けると、充電用プラグ差し込み口と、BOSEのサウンドシステムが姿をあらわします。オーディオの音は振動も作り、その音と振動の変化により、乗り手はスピードの変化をより強く自覚することができます。

ダミータンクのカバーを開けると、充電用プラグ差し込み口と、BOSEのサウンドシステムが姿をあらわします。オーディオの音は振動も作り、その音と振動の変化により、乗り手はスピードの変化をより強く自覚することができます。

画像: チューブラートレリスフレームの間にも、BOSEのオーディオシステムが組み込まれます。周囲に存在を知らせるために発する音は、遠くに届く低周波、近くでより聞こえる高周波を使い分けるそうです。

チューブラートレリスフレームの間にも、BOSEのオーディオシステムが組み込まれます。周囲に存在を知らせるために発する音は、遠くに届く低周波、近くでより聞こえる高周波を使い分けるそうです。

画像: ウンブリア・キネティクス社が特許を取得した、エアテンダーサスペンションをリア側に採用。通常のショックユニットよりも硬くて短いスプリングに独自のエアシステムを組み合わせることで、コントロール性と安定性を向上。さらに荒れた路面でもソフトな乗り心地を提供し、乗り手の好みやライディングスタイルに応じた調整も容易な構造になっています。

ウンブリア・キネティクス社が特許を取得した、エアテンダーサスペンションをリア側に採用。通常のショックユニットよりも硬くて短いスプリングに独自のエアシステムを組み合わせることで、コントロール性と安定性を向上。さらに荒れた路面でもソフトな乗り心地を提供し、乗り手の好みやライディングスタイルに応じた調整も容易な構造になっています。

ビースティアル-eは基本的にボルトオン構成で作られているため、ストックのSR/Fにそのまま各パーツが取り付けることが可能です。

なお、最新のリリースには記されていませんが、2019年のエッジ公開時にはE-レーサーは1960年創立のイタルジェットと提携していることを公表していました。多くの日本人にとってイタルジェットは、スクーターの意欲作である「ドラッグスター」を生み出したブランドとして知られています。

画像: レオポルド・タルタリーニが創業したイタリアンブランドのイタルジェット。2000年代前半に財政難からモーターサイクル製造を停止していましたが、2020年秋より新しいドラッグスター125/200を生産し、再び市場に送り出しています。 www.italjet.com

レオポルド・タルタリーニが創業したイタリアンブランドのイタルジェット。2000年代前半に財政難からモーターサイクル製造を停止していましたが、2020年秋より新しいドラッグスター125/200を生産し、再び市場に送り出しています。

www.italjet.com

旧ビューエルや旧ヴィクトリーの関係者が在籍するというゼロの電動バイクは、ビューエルやヴィクトリーなどの過去作に通じる「アメリカ」的なデザインがスタイリングの特徴です。それはそれで、無骨かつ質実剛健さがあふれていて好ましく思える人も多いでしょうが、「美的」かとたずねらると・・・どちらかというとそのセンスとは無縁かな? という感じです(ファンの方、ごめんなさい!!)。

その点、イタリアのE-レーサーが手がけたビースティアル-eは、外装パーツの変更によってドゥカティモンスターなどに代表される「イタリアン・ネイキッド」の文法を、見事にその意匠に落とし込んでいるように思えます。日本にも輸入されたときにはぜひ現物をこの目で見て、その品質や仕上がりぶりを確認してみたいですね!

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