10月29日の発表によると、ヤマハはインド最大の自転車メーカーであるヒーロー・サイクルズの子会社であるヒーロー・モーターズと、電動アシスト自転車用モーターユニットの製造を行う合弁会社設立に向けた契約に署名したそうです。ちなみにヤマハとヒーロー・サイクルズは、インドでの電動アシスト自転車の事業性検討に関する協業を2018年11月から始めてますが・・・両社の結びつきはさらに強固なものになったと言えるのでしょう。

2018年11月21日に、さかのぼって話を整理しましょう?

去る2018年11月21日、インドの自転車大手メーカーのヒーロー・サイクルズおよび三井物産、そしてヤマハはインドでのインドでの電動アシスト自転車の事業性検討に関する協業を決定しました。その内容は、ヤマハはヒーロー・サイクルズに電動アシスト自転車用ドライブユニット「E-Kit」を供給し、ヒーロー・サイクルズは自社ブランドの電動アシスト自転車を開発・製造・・・というものでした。

画像: ヤマハの電動アシスト自転車用「E-Kit」。ヤマハの電動アシスト自転車事業は、1993年の「PAS」により始まりました。現在、海外でのビジネスとしては、主に欧州自転車メーカーに向けて、車体の中央(ペダル周辺)にモーターユニットを配置する「センターモーターユニット」であるE-Kitを輸出しています。 www.yamaha-motor.co.jp

ヤマハの電動アシスト自転車用「E-Kit」。ヤマハの電動アシスト自転車事業は、1993年の「PAS」により始まりました。現在、海外でのビジネスとしては、主に欧州自転車メーカーに向けて、車体の中央(ペダル周辺)にモーターユニットを配置する「センターモーターユニット」であるE-Kitを輸出しています。

www.yamaha-motor.co.jp

現在、ヒーロー・サイクルズのEサイクル・・・レクトロ・シリーズは、変速機付き12機種、シングルスピード11機種がラインアップされていますが、センターモーターユニット採用車はEHX20の1機種のみで、残りはハブモーターを採用しています。

画像: ヤマハPASの技術を採用した、ヒーロー・サイクルズのEサイクル、LECTRO(レクトロ) EHX20。価格は135,000インド・ルピー≒20万6,298円で、同社のEサイクルラインアップ中ダントツの高額車です。 www.herolectro.com

ヤマハPASの技術を採用した、ヒーロー・サイクルズのEサイクル、LECTRO(レクトロ) EHX20。価格は135,000インド・ルピー≒20万6,298円で、同社のEサイクルラインアップ中ダントツの高額車です。

www.herolectro.com

現在、電動アシスト自転車の最大市場を形成するのは欧州ですが、シェアの約半数は「ハブモーター」方式とのこと。ヤマハPASのセンターモーターユニットは、車体中央に重たいパーツをまとめられるのが特徴ですが、製品として安価にまとめあげるにはシンプルに後輪側へモーターを組み込むハブモーターの方が有利です。

ヤマハとしては独自のPAS方式だけでなく、市場伸長をにらんでハブモーターも手駒に加えたい・・・と考えるのは自然なことでしょう。そこで先月の29日の発表のとおり、ヤマハは電動アシスト自転車用モーターユニットの製造を行う合弁会社設立に向けた契約に署名。そしてヤマハが10%、ヒーロー・モーターズが90%を出資する新しい合弁会社を、11月末にインドに設立する予定で動いているわけです。

台湾Gogoro社とは、じつはヤマハもスズキも付き合いがあります!?

さて、インドのヒーロー財閥系企業といえば、2輪メーカーのヒーロー・モトコープが私たちには馴染み深いですが、電動系の話題としては同社と台湾のGogoro社がインドの2輪EV用バッテリー交換ステーション網を作る合弁会社の設立を今年発表しています。

一方ヤマハですが、2輪EV用バッテリーに関しては、ホンダ、KTM、ピアッジオの3社と"SBMC"=スワッパブル バッテリーズ モーターサイクル コンソーシアムの設立に参画。また日本国内4メーカーは、2019年4月に「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」創設を発表しています。

「ヒーロー財閥はGogoroと手を組んでいるのに、なんでSBMCに参画しているヤマハがヒーローと協業?」と思う人もいるでしょうが、2015年に2輪EV業界に参入してから目覚ましい成長を遂げているGogoroとも、ヤマハはすでに2018年から台湾市場におけるEVビジネスでの協業をスタートさせているのです。

画像: 2019年8月1日に、スクーター大国の台湾で発売されたヤマハEC-05は、ヤマハと台湾のスタートアップであるGogoro Inc.との協業により開発された電動スクーターです。もちろん、Gogoroのバッテリー交換網である「GoStation」を活用して、運用することを前提に設計されています。 www.yamaha-motor.com.tw

2019年8月1日に、スクーター大国の台湾で発売されたヤマハEC-05は、ヤマハと台湾のスタートアップであるGogoro Inc.との協業により開発された電動スクーターです。もちろん、Gogoroのバッテリー交換網である「GoStation」を活用して、運用することを前提に設計されています。

www.yamaha-motor.com.tw

Gogoroと組んでいる企業のなかには、長年スズキとパートナー関係にある企業で、台湾でスズキ車を製造してきた台鈴工業(Tai Ling Motor Co., Ltd. ) があります。2019年にGogoroと提携した台鈴工業は、2021年から「eReady」ブランドの電動スクーターをデビューさせましたが、その交換式バッテリー、および交換ステーション網はGogoroのものを使用しています。

画像: 台鈴の電動スクーター、eReadyには写真の「Fun」と、スポーティな「Run」の2バージョンが用意されています。 www.eready.com.tw

台鈴の電動スクーター、eReadyには写真の「Fun」と、スポーティな「Run」の2バージョンが用意されています。

www.eready.com.tw

つまり、日本の2メーカーは台湾市場においては、バッテリー交換ステーション網最大手のGogoroとの結びつきもあるわけです。電動アシスト自転車とコミューター系2輪EVは違うカテゴリーの乗り物であり、ヤマハとヒーロー財閥のインドでの協業も、ヤマハとGogoroの台湾EV市場での協業も、ビジネスの世界ではごく自然に、並び立つ話です。

コミューター系2輪EV用の交換式バッテリーシェア争いの勝者が、まだ決まっていない状況においては、利益確保のためにあらゆる可能性を探る・・・のは企業としては正しい姿勢なのでしょう。将来のことはわかりませんが、ともあれコミューター系2輪EV用の交換式バッテリーの規格が決まるときは、なるべく世界中の、多くのユーザーたちにメリットがあるかたちでの決着を望みたいですね。

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