ヴィチャジのみなさん、さようなら!
ロシアの灯台のなかで、最も南にあるガモフ灯台見学がハイライトだったヴィチャジ滞在。8月9日の夜は、ロシア風サウナの「バニャー」を体験(混浴です! もちろん水着着用が基本ですけど)。堀内さんも堀田さんも、日本ではサウナに入る習慣がないタイプでしたが、郷に入っては郷に従え? ということでサウナにチャレンジ! 前日の海水浴とともに、異国の旅には日本ではしないことに挑戦したくなる効用? があるのかもしれません。
そして翌日10日の朝、2晩のキャビン泊でお世話になった方々とのお別れを惜しみつつ、私たち一行は次の目的地の「ヒョウの国国立公園」を目指しました。
ヴィチャジからヒョウの国国立公園までは、約100km・2時間ちょっとの距離です。アンドレエフカのビーチを過ぎれば、穴ぼこや段差こそ日本では信じられない!! レベルで散見されますが、ちゃんとした舗装路になります。"アドベンチャー"という言葉がピッタリ!? のダート走行に疲れた堀田さんと堀内さんの2人と、2台のウラルにとっては、舗装路への復帰は何ともありがたいことだったに違いないでしょう。
道の途中にロードサイドの養蜂家を急遽見学(※養蜂好きの奥村カメラマンのゴリ推し?)したのち、レストランで合流したガイドのピョートルさんとともに公園を目指します。しかし、幹線のA189から目的地までは約15kmほどのダート道・・・。ガモフ半島で走った酷道に比べると、まだ楽な部類なダートのようではありましたが・・・堀田さん、堀内さん、お疲れ様でした!?
2012年にできた、新しい国立公園
さて訪問先のヒョウの国国立公園ですが、こちらは49あるロシアの国立公園のなかでは新しい部類に入り、2012年に誕生しました。
極東の沿海地方がロシアの一部になったのは19世紀のことですが、入植により人間が急速に増えたことでこの地の自然破壊は年々進んでいくことになりました。そんな状況の下、この地の動物たちで最初に保護しよう! というハナシになったのは、19世紀末にはほとんどいなくなってしまった鹿だったそうです。
そのころは、トラやヒョウは人間の敵として見なされており、また毛皮目当てのハンターたちの的にもなっていました。そして人間のエゴのせいでトラやヒョウの数はどんどん減っていくことになり、20世紀末にはヒョウの数はわずか36匹!! になってしまったそうです・・・。
ロシアほか世界の動物学者たち長年トラやヒョウの保護を訴えてきましたが、ソ連崩壊による混乱などの影響で、動物保護は二の次のこととされてしまいます。悲願かなっての2012年の国立公園化ですが、学者のなかには「遅きに失った・・・トラやヒョウの生息数は限界まで減ってしまったので、彼らを守るチャンスはほぼゼロだ・・・」と考える者も少なくはありませんでした。
動物は個体数が少なくなると、近親交配が進むことになります。そうすると"遺伝子の多様性"が減ることになり、様々な環境の変化に耐えうる個体が減る可能性が高くなってしまいます。先述の学者たちの心配は、そのことを案じての声でした。多様性が何よりも大事なのは、人間の世界も動物の世界も一緒なのですね・・・。
今ではヒョウは122匹、トラは500匹まで数が回復!
しかし1990年代にかなり減っていた鹿やイノシシの数が、環境保護に励んだ人々の努力により回復すると、それらを餌とするヒョウやトラの個体数は回復基調に乗ることになりました。また悪質なハンターの排除も成功したことで、今では極東の沿海地方でヒョウは約4倍の122匹まで増え、トラも500匹くらいまで増えていることが確認されています。
この公園内にはヒョウやトラのほか、イノシシや鹿、そして熊などがいるそうです。トラはイノシシを食べるので森の中の低いところに住み、ヒョウはトラや熊に会わないようにして、高いところに住んでシカを餌にしているそうです。なお国境を接する中国側でも数年前に国立公園ができ、交渉の結果ロシアと中国の両国でこの地域の動物を守る取り決めが結ばれたそうです。またヒョウは北朝鮮も生息域なのですが、残念ながら今のところ北朝鮮との間では協定などがないとのことでした。
ちなみにロシア全体では動物の保護区が120ほどあり、それぞれに100人以上の人が働いているとのことです。ヒョウの国国立公園には140人がいて、今回お世話になったガイド役のピョートルさんもその一人です。未だアムールヒョウはレッドリストに載る「絶滅危惧種」ですが、ピョートルさんらの取り組みが報われ、いつの日にかリストから外れることを願ってやみません。(続く)
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